皆さん、こんにちは。「技術を旅する」今回は防食技術についてお話しをします。
技術士取得の際、初めて技術士会に参加して講演を聞いたのが防食技術についてでした。その時の講演者は防錆協会の先生で、防食を専門としない技術者にも分かりやすく理解が深まる話でした。
聴講者の期待に合わせた話をされていることに、「こうありたい」という思いを感じたことを記憶しています。それでは本題に移りましょう。

防食技術の基本はたったの4種類

腐食現象を理解し、それを逆手に取り対策するのが防食技術です。大きく分けて4種類あり、①材料選定②電気防食③環境制御④環境遮断、これらが防食の基礎となります。

(1)材料選定

自然環境下では、鉄は腐食し錆びてしまいます。材料選定による防食方法とは、金属ではステンレスやチタン、樹脂では塩ビなど、使用用途を考慮して耐食性のある材料を選定する防食技術です。

(2)電気防食

電気防食は2種類あります。

① 外部電源方式
金属はその種類ごとに自然電位が決まっています。自然環境では電位が高い方から低い方へと腐食電流が流れ、その結果、腐食します。 その腐食電流に対し、電源を利用して防食電気を直接流すことで防食する技術です。使用する場所は、ガス管などの地中埋設管、海中の構造部など、規模が大きくなります。

② 犠牲防食方式
鉄に対して亜鉛をつなげると先に亜鉛が腐食し、鉄が錆から守られます。防食したい金属にイオン化傾向の大きい異種金属を接続して、異種金属に腐食の犠牲になってもらうのが犠牲防食方式です。

(3)環境制御

自然環境下で錆びる鉄でも、アルカリ性の環境下では、不動態となり錆が進行しません。例えば、コンクリートの内部です。鉄筋は通常そのままコンクリートに入れています。
逆にこのように金属の特徴を利用し、環境を制御して防食する方法を環境制御と呼びます。我々塗装屋が利用している身近なものでは、ボイラーの薬注、塗装のブースキラー剤(アルカリ系)があります。

(4)環境遮断

金属に被膜をつけて、腐食環境(酸素・水)を遮断する方法を環境遮断と呼びます。我々の塗装やめっきなどの表面処理の類は環境遮断の類です。中でも溶融亜鉛めっきは、環境遮断と犠牲防食の機能を兼ね備えているので、構造物の部材の防食では重宝されています。それでも溶融亜鉛めっきの錆の抑制効果は、長くて30年です。その後の対策は必要になります。

「技術を旅する」次回は「剥離」についてお話します。

小柳塗工所・小柳拓央氏
1968年生まれ。1992年、中央大学理工学部土木工学科卒、同年、カーナビメーカーに入社、バードビュー表示や音声ガイダンスの開発に関わる。 1997年、家業の(有)小柳塗工所に入社。1999年、父親である先代社長の急逝により代表取締役に就任。2010年、これまでの技術経歴を生かすため、国家資格である技術士資格(金属部門)を取得、2012年には総合技術監理部門を取得。以来、中央大学理工学部の兼任講師、東京工業塗装協同組合理事、東京商工会議所墨田支部評議員の公職も務める。