出張に行くと、夕食は居酒屋で済ませることが多い。地元の美味しい料理をいただきながら、店の大将との会話を楽しんでホロ酔い気分になる。出張の楽しみでもあったそんなひとときが、だんだん減ってきた▲店主の高齢化や後継者難、客の減少など地方での経営が難しくなっているのだろう。最近は独立系の地元の店が減り、目につくのはチェーンの居酒屋ばかりだ。そして案の定、こんな場面に出くわした▲先日、地方への出張で仕事終わりに入ったチェーンの居酒屋。注文は、テーブルにあるQRコードを自分のスマホで読み込み、画面に出てくるメニューの中からオーダーする仕組み。出来上がった料理を運んでくるのは配膳ロボットだ。人手不足がそうさせているのだろう。店員の気配さえ感じない、なんとも味気ない世界が広がっていた▲リクルートワークス研究所によると、2030年に341万人、2040年には約1,100万人の労働供給不足に陥るという。それを待たずとも、件の居酒屋のように人手不足の近未来は暮らしの身近なところで既に起こっている▲席につくと店員さんが水とおしぼりを持って注文を取りに来てくれ、できた料理を席まで運んでくれる。当たり前だと思っていたそんなことさえ贅沢な社会。早く頭を切り替えないと時代に追いつけない(K)