日本塗料工業会、日本塗料商業組合、日本塗装工業会の製販装3団体は8月23日、「塗料・塗装最新動向セミナー」をオンラインで開催した。日本塗料工業会は塗料の出荷数量や金額、需要実績見込みや需要予測から最新動向を解説、日本塗料商業組合や日本塗装工業会も最新の活動内容を報告した。

■塗料出荷動向やCO2排出に言及 日本塗料工業会

日本塗料工業会専務理事の原川浩美氏は「日本と世界の塗料需要動向」をテーマに講演を行った。始めに経済産業省化学工業統計から塗料の出荷数量と金額を示した。2022年の塗料出荷数量(販売ベース)は前年比96.3%の153万6,046トン、出荷金額は107.7%の7,087億2,800万円となった。製品の値上で増加した出荷金額に対して、需要の停滞で出荷量が伸び悩んでいる実態が数字に表れている。
また原材料価格についても言及。2021年はじめごろから円安傾向にあり資源輸入価格は少しずつ上昇。その後、ロシアのウクライナ侵攻を境に急騰している。特にLNGは2022年3月の100円台から9月には180円台まで上昇。原油価格も60円台から100円台に、石化用ナフサも60円台から80円台に上昇した。

資源輸入価格上昇とともに化学製品の企業物価指数が上昇し始めた。塗料メーカーの企業物価指数は2021年9月から上昇を始め、一時10%ほど上昇した。原川氏は「エネルギー価格の高騰や電気代、物流費なども高騰しており、総合的に厳しい状況」と説明した。

次に日塗工が調査している需要実績見込みと需要予測から各分野の動向について解説した。主要な区分を見てみると、自動車新車ではコロナで半導体不足の影響を受け、自動車生産台数が減少し、2020年の自動車新車向け塗料は、数量ベースで-15%の20万5,000トンと大きく落ち込んだ。ただ、2022年には21万2,000トン、2023年には23万3,000トンとコロナ前の水準まで戻ると予想。建築用塗料でも2020年には数量ベースで-10.1%となったものの、2023年の予想では37万1,000トンとコロナ前まで戻ると予想した。工業用や船舶分野でも回復を予想した。

原川氏は塗料業界のCO2排出量についても言及。日塗工会員全体のCO2排出量は28万トン、塗料事業に関わるCO2排出量(scope1、2)は20万トン、炭素生産性を142円/kgと推定した。「他の化学系企業に比べるとCO2排出量は比較的少なく、炭素生産性は高いといえる。より正確な数値を精査し、情報発信していきたい」と説明した。

■2月に塗料マイスター検定を実施 日本塗料商業組合

日本塗料商業組合専務理事の澤野英樹氏は「塗料販売業の現況と今後の取組み」と題し講演した。
澤野氏は始めに同組合の組合員数の推移について説明した。組合員数は平成4年の2,447社をピークに減少しており、令和5年4月には1,252社、ピーク時の51%となっている。ここ数年は倒産や廃業などによる脱退も増加傾向にあり、厳しい状況を示した。

塗料販売店の社員数は「1~5人」が33.6%と最も多く、「6~10人」が25.4%と、全体の約60%が10人以下の企業規模。人材採用についてのアンケートでは、採用を実施している社店は中途採用82%、新卒採用が18%と中途採用が圧倒的に多い結果となった。今後の採用予定では中途採用の予定がある企業は43%、来年度以降に新卒採用の予定がある企業は10%となった。また、事業承継の設問については、「会社の後継者を決めていない」が約50%、「身内を指定」が約35%、「社員登用」が約12%となっており、後継者不足が進行している。

続いて、値上げの対応状況について説明し、「ほぼできている」「まあまあできている」が87%を占める結果となったことを報告。
販路開拓への取り組み・今後の予定についての設問では、約40%が「メーカーを利用して得意先を増やす」、約30%が「塗装工事を含めた工事請負」と本業の深耕と塗料販売からの派生事業確立の2つの方向性が目立った。

同組合の活動報告では、塗料マイスター制度の進捗について報告。現在、初級クラスであるスタンダードについて、オンラインでの検定を実施予定。現段階では10月に要項を発表し、11月に検定受験者を募集、2月に検定を実施する予定と報告した。

■特定技能の受け入れ準備進める 日本塗装工業会

日本塗装工業会専務理事の村木克彦氏は「建築塗装の現状と今後の取組み」をテーマに講演を行った。
はじめに、令和4年度の完成工事高に言及。令和4年度の完成工事高は2.6%増の8,898億円となり、ほぼコロナ前の水準まで回復した。内訳を見ると、新築が16%、改修が84%と改修需要を中心に塗装市場が形成されている。

一方、建築塗装業の動向について、技能者の減少の面から話を進めた。日塗装会員企業の塗装技能者は平成13年には2万5,000人を超えていたが、令和4年度は1万5,029人となっており、漸減傾向が続いている。また、外国人技能実習生の割合が増加していたが、令和4年度は前年比で2人減の929人に減少、コロナ禍の影響が出た。
建設業の人材不足緩和に期待されているのが特定技能外国人制度だ。昨年8月の閣議決定で、塗装業を含め特定技能外国人を雇い入れられる業種が拡大。これを受け日塗装では、昨年10月に建設技能人材機構(JAC)へ加入し、会員への周知を行い、特定技能外国人受け入れへの整備を行った。

また、「受け入れ準備検討委員会」を「特定技能制度検討委員会」に改め、活動をスタートさせた。
最後に、同会の活動として女性活躍推進を実現するための施策である「けんせつ女子ビューティーセミナー」やリフォーム文化の発展に寄与するリフォーム工事を表彰する「リフォームアワード」などの活動を紹介した。