薄膜コーティング剤が躍進

「産業財から消費財まで、あらゆる分野のアフターマーケットを制する」。そんな目標を掲げたハドラスホールディングス(本社・東京都江東区、代表取締役・山本英明氏=写真)のナノマテリアルコート「ハドラス」がブレイクしている。薄膜、高硬度の被膜を形成するコーティング剤をベースに、さまざまな機能や特性を付加する表面コーティング剤の「ハドラス」。名だたる大手企業の採用が相次ぎ、急速に市場に浸透している。


「ハドラス」は、素材表面に薄膜のガラス被膜(クリヤー)を形成する1液性のコーティング剤。独自のナノテクノロジーを駆使して開発した。顕微鏡でしか測定できないナノレベルの薄膜が目に見えないクラックまで入り込み、対象物を外的ダメージからガード。硬度9Hのガラス被膜を形成しながら、対象物の動きに追従し、金属、プラスチック、ゴム、人工皮革など吸い込みのないほとんどの素材に適応する。

このナノマテリアルコートをベースに、防汚、防錆、防傷、抗ウイルスなど要望に応じてさまざまな機能を付加し、機能性コーティング剤として供給するのが同社のビジネスだ。自社の製商品や施設に、事後的に新たな機能や効果を付加したいアフターマーケットに展開。産業財から消費財まで幅広い領域に広がっている。

例えばスマートフォンのコーティングサービスでは大手携帯キャリアが同品をスペック。スマホ画面の防汚、防傷、防割、抗菌・抗ウイルスなどの機能を付加できるとして、系列販売店のサービスとして人気だ。家電量販なども含め全国数千店のショップに広がった。

また、ユニークなところではゴルフクラブへのコーティングがある。同品をヘッドやシャフトに塗布することで、防汚や防傷、剛性アップを付与する。それによりヒューマンデータにおいて飛距離が伸びた事例も。ナノレベルの被膜で表面の剛性を上げブレを抑制。それらの効果を期待し、全国のゴルフ用品店のアフターサービスで引っ張りだこだ。

「ハドラス」の採用を自社のブランディングにつなげるケースも目立つ。NECやセブン銀行、トヨタホーム、第一興商、西松建設、北海道コカ・コーラボトリングスなどの企業は、抗ウイルス・抗菌機能を突出させた「Dr.ハドラス」を自社の製品や施設に採用したことをニュースリリースで発表。パソコンやATM、住宅設備、自動販売機、カラオケ機器など人の手が触れる箇所に抗ウイルス・抗菌コーティングを施していることで、利用者の安全をまもっているとのメッセージだ。

更に、国内最大手のディベロッパーも、所有・管理するビルのエレベーター内のコーティングでやはり「Dr.ハドラス」を採用。駅や空港の施設や設備、鉄道車両、バスなど不特定多数の人が利用する公共のシーンでも広がっており、"ハドラス施工済み"のシールを至るところで目にするようになった。
コーティング剤の施工(加工)は、採用企業側が行うのが基本。保守メンテナンス要員や販売店舗のスタッフなど採用企業の人員が施工サービスを提供する。このため、それらのスタッフに同社が施工方法をレクチャー。施工ライセンスの所有者も既に多数いる。未経験者でもレクチャーを受けることで施工をマスターできる簡便性もポイントだ。

グローバルニッチトップ企業を目指す

「ハドラス」が多くの製商品や施設のコーティングでアフターマーケットを生み出している背景について山本英明社長は、「薄膜のコーティング剤のため、対象物の質量や外観、操作性などを損なわずに、問題解決や付加価値につながる新たな機能を付与できるから」と説明。薄膜、高硬度のガラス被膜に、防汚、防錆、防傷、防熱、防紫外線、防カビ、防藻・防フジツボ、抗ウイルス、抗菌など客先の求める機能の付与を次々と実現。その開発力がアフターマーケット創出の背景であると同時に、同社の核心だ。

ハドラスホールディングスがナノマテリアルコートの研究開発をスタートしたのは2014年。建築塗装業として起業し、成功する中で、「もっと社会や環境に貢献できる材料を開発したい」(山本社長)との使命感から、研究者を雇い独自に開発をスタート。

その過程で、中小企業の開発支援を行う東京都立産業技術研究センター(都産技研)との関係を構築。同社が開発するコーティング剤に都産技研が注目し、2017年に都産技研内にラボの設置が許可される異例の展開となった。

以降、都産技研の強力なバックアップを受け、そこから開発が一気に加速。2020年、ナノマテリアルコーティング剤「ハドラス」の発売に漕ぎつけた。さらに現在、全国4校の大学と産学連携体制を強化、共同研究をスタートすべく準備を行っている。

折しも、新型コロナが勃発。人の手が触れる物や箇所に持続性の強い抗ウイルス機能を付与できる点に市場が注目、発売間もない「ハドラス」に火がついたかたちだ。抗ウイルス・抗菌機能を突出させた「Dr.ハドラス」は、SIAAの認証をいち早く取得。付着ウイルスを抑制することから抗ウイルスを求める多くの分野のアフターマーケットで台頭した。

抗ウイルス・抗菌で開花したハドラスの躍進を第1ロケットとし、現在推し進めている海外展開を第2ロケット、そしてその先の第3ロケットを、SDGsや脱炭素社会における産業用途の事業拡大に見据える。

例えば風力発電における空力抵抗軽減が発電量の向上や騒音の低減をもたらすケース、航空機など高速移動機の燃費向上効果、太陽光パネルにおける発電量アップや電極の割れ防止、EVや電子材料の放熱用途など環境優先社会で大きく動く産業用途でハドラスの潜在力を開花させていきたい意向だ。

独自のナノマテリアルコートであらゆる分野のアフターマーケットニーズを制し、「グローバルニッチトップを目指す」(山本社長)。



山本英明社長
山本英明社長
ナノマテリアルコート「ハドラス」
ナノマテリアルコート「ハドラス」
抗ウイルス・抗菌機能を持つ「Dr.ハドラス」
抗ウイルス・抗菌機能を持つ「Dr.ハドラス」

HOMENew Trend薄膜コーティング剤が躍進

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