アウトガスの問題に正面から切り込む

鋼構造物など社会インフラの維持・保全に重要な役割を果たしている重防食塗料。腐食の激しい海岸部、深い山間、熱帯や極寒地など厳しい気象環境下で社会や人の暮らしを支えているインフラ構造物を黙々と守っている。


その重防食塗料に専門特化した塗料メーカーがジャパンカーボライン(本社・東京都江東区)だ。大手総合塗料メーカーの占有率が高い防食塗料市場にあって、製品力、技術力、市場対応力など企業規模を超えた存在感を放っている。

同社は重防食塗料の世界的なトップメーカー・米国カーボライン社を親会社に持つ。「カーボライン社は、他にない製品をいち早く開発し世に出していく姿勢の会社」(ジャパンカーボライン・猿渡晋吾社長)と説明。まだ市場にはなく、しかもその製品パフォーマンスによって重防食塗料としての新たなカテゴリーを創出、市場をリードしていく。

例えば、重防食で下塗りの標準品・無機ジンクリッチペイントはカーボライン社の発明品。また、同じく下塗りとして定番の浸透性エポキシアルミニウム塗料、更にはケレンが困難な箇所の除錆を補う素地調整塗料が国内でも多数出回ってきたが、それもカーボライン社の「ラストボンド」がベンチマークとなり、ひとつのカテゴリーを築いてきた。

優れた製品パフォーマンスと独自性というDNAはもちろんジャパンカーボラインにも受け継がれている。そんな同社が現在着目しているのが"臭い"への対策だ。独自開発により、ほぼ無臭の鉄部塗装システムを新たに構築。臭いにナーバスな需要環境に向けて明確な効果を打ち出し、需要創出を狙う方向だ。

その尖兵が"限りなく無臭に近い塗料"をコンセプトに開発した無溶剤形超低臭塗料「ノンソルシステム」。エポキシ系下塗りの「カーボガードノンソル」とウレタン系上塗りの「カーボタンノンソルトップ」でシステムを組む。

VOC含有量はゼロ、ニオイセンサによる測定値は水系塗料の半分以下という無溶剤かつ超低臭が最大のセールスポイント。食品関連を始め学校、病院、地下駐車場など臭気がこもることを嫌う需要先に向けて展開を図る。

中でも最も強く反応しているのが食品関連工場のメンテナンス需要だ。食品工場では製造中の食品に臭気が移るとすべて廃棄処分となるため、臭気管理専門の担当者がいるほど神経を使っている。工場内のメンテナンスで塗装をする際には休業日に行う必要があり、効率が悪くコストアップにつながっていた。

ノンソルシステムは既に大手食品や飲料メーカーの工場でテスト施工を実施しており、「稼働中のラインの付近で塗装メンテナンスをしていても移臭の心配がないと驚かれている。休業日に縛られていたそれまでに比べて工期短縮とコスト削減メリットが明確」とし、テスト施工からストレートに実需につながる製品として自信を深めている。

また、近年規制強化の方向にある労働安全衛生の観点でも「作業者の健康・安全への配慮は企業の重要課題となっており、VOCゼロの製品特性が更に説得力を持つ」との見方を示す。

臭いやVOCの放散、いわゆるアウトガスを生じさせない技術は元々、半導体工場のクリーンルームの塗装用途で開発要請が寄せられ、研究を進めていたもの。「水性塗料であっても到底クリアできない超クリーンルームのアウトガス抑制の要望に対して樹脂や添加剤、各種原料の種類、組み合わせ、バランスなどを精緻にコントロールして要望に応えた。そのアウトガス抑制技術を当社の得意分野である鉄部塗装分野に横展開した」と経緯を説明する。

"臭い"というニッチな切り口ではあるものの、突き抜けたパフォーマンスで潜在ニーズをあぶり出し、付加価値性の高い需要を作り出す方向だ。

主な実績
○北陸新幹線 飯山駅 3万5,000㎡
○北陸新幹線 上越駅 4万㎡
○九州新幹線 熊本総合車両基地 12万㎡
○九州新幹線 熊本駅 2万5,000㎡
○九州新幹線 新玉名駅 1万2,000㎡
○九州新幹線 船小屋駅 1万2,000㎡
○九州新幹線 久留米駅 1万2,000㎡
○博多駅大屋根 8,000㎡
○関西空港 2期南側貨物地区上屋新築工事 内部6万6,000㎡
○関西空港 2期南側貨物地区上屋新築工事 亜鉛メッキ部 1万9,000㎡
○東京国際フォーラム ガラス棟 8万㎡
○東京国際フォーラム ホール棟 4万㎡
○等々力陸上競技場 6,000㎡
○札幌ドーム 16万㎡
○埼玉スタジアム 6万㎡
○大分スタジアム 10万㎡
○東京スタジアム 4万㎡
○豊田スタジアム 3万㎡

ジャパンカーボラインのWEBリンク


プロフィール

企業プロフィール 1971年4月、米国カーボライン社と神東塗料、住友商事の3社均等出資により設立した。2007年に住友商事所有の株式を自社株として取得・消却。神東塗料の連結子会社となる。カーボライン社(米国ミズーリ州セントルイス)は、重防食塗料における世界標準ともいえる無機ジンクリッチペイントをはじめ、厚膜形エポキシアルミニウム塗料など、他に先駆けて数多くの重防食塗料を開発してきた。これまで世界各地の原子力発電所をはじめ、化学、石油、上下水処理、製紙などのプラント類、橋梁、交通、鉄塔などの大型構造物、船舶、石油掘削リグ、海上プラットホームなど海洋開発プラントの重防食分野に多くの実績がある。


アウトガスの問題に正面から切り込む
アウトガスの問題に正面から切り込む

ページの先頭へもどる