大阪府立今宮工科高校と産学連携
課題解決学習にペイントの出番

日本ペイントは3月31日、大阪府立今宮工科高等学校(大阪市西成区、校長・駒井知一氏)と産学連携協定を締結し、今年4月から同校生徒に対し連携授業を行う。既に昨年からプレ活動として、今年3月に卒業した生徒とともに同校のシンボルカラーである"今工ブルー"の創色や食堂リニューアルを実施。教育の現場で塗料・塗装がどのような貢献ができるのか、今後の展開が期待される。


今回の産学連携は、高校側から同社に問い合わせが寄せられたことで実現したもの。現在、同校は大阪府より能動的な学習機会を提供する「課題解決学習(PBL)」の導入モデル校に指定されており、専科の1つである同校グラフィック系がデザイン分野から関心あるテーマを模索する中、外部企画チームとして同社に白羽の矢が立った。

同社販売本部マーケティング部長の八巻雄二氏は「昨年の5月頃、高校の先生から当社に打診がありました。塗料のパイオニアメーカーであることに目を留めてくれたようです。これまで同社もアーティストとのコラボなどを通じ、さまざまな形でペイントの普及啓蒙に努めていましたが、小さなお子さんを持つ親子を対象にしたイベントが多く、高校生と接点を持てるのは貴重な機会と考えました」と説明。更に「SDGsの4番目に"質の高い教育をみんなに"との目標が掲げられており、ESG経営を推し進める当社グループの理念とも合致します」と連携を決断した。

以来、一気に協力関係が進展。本格的な連携開始は、今年4月からとしつつも、プレ活動として昨年の9月から12月にかけて計4回の授業を実施。生徒15名と同校のシンボルカラーである"今工ブルー"の創色と食堂の塗り替えリニューアルを卒業制作とするプロジェクトをスタートした。

限られた時間の中、生徒たちは塗装体験会や同社近畿支店・色彩グループによる色彩計画講義の受講、調色工場を視察。続いて、塗料原色を使った調色作業に取り組み、色データがない中で"今工ブルー"の再現に挑戦した。その後、最終決定した色を基に同社が塗料色として完成させた。

12月16日から10日間にわたって実施した食堂リニューアルでは、"今工ブルー"を軸に茶系色、赤系色を組み合わせた配色を採用。壁面に大きく描かれたイラストは、生徒たちのアイデアによるものだ。

「色の見え方や配色については、事前に講義しましたが、最終的な配色やイラストは生徒さんのアイデアによるものです」とコメント。「色の選び方や塗り方など固定観念のない生徒たちの自由な発想に気づかされることも多かった」(同部池田氏)と話す。

施工を終えた生徒たちからは、「しんどかった」「疲れた」と率直な感想も。それでも卒業を控えた3月には生徒から同社に対し、感謝を伝える手紙が届いたという。

いよいよ今年4月から、月1回の頻度で1年かけて連携授業を行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響であえなく中断。現時点で再開の見通しは立っていないが、生徒たちには、パッケージデザインやカタログデザイン、WEB動画を成果物とするプロジェクトを提案する予定にしている。

ただ、こうした成果物もあくまでもたたき台としての位置づけ。企画からプロジェクト実行のすべてが生徒たちに委ねられているのもPBL学習の特徴となっている。

近年、ボランティアやイベントを通じて塗料・塗装を啓蒙する機会が多く持たれているが、学習効果が求められる教育のフィールドに関与できる機会は稀。塗料・塗装が連携授業を通じ、生徒たちの感性や自主性をどのように引き出していくか興味深いところ。産業活性化との相乗効果も期待される。



調色に挑戦
調色に挑戦
“今工ブルー”を基調に塗り替え
“今工ブルー”を基調に塗り替え
生徒たちを囲んで記念写真
生徒たちを囲んで記念写真
産学連携イメージ
産学連携イメージ
大阪府立今宮工科高等学校
大阪府立今宮工科高等学校

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