ウレタン防水材に本格参入
塗装店、塗料販売店のビジネス拡張に

菊水化学工業は防水材市場に本格参入する。10月1日に発売する新規ウレタン防水材「キクスイ ミッションガード」は、「施主満足と品質、施工性でこれまでの防水材とは一線を画し、一般的な建築塗装店や塗料販売店が防水材市場にビジネス拡大できる戦略商品」(山口均社長=写真)との位置付け。低成長が続く建築塗料・塗装分野の起爆剤とし、自社事業の柱の1つに育てたい考えだ。


都内の会場で「キクスイ ミッションガード」の記者発表会を開催した。

冒頭、山口社長が防水材分野に参入する理由について触れ、「建築用塗料市場は低成長が続き、シェア競争が激化、今後も好転が見込まれない中で新たな市場への参入を検討する必要があった。着目したのは防水材分野。水平展開しやすい隣接分野でありながら、その専門性によって阻まれていた市場に塗料メーカーとしてアプローチできないか、切り口を探った」と説明。

防水材市場は保証とそれに伴う施工品質の担保を要することから防水材メーカー・専門商社・防水専門施工業者によるクローズドな供給体制が構築されており、塗料・塗装企業側が手をこまねいているのが実態。

同社は防水材への市場参入の手がかりとして「施主満足」にポイントを置いた。「施主目線に立ったとき、生活に不便を強いられる工事を『短く』、費用を『安く』、安心できる『品質』で、健康に『害がなく』の4点に集約できる。現状の防水材工事は必ずしもこの4点が満足できているわけではなく、そこに切り口がある」と分析、方針を固めた。

そこに機会が訪れる。特殊防水材メーカーとの接点だ。同防水材メーカーはNEXCOの高速道路の止水用防水材を供給している専門メーカー。高速道路の道路部と橋脚部をつなぐ伸縮性ジョイントの補修工事に使われるウレタン防水材を主力としており、道路開放までの極めて短時間(3~5時間)で工事を終了させる超速乾性と、大型トラックやトレーラー通過に伴う変形ストレスへの強靭性と伸縮性が持ち味。

同防水材メーカーとのコラボでNEXCO仕様のこの防水材を建築用にモディファイ、製品化したのが新たに発売する1液湿気硬化型ウレタン系防水材「キクスイ ミッションガード」だ。

同品の最大の特長は、これまで3~4日以上要していた防水工事期間のワンデイフィニッシュ(1日で完了)を実現した点。『工期を短く』といった施主の要望を満足させる。

ポイントは防水のベース層(中塗り)に採用した先述の1液湿気硬化型ウレタン系樹脂と、反応を飛躍的に高める新開発の硬化触媒技術とのマッチング。それによりベース塗り後4時間程度で上塗りに移行できる超速乾性を実現した。また、防水膜の芯部分まで均一に短時間で反応するため、従来の1液湿気硬化タイプで指摘されていた表面と内部との不均一硬化、塗膜中のミクロボイドによる伸縮性や強靭性の低下といった課題もクリアしたと説明。

施工モデルとして示すのは、下塗りの専用プライマー塗布後1時間でベース(防水層)を施工し、4時間後に上塗りを塗布するタイムスケジュール(23℃)。ベランダなどの防水工事であればワンデイフィニッシュが十分可能だ。JIS A 6021の防水規格合格、高レベリング性、高耐候性トップコートなどの「安心品質」と、特定化学物質非配合、TXフリーなど「健康安全性」でも施主の要求を満たした。

塗料販売業界の活性化材料に

「キクスイ ミッションガード」の製品化に当たり、同社がこだわったもう1つのコンセプトは「塗料の施工店(塗装業者)が防水工事に進出できること」(山口社長)。それにより塗装業者と、そこに材料を供給する塗料販売店がともに防水分野にビジネス拡張できるとの思惑がある。

特に近年、防水専門商社による塗料の扱い比率が高まり、厳しい価格競争を強いられている塗料販売業界に塗料から防水へという逆パターンのビジネスモデルを提供。「閉塞感の打破と塗料販売業界の活性化に寄与したい」考え。

同品は、「NEXCO品質の伸縮性と塗膜の強靭性を誇るため、従来のウレタン防水で多用されていた補強用メッシュの挟みこみ工程が不要で、防水専門工事業者でなくても施工できる」のが施工上の大きな特徴。ローラーやヘラ、コテといった汎用的な塗装器具で施工でき、「塗装施工店がスムーズに防水工事を取り込める」と説明する。

例えば、塗装業者が請けた戸建てやアパートなどの外装改修工事で、これまで防水業者に外注していたベランダ防水工事の内製化が可能で、利益率が大幅に向上。また、塗装と防水の業者間の工程調整による時間のムダや下・中・上塗りの工程ごとのインターバルで多日数を要していた防水工事をワンデイフィニッシュで実現。「工事から得られる利益率を高めながら、時間と費用の両面で施主満足の高い工事を提供できる」と市場性を強調。塗料・塗装業界企業への有用性を説明する。

同品は10月1日に発売。同社のシンパ塗料販売店「くすのき会」の社店で先行販売し、市場認知後に一般塗料販売店での販売を開始する。発売5年後に年間30億円、10年後を目処に同50億円の売上を目指し、柱の1つに育てたい考えだ。

なお、同品の製品構成は防水層の「ミッションガードベース」「同専用硬化促進剤」及び立ち上がり面などへの「同増粘剤」、下塗材の「同プライマー」及び「同プライマー(環境対応型)」「同トップコート(環境対応型/高耐候性)」。



山口均社長
山口均社長
ウレタン防水材「キクスイ ミッションガード」
ウレタン防水材「キクスイ ミッションガード」

HOMENew Trendウレタン防水材に本格参入

ページの先頭へもどる