3年に及んだコロナ禍からの需要動向に注目が集まる中、塗料大手4社の2024年3月期の連結業績は、一過性の要因で減収増益となった大日本塗料を除いた3社が増収増益を計上した。価格是正が収益改善に大きく寄与した形で共通するが、業績は地域、分野ごとにばらつきが見られる。円安、物価高の影響が色濃く反映され、2024年度も厳しい局面が続くと警戒感を強めている。
関西ペイントの連結業績は、売上高5,622億7,700万円(10.5%増)、営業利益515億9,500万円(60.8%増)、経常利益576億8,500万円(43.4%増)、当期純利益671億900万円(166.4%増)となり、売上及びすべての段階利益で過去最高を更新した。
価格転嫁と日本、インドの自動車用が増収に大きく寄与した他、欧州・Kansai Heliosを通じて昨年取得したCWSの新規連結(約119億円)が加わった。分野別売上増減は、自動車+235億円、工業+215億円、汎用+67億円、船舶+45億円、その他-30億円となった。
利益面では、低収益資産売却とCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)改善による資金効率の改善や生産性向上策が寄与し、セグメント利益が大きく伸長。営業利益と持分利益を合わせたセグメント利益は214億円増の592億円。EBITDAマージンは14.6%(3.3ポイント増).調整後ROEは12.9%(4.1ポイント増)となった。年間配当金は10円増配の40円。
次期については「コスト上昇圧力が進み厳しい経営環境になる」(毛利訓士社長)としつつ増収増益を継続する見通し。インドの工業用、自動車用が好調を維持する他、欧州・ワイルバーガー社の新規連結(約168億円)を加え、6,000億円を突破する見通しだ。
会見に出席した毛利社長が強調したのは、安定したキャッシュ創出力と株主還元の拡充。「事業成長とバランスシートの改善で創出したキャッシュフローを成長投資と人的投資に回すことで潤沢なキャッシュを生み出す力がついた」とコメント。株主還元においては「事業投資、M&Aを除いたすべてのフリーキャッシュフローを株主に還元する」と述べ、累進配当を導入する他、CB(転換社債)希薄化の懸念払拭などを目的に自社株買いを積極化する方針を示した。
中国塗料の連結業績は、売上高1,161億7,400万円(16.8%増)、営業利益121億8,500万円(213.5%増)、経常利益130億2,500万円(199.4%増)、当期純利益98億9,200万円(157.0%増)。新造船、修繕船とも主力の船舶用塗料分野が大幅増収に寄与した。
地域別では日本売上高が9.2%増の405億8,000万円、セグメント利益19億5,700万円(前期4億1,800万円の損失)を計上。建材用塗料の販売が落ち込んだが、船舶用塗料、重防食塗料が好調に推移。価格適正化、高付加価値製品の拡販が収益改善に寄与した。
その他、中国:売上高199億5,000万円(22.7%増)、韓国:売上高118億7,600万円(48.9%増)、東南アジア:売上高170億8,100万円(9.2%増)、欧州・米国:売上高266億8,500万円(18.8%増)となった。
期末配当金は前期比28円増の46円。年間配当金は45円増の80円。次期は中間40円、期末41円の81円を見込む。
次期は、修繕船、新造船向けが好調を維持する他、東南アジアを中心に重防食塗料が伸長する見通しを示した。
エスケー化研の連結業績は、売上高1,008億8,300万円(5.5%増)、営業利益120億8,500万円(21.6%増)、経常利益170億5,800万円(33.2%増)、当期純利益118億2,500万円(30.9%増)となり、売上高1,000億円の大台を突破した。
建築仕上塗材事業は、高付加価値製品の販売が寄与し、売上高4.7%増の896億4,100万円、セグメント利益18.1%増の131億4,800万円を計上。耐火断熱材事業は都市部の再開発事業が牽引し、売上高94億6,100万円(22.7%増)、セグメント利益13億9,300万円(56.2%増)となった。
期末(年間)配当金は前期比265円減の135円。次期は15円減の120円を見込む。
大日本塗料の連結業績は、売上高719億4,000万円(1.2%減)、営業利益49億100万円(24.2%増)、経常利益53億3,600万円(23.6%増)、当期純利益46憶円(33.0%増)となった。
国内塗料事業売上高は、5.1%減の505億5,100万円、営業利益22億円(前期比2億1,400万円増)。一般用分野は、一部製品の不適切行為問題による需要減少の影響を受けたが、価格是正及び高付加価値製品の拡販により売上が増加。粉体製造子会社の合弁解消に伴う売上高35億円の減少が響いた。
海外塗料事業は、東南アジア地域の外装建材用塗料の需要不振、中国で日系自動車メーカーの減産影響を受けたが、タイ及びインドネシアで自動車部品用塗料の新規案件獲得が寄与。売上高5.7%増の85億2,900万円、営業利益4億1,600万円(前期比2億1,200万円増)となった。照明機器事業は増収増益、蛍光色材事業は増収減益となった。
期末(年間)配当金は前期比10円増の35円。次期は5円増の40円を見込む。
次期は、円安や物価上昇に伴う景気の下押しリスクを懸念する一方、国内の一般用分野で堅調な需要環境が見込まれる他、海外塗料事業及び照明機器事業においても堅調に推移するとの見方を示した。