日本塗料工業会、日本塗料商業組合、日本塗装工業会で構成する製・販・装塗料塗装普及委員会(委員長・水谷成彦氏)は5月14日、「2024年度CCSプレイベント」をオンライン形式で開催した。CCSは基礎編「Color Communication for Sales」と応用編「Color Coordinator Skill up Seminer」の略。当日は両コースの案内を交えカラーコーディネーターとして現場で活躍する実例を通じてCCSの有用性を訴求した。
塗料の3大機能と言われる「美観」「保護」「色」。そのうち「色」は商品、建物の外観意匠を担う重要な役割を持ちながら、選定段階においてメーカー及び塗料販売店が主体的に提案できる領域は限られている。特に建築物の色彩設計やカラーコーディネートは、塗料販売や受注獲得のための補完的なポジションに置かれ、ノウハウや経費を投じながらも無償サービスに陥っている例も少なくない。
この補完的な立ち位置にある色彩スキルの社会的評価を高め、ビジネスの領域まで高めようというのがCCSの目的。プレイベントでは、埼玉・富田商店の渡辺美紀さんが登壇し、塗料販売店の目線から色彩ビジネスの可能性について語った。
塗料販売店が施主の色決めを支援
日塗工・清水慶司氏とのインタビュー形式で行われた講演で渡辺さんは、社内に新たに発足したカラーコーディネートサービスに配属された経緯や業務内容について語った。
建築塗料販売を主力とする富田商店が講じたカラーコーディネートサービスは、顧客である塗装会社が請けた塗り替え物件に対し、塗装会社に代わって施主に色決めの支援や配色提案を行うというもの。価格競争に陥りやすい塗料販売業の差別化策として渡辺さんに白羽の矢が立てられた。
とはいえ、社内に誰も実務経験者のいない全く未知の領域。そこでまず着手したのが、カラーコーディネーター資格の取得。「サービスに根拠を持たせる必要がある」との会社の勧めに従い、カラーコーディネーター資格(東京商工会議所)の「スタンダード」「アドバンス」を立て続けに取得し、サービス開始にこぎつけた。
渡辺さんが担うのは、外壁塗り替えを受注した顧客のカラーコーディネート支援。物件写真から複数の配色パターンを制作し、塗装会社はその配色パターンを施主に提示し、最終決定に落とし込んでいく。3パターンを1セットにした有償サービスだ。
ただカラーコーディネーターは、色彩知識を生かした配色設計にとどまらず、多くの実践的プロセスを要する。
施主の好みや嗜好に寄り添いつつ、地域環境や隣接物件との調和、建物の形状などを考慮し、色彩設計の最適解に導いていく。更に工期上の制約も加わり「足場が架かっても色が決まらず、施主に直接出向いたことがありました」と渡辺さん。施主の悩みや不安感を解きほぐすコミュニケーション力もカラーコーディネーターに求められる。
こうした実践的なスキルを身につける上で役立ったのがCCS。「実践を想定した演習もさることながら、業種を越え、同じ色彩設計に従事する方々との出会いが私の根幹となっている」。日常業務で生じた課題や問題を気軽に相談できる関係を得たことが支えになっているという。
最後に色彩サービスの価値について渡辺さんは「お客さん(施工店)の受注を支援する上で色彩知識は大きな武器になっている。施主のカラーニーズも多様化しており、色彩サービスの価値はより高まっていく」と述べた。
2021年にスタートしたCCSは、カラーコーディネーター試験の制度改革によって外れた景観色彩のスキルを補うことを目的に「基礎編」と「応用編」の講座が設けられた。
CCS講師の石原麻子さん(関西ペイント)は、「基礎編は業種問わず塗料業界に関わるすべての方々に受講して頂きたい」とアピール。専門知識の修得と実践スキルの養成を目的とした応用編と合わせて参加を呼び掛けた。
最後にプレイベントの企画、司会を務めた清水氏は「カラースキルをビジネスとして成立させるポテンシャルは十分にある」とした上で「色彩に対し業界内での理解が深まれば深まるほど、その成果が顕著になる」と述べた。6月に基礎編を東京、大阪の2会場で開催する。(写真提供・日本塗料工業会)