こんにちは、小柳拓央です。今回は、技術士資格の話をします。
そもそも「技術士はどんな資格でしょう?」。実は定義があるのです。定義:「技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいう」(技術士法 第2条)

技術士は、国家試験に合格し登録した人だけに与えられる称号です。医師や弁護士などのような、持っていないと仕事ができないという独占資格ではありません。技術士法に基づき「技術士」と名乗れる名称独占の資格、要は名乗れるだけです。ただ、建設系では公共事業を受注する条件として技術士資格者の有無が問われています。そのため、実質独占資格となっている部門もあります。

技術分野は現在21部門、その中で工業塗装を構成する技術分野は、ざっと7部門にもなります。

どんな試験か?というと、筆記試験と面接です。ただ、私が受験した時、「塗装」について、1次・2次共に筆記試験では全く設問にありませんでした。口頭試験で初めて、塗装の技術者として面接を受けました。

ちなみに、工業塗装関係者の多くが取得している技能士でも一定の専門知識が必要ですが、その違いは、技能士が"作業能力"が問われるのに対し、技術士は"考え方"・"伝え方"が問われるところです。

以前、私は塗装とは全く異なるメーカーの技術者でした。技術者としての"考え方"・"伝え方"は、この時期に触れることができました。

その経験を今の仕事に目に見えた形で生かすにはどうしたらよいか?技術士の定義を知ったとき、分析や研究・計画などのキーワードが前職と塗装技術とで繋がりました。

しかし、技術士試験を受験しようとした際、他分野の方から「塗装屋なら、技能士でしょ?技術士は無理」と言われました。確かに、塗装屋は、塗って「なんぼ」の商売です。残念ながら、外からはそう見えるのでしょう。逆にやりがいを感じました。

普段、技能が主体である塗装の仕事でも、図1のような分野が、開発や不具合対策で絡みます。これは技術です。工業塗装は、スプレーガンを持って作業するだけではありません。設備・品質管理・環境対策なども含めて、成り立ちます。

次回は技術士を取得した思いをお話しします。

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小柳塗工所・小柳拓央氏
1968年生まれ。1992年、中央大学理工学部土木工学科卒、同年、カーナビメーカーに入社、バードビュー表示や音声ガイダンスの開発に関わる。 1997年、家業の(有)小柳塗工所に入社。1999年、父親である先代社長の急逝により代表取締役に就任。2010年、これまでの技術経歴を生かすため、国家資格である技術士資格(金属部門)を取得、2012年には総合技術監理部門を取得。以来、中央大学理工学部の兼任講師、東京工業塗装協同組合理事、東京商工会議所墨田支部評議員の公職も務める。