塗料メーカー初、新型コロナの不活化を実証
抗ウイルスビジネス一気にスパート

関西ペイントは、同社が特許を持つ漆喰塗料が新型コロナウイルスをわずか5分で99.9%以上不活化することが判明したと発表した。長崎大学感染症共同研究拠点・安田二朗教授との共同実証試験で確認した。塗料メーカーで実際の新型コロナウイルスで効果を実証したのは初。今回の結果を踏まえ、漆喰塗料「アレスシックイ」を基点にさまざまな抗ウイルス商材を投入し、安全・安心による社会貢献とアレスシックイ関連ビジネスの拡大を図る。


10月5日、関西ペイントの毛利訓士社長(写真左)と長崎大学の教授で新興感染症に関する世界的な権威・安田二朗教授(同右)が出席して行われた記者説明会で発表した。

漆喰塗料「アレスシックイ」の原料の消石灰は、強アルカリよってウイルスを不活化させる効果がある。同社は2016年、同じく安田二朗教授と共同でアレスシックイの抗ウイルス効果の実証試験を実施。インフルエンザ、SARS、MERS、ノロ、ジカ、HIVなど多くのウイルスに類似する代表的な4種類のウイルスの不活化性能を確認していた。

今回、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染拡大を受け、同ウイルスそのものでの実証実験を9月に実施。    

安田教授によると、プラークアッセイ法という試験方法で漆喰塗料の新型コロナウイルスへの不活化性能を検証。その結果、塗膜に新型コロナウイルスが接触するとわずか5分で99.977%のウイルスが不活化することが確認されたと報告。極めて短時間かつ高い効果とし、「漆喰塗料の潜在能力の高さを感じました。さまざまなものに塗布できるため幅広い用途展開ができ、衛生環境の向上に期待が持てます」とコメント、有効性を示した。

今回、同社が実際の新型コロナウイルスで実証試験が行えたのは、前回(2016年)の結果を踏まえ安田教授が新型コロナウイルスでも良好な効果が確認できると考えていたこと、実際の検体を入手でき、その実証試験を行える高度な施設を有していたことなどから実現した。新型コロナウイルスへの効果を表示する商材のほとんどが類似のウイルスでの検証なのに対し、実際の新型コロナウイルスによる高い抗ウイルス性能を実証、アレスシックイの説得力が一段と高まった。

抗ウイルスビジネス、年間30億円へ

今回の実証結果を踏まえ、関西ペイントの毛利訓士社長は、「塗料で培ってきた技術で社会貢献する社是のもと、ウィズコロナ、ウィズウイルスの時代に、抗ウイルスビジネスを拡大させていく」と述べ、幅広い分野に展開領域を広げる方針を示した。

同社は2016年に漆喰塗料の超弾性化技術を確立し、弾性タイプの「アレスシックイモンティアート」を開発。紙や繊維、フィルムなどへのコーティングが可能になったことで、さまざまなシーンに漆喰の抗ウイルス効果を提供できるようになった。

具体的には今年大ヒットした「接触感染対策テープ」及び「同シート」がある。不織布にアレスシックイモンティアートをコーティングしたテープ及びシート状の商材で、任意の長さにカットしてドアノブや手すりなど人の手がよく触れる箇所に貼って使用、接触感染リスクを抑える効果がある。「貼っておくだけなのでアルコール消毒のような頻繁な作業が必要なく、感染対策をしていることが目に見えるので安心感も高まる」(担当者)とセールスポイントを説明。病院、老健施設、学校、飲食店、ホテル、旅館、オフィス、工場などから一般家庭まで幅広いシーンで利用が広がった。

同社はシート、テープに続き、アレスシックイモンティアートを応用した抗ウイルス商材を順次投入していく。 

11月には病院や各種施設の玄関向けに「抗ウイルス・抗菌マット」を発売予定で、外部や靴裏からのウイルスの持ち込み対策として展開する。また計画中のものとして、段ボール製の防災用簡易ベッドや簡易トイレにも応用、災害時の避難所などでの感染対策を想定する。一般向けの商材として漆喰塗料をコーティングしたマスクケースやマウスカバー、フェイスシールドなど続々と商品化の計画が持ち上がっている。

同社汎用塗料本部の中野佳成本部長によると2019年度まで年間2億円ほどだったアレスシックイ関連の売上は、「2021年度には年間30億円のビジネスを狙える」と急成長を予測。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、「今年4月以降、アレスシックイ自体の売上が倍増している」(同)ことに加え、「接触感染対策テープ」「同シート」のヒットで建築塗装以外の幅広い領域に販路が拡大、「当社の予想を大きく超える売上を記録」していることが成長予測の根拠となっている。

3月末に発売した「接触感染対策シート」は4月以降、月間20万セットの販売を継続。新型コロナの発生で完売し、その後も市場からの強い引き合いが寄せられ生産を急いでいた「接触感染対策テープ」の販売も満を持して再開した。特に「同テープ」は、「廊下や階段の手すりに全面的に使いたい」といった病院や学校、企業などからの要請を受け、130mの超長尺タイプ(定価7万8,000円)も用意。大口需要への期待を高める。 

更に、業界企業の動きも活発化している。領域拡大に有効としてアレスシックイ関連商材の扱いを増やしている塗料販売店、建物の内装への提案強化やEPからアレスシックイへの仕様変更で施工の付加価値化を図っている塗装店など、アレスシックイのヒットに乗じたさまざまな動きが出てきている。
 実際の新型コロナウイルスで高い不活化効果が実証された今回の発表でこうした動きも加速、抗ウイルスビジネス拡大へ向けてスパートをかける。



毛利訓士社長(写真左)と安田二朗教授(同右)
毛利訓士社長(写真左)と安田二朗教授(同右)
接触感染対策テープ
接触感染対策テープ

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