「この前配送担当者が辞めてしまった。本人からは『大型トラックに乗りたいから』と理由を説明されたけど、本音は塗料缶の積み下ろしが嫌だったと思うんだよね」。工業塗料販売店の社長が窮する表情で話してくれた▲1日に数十缶を顧客の倉庫に運び入れることもある業務と、フォークリフトで運び入れれば済む業務、そこを比べたときの判断だったのか▲人材不足の深刻さは業種を選ばない。先日、時折利用する駅前でタクシーを待っていたがさっぱり来ない。いつもよりも大分待たされて乗車したタクシーの運転手によると、タクシー会社にある60台のうち半分しか稼働していないという▲その話を取材相手に話したら、「自分は名刺をもらった相性の合う運転手さんが何人かいて、直接連絡するようにしている」とのこと。サービス提供者とユーザーが直接つながるビジネスモデルは一段と進んでいくだろう▲そんな流れの中で塗料・塗装産業の特徴が際立つ。これだけ多くの中小企業の流通業が残っている産業も珍しい。半製品を扱うことも存在価値を示す大きな要因と考えられる▲とはいえ冒頭の話のように販売店でも人手不足対策は喫緊の課題だ。従来のように対外的に価値を示すだけでなく、社内においてもその価値を浸透させることが求められている(T)