SDGsへ業界企業のバイブル公開
「世界の塗料業界におけるサステナビリティ」

2030年までに、持続可能でより良い世界を目指す国際目標の「SDGs」。その達成へ向け、塗料関連企業のガイドラインとなるレポートが公開された。世界16カ国の塗料メーカーの団体で構成する「世界コーティング協議会(WCC)」がまとめた報告書「世界の塗料業界におけるサステナビリティ」を、日本塗料工業会が翻訳、ホームページ上で公開した。「SDGsへ向けた自社の活動の確認や取り組みの参考にしていただければ」(日塗工事務局)と、業界企業に広く呼び掛けている。


2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs。世界中にある環境問題、貧困、差別、人権問題を2030年までに解決し、持続可能でより良い世界を目指す国際目標だ。

そこへ向けて企業や団体、個人レベルでもさまざまな活動が続けられている一方で、最近では"SDGs"という言葉だけの独り歩きやマンネリ化などの気配も漂いつつある。

そうした中、「(SDGsの目標年の)2030年までの折り返しを過ぎたこのタイミングでWCCのレポートが示されたことは、業界にとって意義が大きい」(日塗工事務局)と、報告書「世界の塗料業界におけるサステナビリティ」を紹介する。

日本塗料工業会も加盟するWCC(World Coatings Council)は、アメリカ、中国、ドイツ、オーストラリア、ブラジル、南アフリカなど世界16カ国の塗料工業会で構成。塗料業界のためのフォーラムを開催し、国際的な課題を解決するための場を提供してきた。

中でも「環境」「安全」「健康」問題に関しては、塗料業界の特性を考慮した自主管理活動の「コーティング・ケア」を1996年に世界の塗料業界に提唱。それを受け、日塗工も'98年に日本版の「コーティング・ケア」を創設。製品の開発から製造、物流、使用、廃棄に至るまでのすべてのプロセスにおいて、「安全」「健康」を確保し、「環境」を保全する自主管理活動が、加盟の塗料メーカーで始まった(現在、コーティング・ケア宣言会社は51社)。

今回、WCCがまとめ、日塗工がホームページ上で公開した報告書「世界の塗料業界におけるサステナビリティ」は、塗料の業界企業におけるSDGs推進のためのガイドラインとも呼べるものだ。環境、健康、安全にスコープしたコーティング・ケアの観点に加え、世界の潮流でもある「サステナビリティ=持続可能性」へのアプローチが色濃く反映された。

同報告書は、WCC会員の16の塗料工業会、世界16カ国の塗料メーカー60社にSDGs実施状況を調査し、その結果から具体的な活動内容と成功事例をガイドラインとして取りまとめた。日本からは、SDGsへの取り組みが活発な企業として日本ペイント、関西ペイント、中国塗料、大日本塗料、水谷ペイントへのヒアリングが行われた。

ガイドラインの策定に当たりWCCでは、SDGsの17のゴールのうち、塗料業界が強い影響力を持ち、塗料企業が貢献できる9つのSDGsを特定、各企業の活動の目的をより明確化した。

具体的にはSDGs3の「すべての人に健康と福祉を」、同4「質の高い教育をみんなに」、同6「安全な水とトイレを世界中に」、同8「働きがいも経済成長も」、同9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、同11「住み続けられるまちづくりを」、同12「つくる責任つかう責任」、同13「気候変動に具体的な対策を」、同14「海の豊かさを守ろう」の9つで、それぞれにおける業界特有の課題を解説し、世界中の塗料メーカーがSDGsの達成にどのように取り組んでいるかを例示した。

「既にSDGsの活動を行っている企業は、自社がやっていることの正当性を確認することができるし、次に取り組むことのヒントも見つかる。また、これからSDGsを始める企業にとっては、まずは自社の活動の何がSDGsに紐づけられるのかが確認でき、スタートの後押しにもなる。塗料メーカーはもちろん、塗料販売、塗装ユーザーにとっても参考にしていただける部分が多い」(日塗工事務局)とし、SDGs推進へ向けた塗料業界のバイブルとしての役割を期待する。



世界の塗料業界におけるサステナビリティ
世界の塗料業界におけるサステナビリティ

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