半製品では異例、省エネ大賞受賞
断熱塗材「ガイナ」

日進産業(本社・東京都板橋区、社長・石子達次郎氏)のセラミック断熱塗材「ガイナ」が今年度(平成29年度)の省エネ大賞(審査委員会特別賞)を受賞した。家電製品やハイブリッドカーなど省エネ効果が平準的に発揮され可視化できる完成品の受賞が多い中にあって、半製品かつ現場作業を要する"塗材"が省エネ大賞に選ばれたのは極めて異例。夏季だけでなく冬季においても高い省エネ効果が得られる点が評価された。一般に名の通った省エネ大賞を受賞したことで市場でのプレゼンスが更に高まることになる。


省エネ大賞は、省エネ性に優れた製品やビジネスモデルを表彰する制度で、1990年にスタート。"環境"や"省エネ"がセールスポイントになる現代、そのレッテルを求めて多くの事業者が応募する表彰制度になっており、社会的な認知度も高い。省エネルギーセンターが主催、経済産業省が後援。

賞の性質上、例えば従前の機種に比べて消費電力を何%減少したなど省エネ効果を分かりやすく明示できる必要がある。このため歴代受賞してきたのはエアコンや冷蔵庫、照明器具などの家電製品や自動車、それらを構成する部品・部材、産業装置など省エネ効果が明示できかつ平準的に発揮される完成品(システム)がほとんどであった。

それに対して、「半製品かつ現場作業というファジーな要素を伴う"塗材"が選ばれたのは極めて異例」(石子社長)であったが、それには伏線があった。

ガイナは一昨年、エネルギー部門の技術開発で権威のある賞「岩谷直治記念賞」を受賞した。岩谷産業の創業者・岩谷直治氏の私財を基金に設立された岩谷直治記念財団が、エネルギー及び環境に関する技術開発で顕著な産業上の貢献が認められる業績に贈られる表彰制度。制度開始以来、大企業や公立研究所の受賞が居並ぶ中で中小企業では初の受賞となる快挙であった。

「企業の研究者や技術者が目標としながらもなかなか獲得できない」(石子社長)という権威のある岩谷直治記念賞において『特殊中空セラミックを使用した断熱塗料開発と応用』で受賞した技術的な裏づけが今回の省エネ大賞の受賞理由とも重なっている。

省エネ大賞では、『複数の金属を混入して発泡させた微細な中空セラミックビーズが塗装によって基材に積層することで、日射反射とともに遠赤外線効果による体感温度への影響も期待。一般塗料に比べて消費電力削減効果は夏季で23.4%、冬季で21.6%を達成』と、夏季の冷房だけでなく冬季の暖房の省エネ効果も発揮する点を受賞理由に挙げている。

石子社長は、「ガイナの塗膜は近赤外線の反射と遠赤外線の放射という相反する現象を両立しているのが最大の特徴」と説明。遠赤外線の放射により塗膜表面は周辺の気温と同じ温度になろうとする性質があり、暖かい方から寒い方へという熱移動が起きず熱のロスをカット、冬季においても省エネ性を発揮するメカニズムと説明する。「家庭部門においては夏場の冷房よりも冬の暖房に掛かる費用の方が大きい。半製品の塗材でありながら、1年を通して省エネ効果があると認められたのが今回受賞できた理由」と自信を深めている。

ちなみに、ガイナの持つ遠赤外線効果により霧が文字通り霧消することから防霧ネットのコーティング材として九州自動車道で全面的に採用。建築分野だけに限らず需要分野を広げているのもガイナの特徴だ。

ガイナで世界に打って出る

テレビや雑誌などで度々とり上げられ元々知名度の高い同品だが、今回の省エネ大賞受賞により市場での存在感が一層高まった。一方で、「日本の環境技術は世界的にトップレベルに見られており、そこで環境に貢献する権威ある技術表彰や国の機関による省エネ表彰を受けたことは世界にも十分通用する強み」(石子社長)とし、海外展開に着手する。

その第1弾としてガイナのヘビーユーザーでもある塗装会社の麻布(本社・愛知県春日井市、社長・池田大平氏)と折半出資で新会社の「日進香港」(所在地・東京)を今年1月に設立。同社を親会社として近日中にも香港に現地法人を立ち上げる。

「中国は現在、ドラスティックな環境規制、環境改善施策を推進しており、グリーンビルポリシーに則った省エネ建築が急速に進むものと見ている。その市場において、環境先進国・日本で国からお墨付きをもらった環境改善省エネ塗材『ガイナ』のポテンシャルは計り知れないものがある。また中国は外装だけでなく内装も塗り仕上げが一般的であり、内装でも効果が絶大なガイナの特性が更に生きる。そういった意味でも需要は膨大で、中国やASEAN諸国のハブである香港から展開を始め世界に通じる商材として大きく育てたい」(池田氏)と、中国の環境政策を追い風に一気に浸透させたい意向だ。

既に岩谷直治記念賞を媒介に、現地の強力な建材流通ルートともコネクションができており、「早期に事業化できる」(池田氏)と自信を見せるとともに、「海外での実績と信頼が逆輸入されることで国内市場にも更なる相乗効果が生まれる」(石子社長)とし、海外展開への期待を高めている。



日進香港を立ち上げた石子社長(左)と池田大平氏
日進香港を立ち上げた石子社長(左)と池田大平氏

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