地下鉄の駅構内に掛かっていた広告に思わず目が行った。大きな字で「看護師さーん!」と呼び掛けている広告には、オーストラリアで看護師として働くと平均月収40万円が得られるとある。ワーキング・ホリデーを利用して海外生活を楽しみながら、日本で働くより高収入を得られると謳う渡航支援会社の募集広告だ▲ワーキング・ホリデーといえば、協定を結んだ国同士で若者の海外体験を応援する制度。異文化の中で休暇を楽しみながら、その間の滞在資金を補うための就労を特別に認めた制度で、これまで多くの若者が利用してきた。その中身が、ここに来て様変わりしているようだ▲理由は、ワーキング・ホリデーで渡航できる海外諸国との賃金格差。例えば、オーストラリアの最低賃金(時給)は、日本円で約2,400円と国内の倍以上。カフェのアルバイト程度で月収30~40万円稼ぐことも可能で、「ワーホリに行って1年間で300万円貯めた」(SNS)など"出稼ぎ"の様相も呈し始めている▲長く続いたデフレと最近の円安で、更に開いた海外との賃金格差。ワーキング・ホリデーに限らず、高収入を求めて海を渡る若者が増えることは十分予想できる。少子化と長寿化に加えて、「高齢化社会・日本」を加速させる若者の海外流出。広告1つにも透けて見える世相である(K)