以前、小紙の海外視察ツアーでドイツの展示会を訪れたとき、特殊塗装の層の厚さに圧倒された記憶がある▲抽象画を思わせる複雑な模様、魅惑的な金属の輝き、錆や古材の枯れた風合いなどなど、会場内は特殊塗装の展示で満載。ヨーロッパ中の塗料メーカーが集まって競っていたのが、言わば塗料と塗装で表現できるアートだ▲そう言えば、フランス語で「職人」を意味するアルチザン(artisan)は、そのスペルからも分かるように、かつては職人とアーティストが同一視されていたことに由来しているという。職人の卓越した技能をリスペクトする文化がヨーロッパでは息づいていたのだろう、ドイツの展示会でもその空気を感じた▲国内の建築用塗料が右肩下がりを余儀なくされる中、目指すべき1つの方向がそこにある気がする。塗料にアートの装いをまとわせ、付加価値を高めていく方向。塗装職人が腕を磨きたくなる材料を提供し、業界全体でシフトチェンジに向かう。低収益ビジネスからの脱却も、働き手確保の課題も、そこに1つの解があるように思う▲と、そんなことを考えているところへ、アートな塗装を表現できる国産の材料やツールが少しずつ出てきた。次号、2月19日付の特集号でそのいくつかを紹介しています。さあ、次のフェーズに向かいましょう(K)