1.連載のはじめに

実験計画法や機械学習を活用するなど、実験の進め方・解析の仕方など、有用な仕組みが整えられている。一方でどのような実験を組むかは自分で考えなければならない。ここではコーティングや分散・塗布・乾燥の実験を実際に行われる方々に、実験現場で役立つアプローチを紹介したい。この項では粘度測定を取り上げる。

2.粘度測定の装置には様々な機種があるが:

B型粘度計、粘弾性挙動を測定できるレオメータ―など実験室では多くの粘度測定が行われていると推察する。結構めんどうくさい。温度は揃えなければいけない、繊細な機器なのでサンプルセットに気を遣わないといけない。そこで研究者によっては実験助手に測定を任せ、数字だけをもらう。ただここで注意していただきたい。温度だけ合わせても片手落ちであり、データの確からしさに疑問が出ることである。

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ではどこに注意を払うべきか。

3,サンプルの履歴をそろえる、履歴を消す

手順での大事な点は、サンプルの履歴をそろえる、あるいはサンプルの履歴を消すことである。これが意外に皆さん無頓着である。コーティング剤のほとんどは非ニュートン流動である。いわゆるチキソ性を示す。

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いわゆるTI値(チキソトロピックインデックス)は、例えば回転粘度計を用いて、60rpmの粘度と6rpmでの粘度の比をとって表している。ただ本来のチキソトロピー流動は時間依存性を示すもののことである。B型粘度計で、先に6rpmを測り、次に60rpm、もう一度6rpmを測定したときに、二つの6rpmの値が一致しないことを経験していないだろうか。ニュートン流動では測定誤差を除きこれは起こらない。多くの系で粘性付与剤が添加されるし、また粒子を含有した系はほとんど非ニュートン流動を示す。これらの粘性は、ある構造を形成しており、この構造が攪拌により壊れると粘度は下がる。この構造回復には時間がかかるので、どの時点で測定するかにより当然粘度の測定値は異なる。これを避けるために、一度サンプルの履歴を消して同一条件にすることが必要である。

4.なまかわ*な人こそ、再現性を重視して手順をきめること

具体的に履歴を消すとはどのようにするか。以下に手順の例を示す。

レオメータ―の場合:サンプルをセットしたら、高速でローターを数分回す。回している時間は決める。その後、測定を開始する。

B型粘度計などの場合:撹拌機を用いて一定時間、泡立たないように攪拌する。その際、容器の大きさ・サンプル量・攪拌羽根の大きさ・攪拌速度・時間は一定にする。たとえば、攪拌時間2分、攪拌したサンプルを粘度計にセットし、静置2分、60rpmで測定2分、静置1分、6rpmで測定2分、終了。のような手順をとる。お試しいただきたい。

なまかわ*:「怠ける」とか「横着」とかいう意味です。

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