4月1日「特定整備認証」が施行

4月から道路運送車両法が一部改正されることに伴い、これまでの「分解整備」に「特定整備」が新たな認証として加わる。国土交通省はASV(先進安全自動車)の普及により、自動車を安全に修理できる体制を確立したい考えだ。板金塗装工場でも対応が急がれている。「今後の生き残りには認証取得は不可欠」とし、関連団体では周知活動を徹底するなど、認証取得を促進している。


4月から道路運送車両法の一部が改正される。それに伴い従来の分解整備に特定整備認証が新たにできる。

この制度の背景には、幅広い車種に運転支援技術が搭載されている状況がある。2019年度の新車乗用車搭載率は自動ブレーキ78%、ペダルの踏み間違い時加速抑制装置65%、レーンキープアシスト20%、アダプティブクルーズコントロール48%となっており、今後一層の普及が予想される。

しかし、現在ではこれらの先進安全機能は車の安全性に関わる重要な装置にも関わらず、法律上は「分解整備」に当たらないことから、誰でも整備・修理ができることになる。

既存の分解整備は「取り外し」を伴う作業を想定していたが、カメラやレーダーの調整は、必ずしも取り外し作業を伴わず、エーミング(機能調整)の作業となるため分解整備に該当しないというのが法改正前の判断だ。

そこで、分解整備の範囲を「取り外しを伴わなくても装置の作動に影響を及ぼす整備又は改造等」に拡大。既存の「分解整備」は原動機や動力伝達装置などの7項目に関わる整備だが、自動運転レベル3以上の自動運転を行う自動車に搭載される「自動運行装置」の項目を新たに追加し、8項目としてその修理を行うための認証として「特定整備」を設ける。

「自動運行装置」の修理作業では単眼・複眼カメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーダーを取り外したり交換したり調整する作業が該当する。検知デバイスが正しく作動するために、カメラやレーダーを校正(調整)する「エーミング」に関しては、車を止めた状態で実施する「静的エーミング」は特定整備に入るが、車を動かしながら調整する「動的エーミング」は特定整備作業にはならない。しかし、「静的エーミング」と「動的エーミング」の両方が必要な作業の場合は特定整備の範囲内となる。

この新たな制度により、既存の分解整備のみを行うパターン、特定整備となる作業のみを行うパターン、既存の分解整備と新たな特定整備の両方を行えるパターンと、3パターンの工場ができることになる。

国土交通省による「自動車整備技術の高度化検討会の中間とりまとめ」では工場の広さ、人材、必要な機器について記載されている。工場はエーミングに必要な広さを有する作業場の確保が必要となり、対象とする車両により、広さの要件が異なる。例えば、普通乗用車では、工場の広さは6m×2.5m、このうち屋内の広さが3m×2.5mが必要となる。

人材に関しては、作業員が2人以上でその内1人は1級自動車整備士(二輪除く)もしくは1級自動車整備士(二輪)、2級自動車整備士、自動車電気装置整備士、自動車車体整備士のいずれかの資格があり、国土交通省の講習を受講した整備士としている。

機器や設備は自社で設備導入する他、特定整備工場の電子制御装置設備を他の業者と共有するといった事業者間での連携も可能。

ガラス交換を行っている施工業者は、特定整備工場と外注契約を締結する必要があり、その際、作業に該当する電子制御装置の整備責任は特定整備工場が負う。また、特定整備記録簿の作成も行えばガラス業者も今まで通り作業が行えるとしている。

準備期間として4年間の経過措置があるが、中間とりまとめでは「改正法の施行の際に行っていた作業の範囲に限り、経過措置を認めることが望ましい」と記されている。これは法施行前にエーミングを行っていない事業者は4月以降エーミングを行う場合、新たに電子制御装置整備認証を取得しなければならないということになる。認証取得には設備、人的要件を満たさなければならないため、設備投資を伴う可能性もある。

経過措置の条件に入るためには、まずはカーメーカーの工場などでエーミングを行ったことを整備記録簿などに残しておくことが必要になる。ある板金塗装工場の経営者は「経過措置の条件に入るためではなく、あくまで長期的に事業を継続させる方向で認定取得のため一つ一つ要件を満たしていく」と前向きな姿勢を示す。

日本自動車車体整備協同組合連合会では、会員への周知活動の他、国交相の定める講習にも協力する体制を整える。BSサミット事業協同組合は基本的に全社取得する方針を示すなど、関連団体でも認証取得に向け動いている。板金塗装工場の経営者も「まだ制度自体が走り出したばかりの状況で、認証を満たすのはそう難しいことではない。しかし場合によっては認証取得のハードルが上がる可能性があるため早期に対応する」と話した。

一方で安全性を考えると損害保険業界ではこれを契機に特定認証を持つ工場への入庫促進を図っていく可能性もある。自動車の高度化に伴い、きちんと的確に修理できるという「エビデンス」が改めて求められている。



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