カシワバラとPaintnoteが資本業務提携
業界DXの加速なるか

プラント塗装最大手のカシワバラ・コーポレーション(以下カシワバラ)とITスタートアップ企業のPaintnoteが3月下旬、資本業務提携に合意した。カシワバラは、自社の投資プロジェクト「JAPAN CON-TECH FUND」を通じ数千万円を出資し、塗料販売店向けクラウド型販売管理システムを展開するPaintnoteを支援する。カシワバラは、建設業界の課題解決に挑むスタートアップ企業の支援を積極化しており、事業規模を超えた連携からイノベーションを起こそうとしている。


カシワバラ・コーポレーション(本社・東京都港区、代表取締役・柏原伸介氏)は、1949年に柏原塗装店として創業し、石油化学プラント塗装で事業を拡大、2009年に柏原塗研工業からカシワバラ・コーポレーションに社名改称し、現在はインフラメンテナンス、マンション大規模修繕、建築、内装リフォーム・リノベーションと事業領域を広げている。グループ企業数は12社、従業員は1,552名。2019年度のグループ売上高(単純合算)は811億円で、マンション大規模修繕事業とインフラメンテナンス事業で400億円を超える。

その同社が、建設スタートアップ企業を支援するため2019年3月にプロジェクトとしてスタートしたのが「JAPAN CON-TECH FUND」。革新的な技術と成長性が期待されるスタートアップ企業にリスクマネーと成長ノウハウを提供することで、建設業界に新しいテクノロジーを吹き入れることを目的に設立した。約50億円の投資基金を保持し、これまでドローン系ベンチャーのCLUE、センシンロボティクス、ドローンパイロットエージェンシーの他、ご近所SNSマチマチなどに出資した。

プロジェクトマネージャーの山田浩司氏は「単なる資金調達だけではなく、お互いが持つリソースを共有することでシナジーを見出すことを重視している」とプロジェクトの意義を説明。既に自社物件で提携先のドローン技術を活用するケースもある提携先にとってはプラント塗装業界最大手である同社の支援の恩恵も少なくないようで、投資対効果においては、上場やM&Aなどキャピタルゲインでの収益化を見込む。

対するPaintnote(本社・東京都品川区、社長・藤井友輝氏)は、2019年7月に設立したITスタートアップ企業。インターネット経由でサービスを提供するSaaS(Software as a Service)開発を得意としており、昨年9月に塗料販売店向けクラウド型販売管理システム「Paintnote」を開発。今年2月には、塗料販売店と塗装ユーザーを結ぶクラウド型受発注システム「Paintnote EDI」をリリースした。

注目すべきは、同社が塗料業界に特化したシステム開発に注力している点。  

全くの未知の領域だったが、「長く続く歴史と相応の産業規模を有しながら、労働集約型を色濃くする塗料業界にIT化の可能性を感じた」と藤井社長。システム開発に先駆け実態把握が必要と、塗料販売店や塗装会社の訪問を繰り返し、アルバイトを体験するなどバイタリティも持ち合わせている。

将来的には、製販装連携の業界DXに意欲を見せるが「まずは導入企業様に対して、しっかりサポートできる体制を構築していきたい」と開発人員の増強を図り、システムの完成度を高めていく方針を堅持する。

関東エリアで試験運用を検討

両者が最初に出会ったのは、山田氏からのコンタクトがきっかけ。「Paintnoteさんが塗料業界に特化している点が興味深く、塗装を本業とする当社にとって大変興味深かった」と説明。Paintnoteの藤井社長も開発サポート体制の強化のための資金調達を求めていたこともあり、その後やりとりを続ける中で、今回の資本業務提携の合意に至ったという。

出資額は、創業時からPaintnoteを支援するVCと合わせて数千万円。「少数株主としての存在は変わらず、当社の経営に影響を及ぼすものではない」(藤井社長)とあくまでも事業強化のための協力と位置付ける。

ただ、カシワバラサイドにとって、塗料販売管理システムに注力するPaintnoteの事業は、直接のシナジーがないようにも映る。山田氏も「当社が取引させて頂いている塗料販売店は、普段から当社の要望にいろいろと応えて頂いており、IT(EDI)化に対する課題が特段上がっているわけではない」と話す。その中でむしろ同社が着目したのは、業界全体に対する貢献。「当社のような客先の要望に応えようとするばかりに塗料販売店の負荷が高まり、ロスやミスが出る状況になっているのであれば改善に寄与していきたい」という。

そのため、Paintnote製品をユーザーの立場から支援するため、カシワバラの営業所レベルで試験運用することを決定。現在、取引する塗料販売店に対し、「Paintnote-EDI」導入協力を依頼しているという。まずは関東圏から運用を始める方針だ。

Paintnoteサイドにとってカシワバラの協力は、営業上での効果も見込めるが、SaaS開発は、定着・普及すると加速度的な成長曲線を描くビジネスモデルとして知られる。そのため藤井氏は「まずは顧客に対してサポート体制を整えることが先決」と拡販よりも内部体制の強化を最優先する考えだ。

ただ、塗料販売店向けのみでは成長性に限界があることも指摘されているところ。「更に成長を押し上げるためには二の矢、三の矢が必要になる」と山田氏。両社の連携が業界DXの加速に弾みをつける可能性を孕んでいる。



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