「目指すところは高校野球の強豪校なんです」。先日取材の場でそんな話を聞いた。3月18日から甲子園で始まった選抜高校野球大会に関することではなく、工業塗装会社である立神工業の辻涼樹社長の言葉だ▲立神工業では20年前から外国人技能実習生を雇用しており、技能実習計画に沿って早い段階でスプレーガンを持たせて塗装技能を習得させてきた。その結果、塗装業務の必要な戦力となっている実情がある▲実習期間が最長3年間であったとき、実習生が2年、3年と技能を高めたところで帰国の途になってしまう。3年周期で人材が入れ替わる様子を高校の入学から卒業までになぞらえたのが前述の辻社長の言葉だ▲人が入れ替わっても、毎年安定した強さを堅持している甲子園常連校を目指す。つまりは新しく入った人材であっても成長できる環境を整えることで、品質や生産性といった技術力を確保するとの考えだ。人の採用が一層難しくなっている現状では、技能実習から育成就労へと制度変更される外国人材の重要性は増している▲先の神奈川県塗装技能コンクールでは、立神工業から5名のフィリピンの従業員が入賞した。今までの道程から「技能を習得しコンクール入賞を目指す」文化が醸成されている表れだろう。"強豪校"の歩みは続く(T)