工業塗装会社のヒバラコーポレーションは2月19日、経済産業省主催のシンポジウム「デジタル技術を活用した"稼ぐ力"の創造」で講演を行った。小田倉久視社長が登壇し「人口減時代の暗黙知から形式知へ 中小生産現場からの事例と提言」の題で、ビッグデータやAI、遠隔操作技術を活用した中小企業の事例を紹介した。

小田倉社長は工業塗装の業務において、労働人口の量・質的減少を背景に塗装の合理化・自動化が急務であり、熟練技能者のノウハウを若手へ伝承する必要があると指摘。そこでノウハウなどの暗黙知を形式知化し、技能を技術に変える塗装生産管理ソフト「HIPAX」(ハイパックス)を紹介した。

塗装技術のデジタル化の例として、「塗料配合条件アドバイザー」について説明。ベテランの作業者が勘と経験で行っていた塗料の粘度調整を、配合データを蓄積し、その日の温度と湿度を入力することでAIが適切な塗料粘度を算出するシステムを構築。若手作業員の育成や生産品質の安定化を実現した。

また「マスターアーム」を用いたティーチングシステムによって、熟練工の塗装作業の動きを直感的な作業によってデータ化できる。従来のティーチングペンダントによる複雑な操作を短縮でき、取得したスプレーデータをインターネットを通して塗装ロボに送信することで、遠隔地の現場でも熟練工の動きを再現できる。

その他、塗装設備と「HIPAX」をオンラインで接続しホスト側から指示された塗装条件を基に着工、処理結果をデータベースに登録・蓄積することで最適な塗装条件を生み出すこともできる。これらの熟練工のノウハウが伴う工程を細かく分類し、可能なものからデータ化(形式知化)する「アジャイル開発」方式を採用することで、工業塗装における段階的なデータベース化、IT化、IoT化を実現した。 

結びに小田倉社長は「業務システムの運行管理を形式知化することで現場での管理を本部機能に移行でき、本社の指示で改善や設計変更、生産調整が行えるようになる」と説明。結果、ノウハウや営業秘密を開放することなく、新興国での工場展開や海外の委託工場での生産が容易になる他、新興国向けに品質とコストを調整したクオリティコントロールも可能になると伝え講演を締めくくった。