給与業務の自動化を実現 働き方の多様化に応える

官公庁及び民間工事を手掛ける協榮リノベイション(本社・大阪市東住吉区、社長・澤田浩一氏)は、給与業務の自動化システムを構築し、3月から本格運用を開始した。日給月給、月給、パートと社員の雇用形態が多岐にわたる中、働き方改革に伴う制度導入により、給与業務の負荷が増大。「多様な働き方に対応していくためには、社内の基盤強化なくしてできない」(澤田氏)と安定雇用と業務DXを両輪の関係に位置づけている。


同社の創業は1960年。建築塗装を中心に実績を重ね、平成6年に2代目となる澤田氏が社長に就任してからは元請け型に全面シフト。以来、改修工事、大型インフラ修繕、塗装工事を3本柱とする総合改修工事会社として業容を広げ続けている。

現在、従業員数は25名。「売上、人員とも10年前と比べて倍以上に増えた」(澤田氏)と積極的な人材採用が成長を牽引。「元請けとして受注力(入札力)を高めるためには、多種多様な工事に対応するためのノウハウが必要だった」と新卒、中途を問わない人材投資で活力を高めた。

ただ、その過程は試行錯誤の連続だったという。

同社が人材採用を積極化した10年以上前から既に採用は困難を極め、元請受注の要となる施工管理技士(建築・土木)は、引く手あまたの状況で待遇競争が激化。高卒、専門校卒を対象とした若手職人の採用についても「本人の意向と関係なく親御さんから入社を断られたケースもあった」と建設業に対するネガティブなイメージを痛感。人材採用と安定雇用に対する危機感を強めていった。

そこで同社は、就職説明会や人材紹介会社など採用ルートの拡充に努める一方、安定雇用を目的とした労務改革と待遇改善に着手。合格までの費用をサポートする資格取得支援を継続する他、数年前から残業軽減、有休取得推進策として配置人員増やテレワーク制度を導入した。

加えて、現場の職人にも月給制、作業環境手当、雨手当を導入するなど、「会社の業種、規模を問わず、いろいろな働き方に対応できなければ、人材が得られなくなる」と法令にいち早く対応した労務制度を積極導入し、雇用の安定化につなげていった。

市販ソフト活用、コストを最小限に

しかし、雇用形態に柔軟性を加えれば加えるほど、高まっていったのが給与業務の負荷。

「職種によって就労形態や給与体系が異なる上、技能者も月給制と日給月給制の両方が存在するため、毎月の給与計算は膨大な作業量になる」と説明。更に残業時間や休日出勤の割増計算が加わり、給与支給を月末締めの翌月10日払いとしながら、残業代や立替金については、業務処理の期間を設けるために翌々月に支払う2段階方式を取らざるを得なかったという。

給与業務の担当社員が1人のみという人員の少なさも影響しているが、中小零細ゆえに簡単に増員できない現実がある。そこで浮上したのが、出退勤記録から給与計算、給与振込を自動で行う給与業務システムのDX化。「10年前から構想にあったが、社内体制としても技術的にも導入可能と判断した」とシステム導入を決断した。結果的には、昨年9月にプロジェクトを開始し、今年3月に本運用開始とわずか7カ月で導入を実現した。

基本のシステム構成は、自社で長年活用しているグループウェアに新たに勤怠管理ソフトを導入し、給与計算システムとのデータ連携、最後は全銀ファイルと連動した自動振込を可能にするというもの。システム導入に関して、取引銀行に信頼性や互換性の観点からソフトウェア選定についてアドバイスを要請。一方、システム運用の前提条件に不可欠な就業規則や給与制度については、社会労務士と徹底的に見直した上で、システムに盛り込んだ。開発費用は、市販ソフトを利用したことでゼロ。ランニングコストも社員1人あたり数百円/月と最小限に抑えた。

ただ今回のシステム導入において、最も重要だったのが、社内ルールの整備と徹底。自動処理のプログラムが働くため、1つの入力ミスが給与計算を狂わせるからだ。

そこで給与計算の前提となる勤怠管理については、内勤、現場従事者も含め毎日勤務状況を申請し、上長、社長が決済するルールを取り入れた。社員には新たな作業が追加する形となったが、元々グループウェアを活用していたこともあり、大きな混乱はなかった様子。むしろ個別のアカウントを通じ、出勤記録、残業履歴、有休の残日数の確認、有給申請もオンラインで行うことができ、「自分の勤務状況が一目で分かるため、おのずと働き方も変わっていくだろう」(澤田氏)と副次的な効果を期待する。

今回のシステム導入を実務面で支えたのは、同社総務部総務グループの西久美子さん(写真)。入社2年の転職組ながら経理畑で培った前職での経験を生かし、積極的にアイデアを提案。システム導入の実現に対し、「新しいことに対しても社内の理解が早く、チームワークの良さが導入に結びついたと思います」と話す。

「業務が自動化され、仕事がなくなる不安はないか」との質問に対し、西さんは「事務処理は軽減されますが、入力ミスや入力忘れを指摘する仕事が増えると思います」と笑って答える。DX化に伴い、人的サポートの重要性が増していくと見ている。

今後も各業務のDX化を積極化する方針。会計システムのクラウド化及びOCR機能を活用した精算システムの自動化開発に着手しており、現場作業者もオンライン申請、承認ができるシステム構築を目指している。



澤田浩一社長
澤田浩一社長
総務グループ・西久美子さん
総務グループ・西久美子さん

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