第3章 WEBサイトからの集客

「お客様の喜ぶ姿が自分たちの喜び」であることを再認識した私たちは、「下請けから直需」への転換のため、直接お客様に認知していただき、自力で集客をしていく必要に迫られました。そんな中、インターネットに可能性を見出し、取組みを始めます。
始めた当初は試行錯誤の連続で、連日夜中まで自分自身でホームページを修正したり、広告のキーワードを検討したり、時間やお金を無駄にしたことがありました。しかしその結果、今では、インターネットを顧客との最も重要な接点として、自社サイトだけではなく、SNS等の周辺環境も整え、インターネット広告を管理し、統合された1つの集客媒体として機能する仕組みとなっています。そしてその仕組みは「かける費用」を調整することによって先々の仕事量をコントロールできるまでになっています。


では、私たちの取組みの話を進めていきましょう。まずは自社サイトを作成するわけですが、私たちは「サイトの構成」で他社との差別化を図っています。例えばよくあるサイトの内容は、「サービス内容」「会社概要や地図」「工場規模」「工場の設備や使用している材料」などです。私たちはお客様がこれらのどこに魅力を感じるだろうか、改めて深く考え抜くことから始めました。
そもそもサイトは「板金塗装工場を探しているお客様」と「自工場という島」をつなぐ架け橋です。架け橋である以上、お客様にその橋を渡ってもらわねばなりません。しかし、お客様は魅力のない島へ架かっている橋を渡ってはくれません。そこで大切なのは、お客様の目線に立ち、魅力的な内容がパっと目につくような構成にし、魅力的な島として捉えてもらうことです。


そこで私たちは、「お客様視点の取組みの詳細」と「過去のお客様がどこに満足しているのか」をまず見ていただけるようにサイトを構成しています。
皆様が自社で取り組む場合、そもそもサイト作成前に「お客様が自社のどこに魅力を感じるのか」を徹底的に考え抜く必要があります。コストパフォーマンスが売りであれば写真と金額が明記された修理例を見てもらう、お客様満足度に自信があれば「お客様アンケート」を目につく箇所に公開してもいいでしょう。


一般のお客様に高度な技術内容や比較の難しい高級ブースやフレーム修正機、外資系の塗料等を一生懸命PRしても魅力を感じにくいはずです。まず、お客様が車を預ける上でどんな点に不安を感じるのかを理解し、その不安を払しょくするためにどんな取組みをしているかを考え、伝えることで初めてお客様の感情を動かすことができるのです。そして「魅力的」という印象は、成約率の向上だけでなく、クレーム率の低下にも、リピーター率増加にも、その効果を発揮してくれます。単に一時的な問い合わせにとどまらないサイト作りが可能となるわけです。


ただし、どんな素晴らしい内容のサイトでも、作っただけでは基本的には誰も見てくれません。サイトを作った後には必ず、見てもらう仕組み作りが必要になります。私たちは主な対策として、「リスティング広告」というインターネット広告に予算をかけています(後の章で詳しく説明します)。また、「サテライトサイト」といって情報提供に特化した衛星サイトを作り、そこから自社サイトへ誘導したり、twitterやfacebook等のSNSで自社アカウントを作成して定期的に更新し、自社サイトへの導線を確保したりと、自社サイトの認知機会を増やしています。ブログは社長の私だけでなく、若手社員3人にも日々の仕事に対する想いを綴ってもらい、「経営者だけでなく、会社全体の想いや取組みをお客様に知っていただく」ような流れを組んでいます。私たちは、それぞれの取組みに目的・役割を持たせ、自社サイトを取り巻く環境を整理することによって、「自社サイトへの架け橋」の数を増やすことに成功しているのです。

作ることが目的ではない

「サイトを作ったが全く効果がない」。私たちの業界に限らず、ただ単純に売上増加の手段としてサイトを作った経営者や広告担当からよく聞かれる言葉です。しかし、サイトは作っただけで売上が上がるわけではありませんし、広告を出せば仕事が増えるというような単純なものではありません。サイトの役割は「お客様に自社を認知してもらい、興味を持ってもらうこと」。車の損傷を修理したい一般のお客様がどのように自社サイトにたどり着き、どのように興味を持ち、問い合わせをされるのか。自社の特長を意識しながら、お客様の視点で徹底的に考え抜く必要があります。
今一度、お客様視点で自社工場を見直してください、「うちの技術力やサービスの魅力はどこにあるのか」。そして、「その魅力を誇張せず最大限に伝えるにはどうすればいいか」。この2点を明確にすることで、サイト構成の全体像が見え、活用方法やアクセスを増やすための対策ができるようになります。


繰り返しますがサイト活用の目的は「お客さまと自社への架け橋を作ること」です。その架け橋をたくさん作り、渡っていただくことで受注のスタートラインに立つことができます。
では、その架け橋を渡っていただいたお客様を、成約につなげ、ご満足頂き、さらにリピートにつながるにはどうしたらよいでしょう?次章で解説したいと思います。

プロフィール:

伊倉大介氏(いくら・だいすけ)。1976年生まれ。東京都目黒区出身。
1997年伊倉鈑金塗装工業代表取締役に就任。2003年コーティング事業開始。2007年オークション代行業務開始。2008年廃車受付業務、レンタカー業務開始。2011年BP経営支援会社「アドガレージ」設立、代表取締役に就任。
2012年1月現在、社員10名、修理工場8人体制。