塗装職人を魅了するデザインペイント

塗料の内装需要の創出に向けて関西ペイントが取り組んでいる「PXI(ピクシー)」の活動に新たな動きが出てきた。インテリアコーディネーター(IC)の啓発を目的としたPXIにプロの建築塗装業者が反応し始めたことだ。デザインペイントの技法をレクチャーする「PXIペイントアカデミー」を先月からスタート。IC向けを想定した研修ながら、参加者の8割を塗装業者が占めた。プロペインターの内装への視線が熱くなってきた。


関西ペイント販売は、デザインペインティングの塗装研修「PXIペイントアカデミー」をスタートさせた。スポンジングやカラーウォッシュ、テクスチャー&カラーなどの塗装技法をレクチャーするもので、デザインペインティングの第一人者・ヨザン弥江子さんを講師に招き、今年度中に4回にわたって展開する。5月17日、東京・日本橋のデザインペイントギャラリーで第1回目の講習が開かれた。

PXIはPaint × Interiorを表した独自のコンセプト。塗料の内装需要の創出と普及を目的に、インテリアコーディネーターや建築家などに対して専用Webページでの情報発信やワークショップ(体験研修)を通じてペイントの魅力を伝えていく活動。

ワークショップではこれまでも装飾塗装やステンシルなどを行ってきており、今回は更にアップグレードしたデザインペインティングのアカデミーを設けた。主にインテリアコーディネーター向けであったこれらのワークショップに、プロの建築塗装業者の集まりである「リフォームサミット」のメンバーの参加が目立つようになってきたのが最近の傾向だ。

リフォームサミットは戸建て改修など町場の塗装需要を中心に同社が組織している施工店ネットワークで、現在700社以上の会員数を数える。メーカー→施工店→施主といったB to B to Cの流れを生み出し、塗装工事をいかに魅力的に仕立てられるか、定期的な研修会や同社と会員間の双方向コミュニケーションによってリフォームサミットならではの塗装サービスを構築しようというもの。そのメンバーがインテリアペイントに反応し始めた。

5月に行われた第1回目の「PXIペイントアカデミー」でも、参加者20名のうち8割ほどをリフォームサミットのメンバーが占めた。

講師を務めたヨザンさんは「自由で個性的な表現力、人間味や手仕事の温かみなど工業製品では決して得ることのできない魅力がデザインペイントには溢れており、その仕上げや空間を望むクライアントは確実に増えています。でもそれを提供できる人の数が足りません。アーティストなど特殊な人たちの世界にとどまらせていると広がりませんし、せっかくの機会を逃してしまいます。だから塗装屋さんなんです。アートではなくもっと建築寄りの立場で提供していくことでデザインペイントへの垣根が低くなりますし、インテリアペイントの需要創造や普及にもつながります。何よりも塗装屋さんの立ち位置がこれまでとは大きく変わります」と話し、ペイントアカデミーへのリフォームサミットメンバーの参加を歓迎する。

塗装はパフォーマンス

ペイントアカデミー第1回目の今回は「スポンジング(海面)によるぼかし技法」について学んだ。

打ち放しコンクリート風の仕上がりをスポンジングやウォッシュ、スパッタリングなどの技法で表現していく。色の選択と希釈の頃合い、色の重ね方、海面の叩き方、補正の仕方などを実践的に学び、「感覚的な塗装技法を、自分の中で体系づけて確立していく」カリキュラムを組む。「やり続けていると海面がまるで自分の手のように馴染んできます。そうなるとイメージ通りの表現ができるようになる。頑張って下さい」と檄が飛ぶ。

そうした技法のレクチャーの一方でヨザンさんが強調したのが「表現者としての仕事への向き合い方」だ。こうした現場は塗装をしている姿そのものが一種のパフォーマンスであり、それが顧客満足にも転化する。「エレガントな動きを意識して下さい。演じているつもりで」と、普段の仕事とは全く別のモードに切り替えなければならない。こうしたアドバイスは参加した塗装職人にも新鮮だったようで、抽斗(ひきだし)をひとつ増やしたような表情だ。

「仕事の枠を広げていくため、一般の人たちといかにつながっていくかを模索している。デザインペイントの表現力や仕事の魅せ方はぜひ吸収したい」「店舗の仕事が増えてきており、装飾技法の必要性を感じている」「住宅外装だけでなく内装も取り込み、仕事の幅を広げたい」など参加者(リフォームサミットメンバー)の声。遠く九州からも駆けつけた参加者もおり、モチベーションの高さが伝わる。

関西ペイントはグローバル戦略の中でB to BからB to Cへのビジネスモデルのシフトを掲げており、インテリアペイントの生活者レベルでの普及を成功させた南アフリカのケーススタディの導入、アレスシックイやアレスムシヨケクリーンなどB to Cの製品やプロモーションに力を入れている。その一方で、それらを使った塗装サービスを提供する人(職人)の存在も重要で、生活者感度を携えたペインターの輩出にPXIの展開が寄与しそうだ。



デザインペイントをレクチャー
デザインペイントをレクチャー

HOMEインテリア / DIY塗装職人を魅了するデザインペイント

ページの先頭へもどる