「その作品、うちの事務員さんが塗装したんですよ」。先日、神奈川県工業塗装協同組合による塗装技能コンクールの作品展で受賞作品を見ていたときに、塗装会社の社長さんに声を掛けられた▲聞くところによると、出品用の金板が1枚余っていたとき、事務員さんが「やりたい」と手を挙げたという。その結果、自由作品の特別賞に選ばれた。その方は以前ネイルサロンに勤めていてエアブラシの経験はあるというが、工業塗装の経験はゼロというから驚きだ▲当然ながら塗装する際には職場の塗装技能者からのアドバイスを受けたが、それが竹田幸司さんだったことも大きかったと想像する▲竹田さんは神工塗が認定する工業塗装マイスターであり、塗装技能はもちろんのこと美的要素も持ち合わせている職人だからだ。作品展でもエアブラシ技法を用いた人物画・猫画や、自動車カスタムで見られるグラインダー技法で奥行きある炎を表現した作品が展示されていた▲作品を見る限り"プロの作品"と感じる。売り物としても十分成立すると思うが、竹田さんは「趣味の延長」と笑い、SNSに載せることもなく自分だけで楽しんでいるという▲いらぬ世話だが勿体ないと感じる。"外"に発信することで新たな展開を期待してしまう。そんな魅力的な技能や人との出会いだった(T)