建築塗装会社が目指す「好循環経営」

「子ども達が笑える未来をつくる」。岩手県盛岡市の建築塗装業・川上塗装工業(川上秀郎社長)が掲げるミッションだ。自社が向かう先をそう定めたとき、「地球環境、社会、地域へ向けた当社の役割と事業活動がリンクし、視界がクリアになった」(川上氏)と自信が深まった。塗装会社ならではの好循環経営を目指す。

 


川上塗装工業は、戸建住宅の塗り替えを中心に自社元請で事業を展開。月に25棟ほどの施工をこなし、この分野では県内トップクラスの塗装会社だ。川上秀郎社長が2005年に創業し、夫人で現専務取締役の冴華さんとともに会社を成長させてきた。

2人に共通している思いは、「意味のある会社」にすること。「塗装業として、世の中のために意味のある会社にしないと存在価値がない」(秀郎氏)との思いだ。「売上や利益は、その後に自然についてくるもの」と第一義ではない。

「意味のある会社」の象徴として掲げたのが、「子ども達が笑える未来をつくる」とのミッション。「環境問題が切迫する中、子ども達の未来のために最優先で取り組まなければならないのが環境保全への取り組み。地球環境の保全なくして経済も社会も成り立たない」と、あらゆる課題を包含したテーマとして環境問題を捉える。

では、塗装業としてそこにどう向き合うか。「塗料の機能性、具体的には遮断熱塗料の『ガイナ』で環境保全にアプローチする」と決めた。「ガイナはJAXAなど公的にもエビデンスが実証されている遮断熱塗料。夏場はもちろん、よりエネルギーを使う冬場にも効果が得られる。その機能を十分に引き出す施工ができれば、遮断熱による省エネ効果を間違いなく出せる」とし、ガイナの施工技術を極めた。施工店でありながらガイナの一次取扱店として、また北日本における"ガイナ施工指導長"としてメーカーの日進産業からも公認される存在だ。

石油資源に依存し、火力発電で大量のCO2を排出している現状を少しでも変え、子ども達の笑える未来につなげたい。遮断熱塗装による家庭の省エネ・省電力化への貢献は、「仕事を通じてアプローチできる環境保全への取り組み」と、塗装業だからこその「らしさ」を大切にする。そこに「当社であることの意味が生じる」からだ。

ブランディング戦略は「社会モテ」

主力の住宅塗装でガイナの認知を広めるため、2020年に「ホワイトルーフプロジェクト」と名づけたボランティア活動を始めた。市内の学童保育施設の屋根にガイナを塗装し、室内を快適にする取り組み。古い平屋の建物が多い学童施設は、「遮断熱塗装の効果で子ども達の過ごす環境が快適になり、冷暖房の稼働を抑えて省エネもでき一石二鳥」と施設側にも好評だ。

その延長で今年3月、「ZOOMO(ズーモ)」が愛称の盛岡市動物公園と連携協定を結び、施設の課題を塗装で改善する「ホワイトルーフプロジェクトwith ZOOMO」が始動した。"夏は手すりが熱くて触れない""スロープが滑りやすい"などの課題をガイナの塗装で解決する取り組み。

「学童保育施設と同様、このプロジェクトでも一般の方々のボランティアを募り、一緒に塗装作業を行います。そして無償で施工を提供した分、ZOOMOさんに養護施設の子ども達を動物公園に招待していただくというのが協定の内容」と専務取締役の冴華さん。

「地域のために何かお手伝いがしたいと思っている方々に、塗装というあまり体験できないようなボランティアを提供できますし、養護施設の子ども達にも喜んでもらえる」と笑顔の輪が広がる活動に期待を寄せる。
こうしたハッピーの循環を誘う取り組みは他にもある。同社が始めた「リンクアップウエス」という活動だ。

不要になった衣類などの綿布を地域の人たちに持ち寄ってもらい、福祉事業所に裁断を依頼して障がい者の人たちの仕事を創出。裁断された綿布を工業用ウエスとして販売し、そこで出た利益も世界に役立つ活動などに寄付する。ゴミとして捨てられる資源が、障がい者の人たちの賃金を生み、世界にも役立てられる。不要な衣類を持ち寄った地域の人たちにも喜ばれているハッピーの循環だ。

冴華さんは、「私たちは『社会モテ』と呼んでいるのですが、地域の人たちや社会にいかに共感してもらえる会社になるか、それが当社のブランディング戦略です」と説明。その成果は、「OBのお客様からの依頼や、ご紹介の仕事が6割以上」(秀郎氏)と安定受注のベースを構築、経営基盤を確かなものにしている。

加えて、「社員や従業員の士気につながっている」(秀郎氏)ことに大きな意味を見出している。「自分たちの仕事が、地域のため、誰かのためにつながっていることが見えるので『次はもっとこうしよう』というように、自分事として仕事や会社に向き合ってくれます」(冴華さん)と"社員モテ"する会社にもなり、強みが増した。

子ども達の未来に思いを馳せた会社づくりが、社会、地域、そして社内にも好循環を生み出して成長、「意味のある会社」へと導いている。
(ペイント&コーティングジャーナル建築塗料・塗装2024Ⅰより)



川上秀郎社長(左)と専務の冴華さん
川上秀郎社長(左)と専務の冴華さん
川上塗装工業
川上塗装工業

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