建築・自動車向けにトレンドカラーを発表
カラーフォーキャスト2017

関西ペイントは11月5日、同社東京事業所で「カラーフォーキャスト2017」の発表会を開催した。カラーフォーキャストは建築分野、特にインテリアシーンに向けて同社グループが2年後の流行色を選定して世界的に発信している取り組みで、日本で開催するのは初の試み。国内市場に塗料による色とデザインの魅力を発信し、課題である内装需要創出へのステップにしたい狙いがある。グローバルカラーマネージャーのAnne Roselt氏(写真)が来日し、プレゼンテーションを行った。


カラーフォーキャストとは近い将来の流行色を選定して需要を誘導するためのマーケティング活動で海外の塗料メーカーでは活発。経済、世相、ファッションやインテリアなどあらゆる分野の情報から流行色を予測し、塗料メーカーが独自のカラートレンドを発信、その良否が販売にも影響する。

関西ペイントグループでも毎年、南アフリカのグループ会社KANSAI PLASCONのAnne Roseltカラーマネージャーが企画推進リーダーとなり、主にインテリアを中心とした2年後の流行色を選定。関西ペイントの世界の拠点で発信されている。

発表会の席上で石野博社長は国内で初めて開催することについて触れ「日本でも女性を中心に"自分らしい空間にデザインしたい"という欲求が高まってきており、塗料の内装需要の可能性が萌芽し始めています。KANSAI PLASCONのある南アフリカでも実は20年前までは日本と同じように内装は白系で占められ、色(塗料)を使うことに否定的でした。それをKANSAI PLASCONによる色とデザインの魅力の発信と地道な啓発活動によってインテリアで色を楽しむ文化に変えてきた実績があります。これは塗料メーカー本来の事業であり、国内でも水平展開して塗料の内装需要創出に導きたい。色をトレンド化することで3~4年でカラーチェンジするサイクルが期待でき、内装需要につながります」とし、カラーフォーキャスト発表の意義について述べた。

20年前まで白一辺倒だった南アフリカでは現在、アクセントカラーやサブカラーとして住宅の壁の3割ほどでペイントカラーが用いられているという。その仕掛け人が今回プレゼンターを務めたAnne Roseltカラーマネージャー。「色を使うことに対してかつては保守的でしたが、"使ってみたくなるシーン"を掲載した雑誌(Spaces)の発刊、色を使うことの楽しさを伝えるセミナーやワークショップの開催などさまざまな機会を通じて色を使うことを経験していただき、不安の払拭と同時に楽しさを実感していただき、その積み重ねが需要を作ってきました」とカラーマーケティングの重要性を説明。

ちなみにKANSAI PLASCONは南アフリカで50%のシェアを持つトップメーカー。ペイントデザインの雑誌「Spaces」は年間4回発行され、1回の発行部数は3万5,000部。書店はもちろん日用品店でも販売されているほどのポピュラーな雑誌で、ペイント文化の根付きを感じさせる。

今回発表した「関西ペイントカラーフォーキャスト2017」は「アノニマス(無名、匿名)」「ターレイン(大地の広がり)」「プリズム(透明感、多面体)」「ポーズ(休止)」の4つのトレンドストーリーがそれぞれ8色ずつのカラーパレットで構成されている。色を選定した背景(ストーリー)や使い方(カラーデザイン)のシミュレーションを示した。

そして2017年の関西ペイントのイヤーズカラーとして『In The Mood』と名づけた、大地のイメージを表現するソフトなニュートラルカラーを選定した。「世の中がどんどん騒がしく、せわしなく喧騒の日々を送ることを受け、今年の我々のテーマ色には『Calm=平穏』を軸におきました」と説明。平穏を感じさせるニュートラルカラーを基軸に据えた。南アフリカ、中東、アセアン、日本など同社の拠点のある地域で2017年のカラーとしてグローバルに提案する。

分野横断で色の価値訴求

一方、今回の発表会では自動車向けのカラートレンド「アドバンスカラー2019」の発表を合わせて開催した。同社CD研究所が2019年の自動車塗色向けに開発したトレンドカラーで、独自の調査・コンセプトを基に年間30色ほどを開発しており、その一端を紹介した。

自動車向けのアドバンスカラーは秘匿性が高いため、これまで国内外の自動車メーカーごとに提案を行っていたが「自動車塗色の開発の背景や物語性、技術的なダイナミズムを広く伝えることで塗色そのものが魅力化し、自動車の販売にも好影響になるのではないか」(同社CD研究所部長・前田賢司氏)と判断、30年にわたる塗色開発の中で初めての一般公開に踏み切った。

2019年に向けた消費や嗜好のトレンドを「見た目の美しさやテクノロジーの進化といった端的なものでなく、モノの背景にあるメッセージや本質を探り、考え、発見することが新たにモノを所有する喜びになる」とし、"QUEST=探求"をキーワードに据え、「Elaborate(手間ひまかけた)」「Dual(2面性)」「Native(自国性)」の3つのカテゴリーで塗色を開発したと説明。

日本の自動車の2台に1台、世界では4台に1台の割合で使われているという同社の塗料と塗色。発表ではドアパネルで実際の塗色を掲示、その高度な技術力をビジュアルで示した。

「建築と自動車、分野は違いますが色で価値訴求できるという視点は同じ。色のダイナミズムを市場に伝え、当社全体のブランディングにつなげていきたい」(石野社長)とし、今回のような色彩プレゼンテーションを恒例化したい考えを示した。

関西ペイント カラーフォーキャスト2017の4つのストーリー

「Anonymous(アノニマス)」:押し付けがましさや派手さを控え、意図的に清潔感やミニマルさを強調したクリアーでクリーンなイメージのカラーパレット。

「Terrain(ターレイン):「家庭」や「自分の居場所」といった感覚をイメージする豊かで暖かいトーンを集めたパレット。

「Prism(プリズム)」:数値化されたモザイクによる均一なデザインを表現。複雑な世界を許容することに前向きな姿勢を喚起する。

「Pause(ポーズ)」:バランスとハーモニーによる穏やかな瞑想のイメージで、見た目の美しいカラーグループによって成り立っている。



Anne Roselt氏
Anne Roselt氏

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