内装塗装、平米単価400円の衝撃

住宅の内装塗装で革新的なサービスが始まっている。北九州市の建築塗装業アーキ・メイク(代表・宮本伸宏氏=写真)は、ビニールクロスの塗り替えで材工の平米単価400円という破格の塗装工法を確立した。賃貸住宅の原状回復工事で従来のクロスの張り替えから需要を奪取、新たな内装塗装ビジネスとして動き始めている。全国に施工参画店を募り、塗装による内装需要を創出していきたい意向だ。


アーキ・メイクが提供しているのは室内のクロス(壁紙)の塗装によるメンテナンスリフォーム。賃貸住宅の入退去に伴う原状回復工事で、既存のクロスを生かしたまま塗り替えによって天井や壁を再生するもので、この分野で圧倒的なシェアを持つクロスの張り替えから需要を奪取するのが狙いだ。

衝撃的なのはその価格。通常、クロスの張り替えが材工で800~1,000円/㎡のところ、その半額以下の400円/㎡で提供できる塗装サービスを確立した。「新品に換わるクロスの張り替えに対して、既存クロスへの塗装ではフレッシュ感で見劣りします。従って、"半値"という圧倒的なお得感を実現する必要があった」と宮本氏。原状回復の費用を負担する物件オーナーにとって、"新品"と引き換えに納得する落しどころが半値と見たわけだ。

事実、同社が現在施工をしている物件のオーナーや管理会社からは「『この費用でこのクオリティ?!』と、とても高い評価を頂いています。一度利用されたお客様は必ずリピーターになり、受注が乗数的に増えています」(宮本氏)と自信を隠さない。

「塗装」の常識覆す

アーキ・メイクがビニールクロス壁の塗装工法の開発に乗り出したのは5年ほど前。ほぼクロスしか選択肢のない日本の内装空間に「塗装を広め、ビジネスを創造したい」という思いと、塗装業以外の業態がクロス塗装のサービスを始めていたことが動機となった。「他業態のクロス塗装はクオリティが低く、却って塗装のイメージが悪くなる。やはり我々塗装業が主導しなければ」との思いに駆られた。

そこで浮上するのがコストの壁。『クロスのリフォームはクロス』が当たり前の市場、特に、その中心となる賃貸住宅の原状回復でペイントを普及させるには「クロスから変える明確な理由=コスト」の課題は避けて通れない。

宮本氏がさまざまなトライアルを続けてたどりついたのが「極めて軽微な養生とローラーだけによる1回塗り仕上げ」という塗装工法だ。

養生は枠や巾木などのマスキングテープだけで、建具などの養生はもちろん、床養生もしない。塗装作業もローラーだけの1回塗り仕上げなので、養生から塗装のフィニッシュまで含めて「少し慣れれば1人で1日100㎡、1Kタイプの部屋なら2部屋可能」という超スピード工法を実現。「塗料とローラーと作業動作の組み合わせで飛散をなくしたため、ほぼ養生が不要、1回塗りで隠ぺいして発色する」というこれまでの塗装の常識を覆す工法を確立した。

その結果、平米当たり400円という、『塗装に変える理由』を明確にした単価を実現。このうち「材料や消耗品のコストは80円ほどなので、きちんと利益を確保できる」ビジネスモデルとして成立させた。

しかも、部屋のカラーリングによるインパクト、マットでクリーンな風合いなど塗装ならではの仕上がり感は、クロスの張り替えとはまた違った価値を提供、『価格以上のクオリティ』との評判を呼び、賃貸住宅のオーナーや管理会社からのオーダーが相次いでいる。

塗装はもっとカジュアルでもいい

同社は、このビジネスを「Re:Cast Colored」とネーミングし、参画する施工店を募集する。「住宅の内装で塗装を広げたい」ことが目的なので、高額な入会金やロイヤルティはない。加入時に10万円の保証金と施工ノウハウの技術講習の3万円のみ。ただし、専用の塗料と道具や副資材を使用するため、それらの購入は必須となる。

「これまで塗装会社さんにもご案内しましたが、『400円』という単価だけで端から否定されることが多いです。もちろん、単価は地域に応じた相場で柔軟に対応してもらえればいいのですが、お伝えしたいのは市場の相場観に合う価格帯を実現しないといつまで経っても塗装は広がらないということ。クロスというガリバーが既に基準となってしまっている以上、それを超える価格と品質の納得感、それと事業者の利益を確保する仕組みを構築する必要がありました」と説明する。

現在は、賃貸住宅の原状回復業務と関連の深いハウスクリーニング業が数社加盟。地元の北九州市を中心に稼働しているが、「ハウスメーカー系列の賃貸管理会社からもこのサービスに好感触を得ているのですが、全国的な施工の受け皿という課題が浮上する」ことから、施工店の拡充を急ぎたい意向だ。

「施工自体はゼロから始めてもすぐに修得できるレベル。力仕事も皆無で、特に1人で作業でき時間の融通もきく賃貸住宅の原状回復の現場は、女性や主婦の人たちにも好感されると思います。また、『インテリアペインター』のような新たな職種として、若い人たちにもアピールできます。価格も含め、『塗装はこうあらねばならない』という従来の概念とは一線を画し、もっとカジュアルなサービスにすれば内装で塗装が広がると思うのです。ベースとして広がってこそ、機能性塗料や意匠性塗料も生きてくるのではないでしょうか。まずはベースを広げること、そこに専念したい」と塗装の新たなビジネス創出に向かう。
 アーキ・メイク:http://archi-make.com/



宮本伸宏氏
宮本伸宏氏
Before
Before
After 半日の施工で部屋がリフレッシュする
After 半日の施工で部屋がリフレッシュする

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