洋上風力用塗料を第2の柱に
グローバル展開を推進

日本ペイントマリン(本社・大阪市、代表取締役社長・白幡清一郎氏)は洋上風力発電施設向けの展開を強化する方針を打ち出した。船舶用塗料に次ぐ第2の柱として成長させたい考え。来年1月には海洋構造物の先進国であるノルウェーのNORSOK規格の取得を予定しており、日本、ヨーロッパやアジア市場での採用を目指す。同時に船舶用塗料についても高機能性製品のラインアップを拡充し事業拡大を図っていく。


再生可能エネルギーとして風力発電に関心が高まっている中、ヨーロッパでは洋上風力発電の普及が進んでおり、3,000基以上の実績がある。アジア地域でも台湾や中国、韓国でも実績が増えている。一方、国内では実績は数基にとどまるものの、2017年の改正港湾法により国土交通省は港湾における洋上風力発電の導入を後押しする動きが見られている。

こうした状況下、日本ペイントマリンは船舶用塗料の技術を生かして洋上風力発電向けに本格的な取り組みを始めている。来年1月には、ノルウェーの標準海洋規格NORSOKの取得を見込む。ヨーロッパをはじめアジアにおいて、洋上風力発電施設の防食塗装に影響力のある同規格を取得し、施主への指定活動を積極化させる。

膜厚を目視で確認できる
洋上風力向け

塗装仕様は下塗りと上塗りの工程となるが、下塗りには船舶用塗料の技術を横展開し上塗りには日本ペイントのふっ素樹脂系塗料を使用。日本ペイントHDグループのシナジー効果を発揮させる。

下塗りであるエポキシ樹脂塗料には船底塗料で採用している独自技術を駆使している。この塗料は塗料中の顔料成分の調整によって規定膜厚に達するまで段階的に塗膜の色が変化していく特徴を有する。

造船塗装では規定膜厚が確実に塗られていることが重要視されている。この特殊塗料であれば、塗装作業しながら目視で膜厚を確認できるため、その場でタッチアップも可能。結果として、品質確保と作業効率に寄与する機能性塗料として提案していく。

上塗りにはふっ素樹脂系を採用。重防食塗料として、長期耐候性が要求される橋梁や鉄塔など鋼構造物向けで実績を持つ。

洋上風力発電はイギリスやデンマーク、ドイツなどヨーロッパを中心に普及し、台湾、中国、韓国でも盛り上がりを見せており、今後は日本でも増えることが期待されるグローバル産業と言える。

当然、ブレード(羽)やタワーといった風車の製造工場はグローバルに広がっている。日本ペイントHDグループの中でもグローバル拠点化で整備が進んでいる同社は製造、供給体制を世界の各拠点に有している。組織的にも本社にグローバルプロジェクトチームを発足させており、全くの新規分野となる洋上風力発電向けビジネスを推進していく。

SOX規制で低燃費ニーズ
船底塗料 低摩擦技術が強み

船舶用塗料においても市場の変化を見据えた新たな取り組みを行う。年内に船底防汚塗料「エコロフレックス」に船体の流動抵抗を低減させる特許技術「ウォータートラッピング機能」を付与したタイプを市場投入する。

背景にあるのが国際海事機関(IMO)による硫黄酸化物(SOX)規制だ。船舶からの排気ガス中のSOXを低減するために海洋汚染防止条約により燃料油中の硫黄分濃度が世界的に規制される。2020年以降、外航・内航に適用されることが決まっており、現在多く使用されているC重油は現行のままでは使用不可能となる。

船主の対策としては排ガス洗浄装置(スクラバー)の使用やLNG(天然ガス燃料)など代替燃料の使用があるが、船主の経済負担が大きいなどの問題がある。もう1つの効果的な対策が硫黄分0.5%以下の低硫黄燃料油への切り替えだ。ただしこの場合、燃料単価が上がってしまうため燃料代の負担が増加する。結果として低燃費ニーズがより高まることが想定される。そこで同社では燃費削減に寄与する低摩擦型塗料の拡充を図る。

同社の低摩擦技術は「マグロやイルカの皮膚からヒントを得た」というウォータートラッピング機能と称する。メカニズムは、塗膜に含まれる特殊な高分子化合物が水との接触でゲル状に変化し、塗膜表面を流れる水を取り込むことで凹凸部分を減少させ、それにより摩擦抵抗を減少させる。

この技術は既に低燃費(低摩擦)型船底塗料として「LF-Sea」ブランドで市場展開している。同品は比較的ハイエンド船主向けの位置づけであるため、ボリュームゾーン向けの船底塗料「エコロフレックスSPC200」にこの技術を導入、「エコロフレックスSPC200LF」として年内の上市を予定している。マス需要を取り込むことで多くの船主への採用を目指していく。「エコロフレックスSPC200LF」は、第1ステップとして国内及びアジア地域の船主へ提案を進めていく。

同社はESG(Environment、Social、Governance)経営を掲げており、環境(Environment)に配慮した製品戦略を強く打ち出している。今回の取り組みもその1つとして環境配慮ニーズに対応した技術で事業拡大を目指す。



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