ベトナム事業、現地調達力で成長加速

塗料商社のオーウエル株式会社(本社・大阪市、代表取締役社長・飛戸克治氏)のベトナム拠点であるオーウエル・ベトナム社(O-WELL VIETNAM CO.,LTD)はそれまでの駐在員事務所から2014年に現地法人化し、現地市場向けの事業展開を強化している。進出日系企業が求める現地調達需要を取り込み業績は好調を示し、「今期は経常利益ベースで30%増」(狩野社長)と勢いは続いている。


----ベトナムでの事業内容は。

「活動としては1996年から出張ベースで開始しており、2006年5月に駐在員事務所を設立し、それをベースに活動していました。2014年10月に現地法人化し、現在はハノイヘッドオフィスとホーチミンオフィスの2拠点の体制で活動しています。営業品目は塗料及び自動車用接着剤とそれに関連した塗装設備や塗装機です」

「販売商品は自動車向けが多いですね。96年に我々が活動を開始したのも日系自動車メーカーさんがベトナムで生産を開始するに当たっていろんな商材を供給するためでした。現在の顧客は日系企業もしくは日系企業が委託生産で仕事を出されている企業がほとんどですが、今後はローカル企業へも広げたいと考えています」

----日本のようにジョブコーターは多くあるのですか。

「そんなにないと思います。専業者というよりアッセンブルメーカーが自社で塗装設備を持っているがその設備の稼働率が低いので塗装の請負を行うケースが多いです。塗装は溶剤系が多いイメージですが、これからは粉体塗料が増えてくると思います。それはベトナムの環境規制が非常に厳しくなってきているからです。そもそもこの国の環境規制は各国の一番厳しい基準を参考にしているという背景もあります」

----ベトナムでの商社の役割とは。

「私の考えは完全にコーディネートだと思っています。例えば『この塗装機を使ってこの塗料を使えばこうなる』というように単体ではなく組み合わせることが必要です。基本的な考えは日本と同じです。塗料は半製品であってお客さんの条件に合わせて塗装して塗膜になって製品になる。半製品から製品化するこだわりに尽きます」

----商材は日系が多いですか。

「当初は扱う塗料も日系のものが多かったですが、最近ではPCM(カラー鋼板)塗料や鋼管などの重防食塗料などの分野でベトナムに工場を持つ非日系塗料メーカーの取り扱いも増えてきました。非日系メーカーでは日系企業の門をたたくのは難しく、我々が間に立つことで1つの障壁がなくなる。そこが我々の強みを生かせる部分の1つだと思っています。顧客側からしても商習慣や言葉が違う材料メーカーと直接取引するのは余計な負担がかかってしまう。間に入る当社の存在を評価してもらっていますね。日本の材料メーカー優先という考え方はないです。それでは顧客の要望に合いませんから」

----顧客の要望とは。

「やはり現地生産、現地供給です。自動車産業は承認材料があるので特殊ですが、それ以外の材料も現地調達またはアセアン調達が望まれています。塗料を顧客のラインに供給する場合でも、日本からの調達だと物流を含めたやりとりに時間がかかる。日本製品はしっかりと管理されているとも言えますが、求められるスピードについていけないことがあるのが現実です。そんな状況から当社の現状は日本からの仕入れが3割を切っています。タイからの調達が一番多くて、他にはインドネシアとマレーシアが同じくらい。アセアン域内での貿易自由協定ができているので、日本から調達するよりも輸入関税が安いというのも1つの要因です」

----現地調達・アセアン調達ニーズへの対応を進めると扱い商材は多岐にわたるのでは。

「そうですね。取り扱う品種は多いです。ベトナムの外資系販売会社は定款に貿易統計品目のHSコードが明記され、販売品目の縛りがあるのですが、年々足りないものが出てくるので2年に1回の頻度で更新しなければならない感じです」

----ローカル塗料の性能評価は。

「良いものもあります。例えば用途にもよりますが粉体塗料などの性能は問題ないという認識です。塗料の性能は樹脂に依存するところが多いと思いますが、原材料はほとんどベトナム現地生産できておらず、メーカーがタイから調達していることが多いです。タイ産原材料のレベルが非常に高くなってきているので、ベトナムで生産する塗料の性能も上がっています」

----工業塗装の景気動向は。

「日系企業を含めて進出企業が増えているので好況と判断しています。当社の年度計画でも大きく伸ばしています。2014年10月に設立していますから2014年度と2015年度の合算、2016年度、2017年度で決算は3回目ですが、すべて予算をかなり上回っています。赤字の経験はありません」

----現在の2拠点体制で規模としては適正ですか。

「拠点は増やしたいと考えています。日本でも弊社の場合はお客さんの近くにいてはじめてラインフォローができるという考えなのですが、日系企業が集まる地域ができるという話があれば、まずはナショナルスタッフを置いたサテライトオフィスを作って対応したいと考えています」

「現在の従業員体制はハノイヘッドオフィスに5人、ホーチミンオフィスに3人のナショナルスタッフと、それぞれ日本人1名の計10人体制です。ベトナム人は頭が非常に良く、仕事の進め方をきちんと教えればもっと大きな力になると感じています。人材教育も私の重要な役目であり、丁寧に人材教育も進めたいと思っております」

----ありがとうございました。



狩野浩二氏
狩野浩二氏

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