ペイントを通して地域の人たちと交流するワークショップが全国で盛んに開催され、ペイントワークの楽しさが実感できたと参加者からは好評だ。そのポイントは"きずな"づくりにある。参加型のペイントワークは地域の活性化に最良のツールとして貢献している。

関東学院大学(本部・横浜市金沢区)は学生の社会活動を支援する立場から、さまざまな地域貢献につながるサークル活動を行っている。そのひとつが「空き家プロジェクト」。指導する日高仁准教授は「活動は学生たちの自主運営に任せるスタンスで、意見を求められなければ一切介入することはありません。自分で考え計画し、それを行動に移し、社会貢献とは何かを実感を持って深く考えてくれたらと思います」と話す。

空き家プロジェクトのリーダー、同大3年生の小坂悠介さんは「ゼミを通じ横須賀エリアで空き家問題が深刻化していることを知り、3年前から活動を始めました。地元の工務店の人たちのサポートなども受けながら空き家を自分でDIYして再生させるプロジェクトに取り組んでいます。今年は新入生の参加が多く、活動を広げていきたい」と意欲的だ。

現在プロジェクトメンバーは30人を超える。今年からはベトナムの留学生が参加するなど、メンバーの意識も高まってきた。今回の物件は京浜急行・追浜駅から徒歩5~6分に立地する築60年以上の古民家。これをリノベーションしプロジェクトの交流拠点とする構想でより力が入っている様子。

この活動に注目したのが日本ペイントホールディングスのROOMBLOOM(ルームブルーム)の担当者だ。「学生と地域の人たちが一緒になって行動している点に関心を持ちました」という。ルームブルームのペイントを通じて暮らしを豊かにするというコンセプトと同大の活動理念が合致したからだ。その活動は「Happy Wall Project(ハッピーウォールプロジェクト)」と名づけられ、既に10件以上のワークショップを実施している。

これまで公立小学校、児童福祉施設での取り組みを実施。人と人とのつながりというペイント作業の持つ効果はビジネスレベルを超えるパワーがあることを実証してきた。「共同でペイントすることで新しい空間を創造する効果に加え、思い出を共有できる点にこの活動の奥深さを感じています」(担当者)。

古民家は戦後すぐに建設された木造の3Kで老朽化は否めない。モノのない時代のためあり合わせの木材が使われており、梁もゆがみがある。水周りを増設したが、間取りはそのまま。一部天井を現しにしている。 

リノベーションは最終段階に入り仕上げとして内壁を珪藻土で塗った。今回ROOMBLOOMの提案を受けペイント初挑戦となる。リーダーの小坂さんは「これまでの活動でペイントという選択肢は見えていませんでした」と素直に言う。

対象となるのはキッチンサイドの壁と寝室の壁。午前中にマスキングなどの養生を行い白で1回塗り。午後に2回塗りで仕上げる。カラーはブルーとイエロー、いずれもビビッドの色相で、初挑戦の学生たちにとっては難関だ。そのため塗装の基本をビデオで見てから作業に入る。

マスキングの準備作業ではぎこちなく、首をかしげる様子も。でも若いパワーで失敗も恐れない。参加した女子学生は「自分のDIYのイメージの中にペイントは入っていませんでしたが、体験できたことで身近になりました」とコメント。別の女子学生は「壁の色って本当に大事ですね。空間のイメージを決めますから。ペイントのカラーバリエーションには感動しました」と少々興奮気味。

ペイント初体験はほとんどの学生にとって"新しい発見"だったようだ。小坂さんは「リノベーションでペイントの力を実感しました。ペイントカラーを含めてこれからの活動のツールとして積極的に使っていきたい」とペイント体験で達成感を感じ満足げだった。

ROOMBLOOMのスタッフは、「今回は学生さんが主役。私たちのプロジェクトも地域貢献という面で成果がありました。こうした機会を広げられたらと思います」と述べる。日高准教授は「こうした活動は研修の一環としても効果があり、地域との関わりの中から、学生の成長を促すことになります」と意義を強調していた。

次の空き家プロジェクトはベトナム留学生の交流拠点「ベトナムハウス」のリノベーションを実施する。