水性・調色データ力で優位に

中国・上海のR&Dセンターは研修機能を合体させた新しいスタイルを導入、開発から製品化までのスピード化を図る。アジア・パシフィック地域の中核基地となる。特に水性技術の高度化に加え、グローバルに有する調色データの集積を将来的にはAI、IoTに連結していく方向性を示す。今年中には米国にグローバルイノベーションセンターの開設を予定する。


----昨年の日本ペイントHDによる買収の件をどう受け止めましたか。

「企業トップレベルの案件で、私どもも新聞報道で初めて知りました。交渉が破談になった12月に入り、本社サイドのアナウンスとして、企業力を高めていくためにはあらゆるオプションを選択していく方向であるとの説明があり、特に注力しているアジア・パシフィック地域での事業スタンスの強化を図っていく方針を確認したところです」

----塗料のグローバルメジャーを競う構図は更に強まりますね。

「あくまでも私見の一般論ですが、グローバル化のフェイズが30年前と一変していることが背景にあると思います。世界規模で余剰資金があり、少しでも優位性のある投資先を探している状況でグローバル規模のM&Aが業種・業界を超えて広がりを見せています。塗料のグローバルサプライヤーで見ても、自動車OEM塗料をトータルに供給できるメーカーは5社に集約され、その一方でローカル市場での需要拡大が建築用・自動車補修用といった汎用ニーズに集中していることが背景にあります」

----上海に新たな研究開発と研修センターを開設しています。

「アジア・パシフィックにおけるR&D機能に加え、研修施設をドッキングさせたものです。総勢200名以上のスタッフで構成され、研修センターには4基のブースが設置されており、アジア地域では最大級の規模と自負しています」

「R&Dのポイントは水性技術の高度化と調色精度の向上にあります。中国では政府の環境規制が急ですからこれに対応していく必要があります。塗料・塗装によるCO2排出量は数パーセントの割合ですが、ゼロエミッションに向けた動きは強まります。また調色に関しては塗料メーカー間の競争においてばかりでなく、他の加飾技術との競合の中で重要な技術要件になると考えています。当社には長年にわたり蓄積してきた膨大なフォーミュレーションデータがあり、これを将来的にはAI化、IoTと接続させて高度化を図る方向にあります。ここが他社との差別化の大きな要因となります」

----フィルム化の動きが顕著です。

「自動車内装部品などでその動きが強まっていると認識していますが、トータルパフォーマンスで比較すれば塗料の優位性はあると思います。クルマばかりでなく、あらゆる工業品の加飾性向上ニーズとして強まることはあっても弱まることはありません。こうした変化のスピードに加え、素材転換への対応力の面でも塗料の柔軟性を発揮できるでしょう。そのための条件として塗料と塗装技術の高度化が不可欠となります」

----最新測色機「アクワイヤー クアンタム EFX」を投入しました。

「お客様の性能に対する評価は高いと思います。一方、高価であるとの声もいただいています。そのため中小企業の補助金制度に該当するものとなり、普及が加速するものと期待しています。センサー測色はAIやIoTとの連携に向いていますから、カラーマッチングの新しい時代を拓くツールと位置づけています。BP工場の在り方を変える潜在力があり、測色機での優位性で事業スタンスを強化していきます」

----米国においても最新鋭の研究開発センターが立ち上がる予定になっていますね。

「詳細なアナウンスがまだありません。ただ研究開発のグローバル強化の一環として、リージョナルR&Dをサポートする役割がそこにあります。世界的に水性化を加速していくためには水性技術の優位性が不可欠になります。中国における水性シフトのスピードは既に日本のそれを上回っていますからね。今後、他のアジア地域でも加速することは間違いありません」

----ありがとうございました。



上野啓氏
上野啓氏

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