1.はじめに

実験計画法や機械学習を活用するなど、実験の進め方・解析の仕方など、有用な仕組みが整えられている。一方でどのような実験にするかは自分で考えなければならない。ここではコーティングや分散・塗布・乾燥の実験を実際に行われる方々に、実験現場で役立つアプローチを紹介したい。この項では透明性の測定を取り上げる。

2.BYK Gardner社のヘイズガードi:Haze Guard i

透明性を測定するのに開発された卓上型測定器である。優れているのは従来、全光線透過率という光がどれだけ通るかしか測られなかったのが、表面の散乱や、内部の拡散などに分けて測定できる点である。安定したLED光源を用い、サンプル膜を透過した光を積分球で受ける。積分球内ではセンサーとシャッターを組み合わせ、その配置により広角散乱と狭角散乱に分けて解析ができる。なおサンプルは、専用のセルを用いれば液体も測定できる。

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実験室では何の役に立つかというと、例えば粒子の組成要因と粒子径要因に分けて検出できる。そうなると、どのように材料を工夫し改良しようかという発想が浮かんでくる。

 

3,ミクロンサイズの粒子の透明性とヘイズ:

では実際の測定例を紹介する。まず艶消し材として用いられるシリカやワックス系粒子を配合した、2液ウレタン塗膜を測定した例である。

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縦軸はHaze(ヘイズ)、横軸はCLARITY(クラリティ)である。どのような意味を持つのか図を見ながら考えてみよう。まず粒子が配合されていない膜(右下粒子無)は、ヘイズはほぼゼロ、クラリティはほぼ100である。見た目も透明な膜である。粒子を配合した膜は図のように分布する。図中のμmは粒子のd50(カタログ値)である。縦に点線で囲ったのは、同じ組成で粒子径の異なるワックスを示す。粒子径が大きくなると、クラリティは変わらないが、ヘイズが大きくなる。では同じ粒子径で組成の違いはどうかと見たのが、斜めに囲った一群である。おおむね9μのサンプルを囲った。シリカやCF1000も含め、クラリティとヘイズの両方に違いが出る。なおCF1000と表示したのはバイオプロダクトの粒子CERAFLOUR 1000である。これらサンプルの全光線透過率はどれも87.6から89.2に分布し、大きな違いは見られないのに対して、クラリティとヘイズを測定することで、組成要因・粒子径要因の影響を把握することができた。

 

4, 数十ナノメータサイズの顔料の分散

では次にもっと細かい粒子、青顔料を分散して塗布乾燥した膜の評価を紹介する。

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実験は湿潤分散剤DISPERBYK-2015の効果を確認したものである。分散体を透明のフィルムに塗布乾燥した膜を作成しサンプルとする。光源に対して塗布面からとフィルム基材面からとで測った。結果的にはどちらから測っても数値は同じであった。これは大事な情報である。膜表面とフィルム表面の特性がこの場合には測定に無関係であることを示している。本来の目的の分散剤の効果であるが、同分散剤を用いてないコントロールはクラリティが低く、ヘイズが高い。一方分散剤を用いた場合は、ヘイズは10未満、クラリティは99を超えている。このように透明性の高い分散体もヘイズガードiで解析することができる。

実験のすすめ

以上は弊社尼崎のアプリケーションラボで行った実験である。どんな系でどんな結果が出るかまでは測定機器のカタログには書かれていない。予見なく試しに組成要因が出るかな?分散性の違いは出るかな?と測定した次第である。おもちゃと同じでいろいろ触って試してみるのをお勧めする。乱暴に扱わない限り壊れはしない。

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