「重い荷物が運べず、引け目を感じた」「自分の作業が遅れ、チームに迷惑をかけた」。2月15日に大阪市内で開催された日塗装主催「けんせつ女子ビューティセミナー」(協力・資生堂ジャパン、wiwiw、大塚刷毛製造)では、男性との体力の違いにプレッシャーを感じる女性の率直な声が聞かれた。

日本塗装工業会(会長・加藤憲利氏)は一昨年、建設業界で働く女性を応援し、女性の入職者支援、建設業の活性化を目的とした「けんせつ女子ビューティセミナー」事業をスタート。スキンケア講座や講演、参加者同士のディスカッションなど学生や業界に従事する女性を対象にしたセミナーで、これまで愛媛、宮城、広島で開催。今回4回目となる大阪会場には、約80名が参加した。

国が掲げる「女性活躍推進」に先んじる形で建設業界における女性の入職者も増加傾向をたどる。国土交通省によると女性技術者は、平成26年の1万1,000人から平成30年に1万8,000人に増加。女性技能者も8万7,000人(平成26年)から10万4,000人(平成30年)に増え、日塗装会員企業においても約700人の女性が直用工として働いている。

特に人材不足については、塗装業界の喫緊の課題。女性入職者の拡充に向け、情報発信や環境づくりが求められている。

この日、「女性活躍推進と自分らしいキャリアの考え方」をテーマに講師を務めたのは女性活躍推進事業や仕事と介護の両立推進事業を手掛けるwiwiw(ウィウィ)の深田絵里講師。

深田講師はまず性別、人種、年齢に関係なく、人それぞれ視点が異なる存在であることを強調。「見える違いだけでなく、ライフスタイルや思想、経験、価値観など見えない違いも認めて、受け入れることが大切」と述べ、性別だけに着眼することに警鐘を鳴らした。

その上で深田講師は、「女性の活躍推進は、働き方の問題ではなく、人権問題と捉えています」と指摘。自分自身でも気づかない無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が男女とも性別役割意識を生み出している現状を述べ「女性が働きやすい業界は、誰もが働きやすい業界になるということ。しいては業界の活性化にもつながる」と女性活用の意義を伝えた。

最後に深田講師は、参加者に対し、キャリアビジョン(将来ありたい姿、状態)の策定を推奨した。

「やりたいこと、すべきこと、できることが交わったときにモチベーションと成果が最大化します」と説明。職場での役割、スキル(知識、資格など)、自分の個性・特性を考慮したキャリアビジョンを持つことが「自分らしく働くための拠りどころになります」と話した。

「できることに専念する」

しかしながら、体力仕事の要素が強い塗装業界において女性のハードルが高いのも事実。そこで実際に業界でキャリアを重ねる女性の声を聞くべくパネルディスカッションが行われた。

パネリストとして登壇したのは、営業及び商品開発の経験を持つ好川純子さん(好川産業常務取締役)と工場で橋梁塗装に従事する堰口麻紀さん(三建)。2人は深田講師のリードの下、やりがいや苦労話について語った。

やりがいについて好川さんは「その時々で仕事の内容は変化していますが、開発した商品がお客さんに使われ、サイトで良い評判を見た時は素直に嬉しいですね」とコメント。堰口さんも「大変な仕事も工期に間に合わせることができた時は嬉しい」とエピソードを披露した。

また苦労話については、2人とも体力的な部分を指摘。好川さんは「力仕事では男性に敵いませんが、あるメーカーの男性高齢社員の方が細かな仕事に専念している姿を見て自分も無理する必要がないと、心を切り替えることができました」とエピソードを披露。堰口さんも「迷惑をかけることもありますが、そこはどんな仕事も同じと思い、自分ができる仕事に専念するようにした」と話した。

最後に参加者へのメッセージとして「その時感じたものは後で生きてくると考えています。楽しいことばかりではないと思いますが、1日の終わりには自分自身を労って頂きたい」と好川さん。堰口さんは「建設業に女性が増えることで環境はどんどん良くなる。入ってみると結構楽しくなると思います」と語った。

この他、資生堂ジャパン担当者によるスキンケア講座を開催。試供品を通じ、寒暖差に負けないスキンケア対策、パーツ美容(ハンド&ヘア)、似合う色探し、似合う眉の書き方について学んだ。