はじめに

塗料・インキ・コーティング業界が初めての方に、BYK(ビックと読みます)の塗料やインキ用の添加剤を理解してもらおうと、このお話を書いています。理系出身でない方にもわかりやすいよう、図表は出しません。アニメチックなモデル図は出てきます。寝ながら読めるとあるように、「さあ読むぞ」と構えなくても読めるにしたいと思います。

では始めましょう。

塗料やインキと添加剤

塗料やインキとしましたが、なぜ塗料とインキをひっくるめて語るのでしょうか?まあ塗料業界の技術者とインキ業界の技術者が、色材協会という団体を作っているからと言えなくもないのですが。産業界ではそれぞれ別の団体があります、日本塗料工業会だとかインキ工業会など。と、ここにヒントがあるようにも思います。つまり塗料もインキも産業分野は異なっても、「技術的には」近いテクノロジーなのです。よって添加剤も塗料・インキ用でひとまとめにしているわけです。

塗料・インキの作り方と添加剤

身近にあるインキ、あんまり身近でない塗料です。インキは筆記具・プリンターと家庭でも学校でも個人ベースで使います。また雑誌や食品の包装も印刷がされています。でも塗料を自分で塗る・使うひとは、おそらく10人中一人もいないと思います。家電品や家・マンション、自動車など使われているモノは多いですが、自分で塗ることはほとんどありません。でも中身は似たようなものなのです。塗る前はともに液状で塗って乾いたら役に立つものです。添加剤はこの液状のモノを作る際と、塗る場面、乾燥してから、この三つの場面で役に立ちます。なかなか優れものなんですよ。

ではどのように役立つか、まず塗料・インキを作る場面

三つの場面を、順番に見ていきます。まずは塗料・インキを作る場面です。どちらも色がついています。実はネイルも色がついていますし、液状です。これも塗料・インキといえます。ネイルでは紫外線、あの青い光をあてて、膜になるタイプがありますね。塗料やインキでも紫外線をあてて、固める方法があります。 

ちょっと脱線しましたが、色は何からできているかという話です。顔料と呼ばれる粒子がこの色の素です。細かいもので50ナノメートル。いきなりナノメートルと理系用語が出てきてすいません。1mを9回、10で割ったのがナノメートル。ちなみに10で3回割るとmm、6回割るとμm(マイクロメートル)、で9回割るとnm(ナノメートル)です。名古屋弁でいうと、「でら小さいがや」。

でもこの小さい・細かいことが大事なのです。皆さんは仕事でパソコンも使い、携帯電話の画面も指で操り、大画面でテレビや映画配信も楽しむ。目に入ってきている情報は、みんな画面を通じてです。とてもきれいでシャープな画面は、この細かい粒子なくしてはできないのです。ここにBYKの湿潤分散剤が使われています。DISPERBYK(ディスパービックと読みます。ディスパーバイクでもディスパービーワイケーでもありません)のシリーズは、色の素である顔料を細かくするのになくてはならないものです。DISPERは英語で「分散」の意味です。ほかに分散剤ではANTI-TERRA(アンチテラと読みます)とBYK(製品名につくときはビーワイケーと読みます)と頭につく製品名がありますが、これは後で説明します。

話をまた戻します。顔料を細かくする話でした。じゃあどのように塗料・インキ会社では細かくしているか、方法をお教えします。力で砕くのです。写真は愛知県豊田市の猿投神社(さなげと読みます)で撮った写真です。

近隣は瀬戸物で有名な瀬戸や土岐・多治見・瑞浪があります。焼き物の原料の石・粘土を左のドラムに入れて、水車の力でぐるぐる回します。ドラムの中では互いに衝突・こすれて、だんだん石は小さく砕けていきます。この場合、動力は水ですが、セラミックスを作る場合も同じこの「ボールミル」が使われています。さすがに動力は電気ですが。はやりの5Gの材料も、こうしたボールミルが使われます。塗料やインキでは「ボールミル」のほかに「サンドミル」(ボールより細かいサンド:砂)やジェットミル(原理はややこしいので省きます)などあります。尼崎にあるBYKのラボでも、同じ原理の機械が並んでいます。

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今日はこのくらいにして、次は第二回にしましょう。次はいよいよ添加剤のひとつ分散剤です。

ビックケミー・ジャパン株式会社 若原章博