塗装店の新たな挑戦、「健康市場」に参入

住宅塗装で成功した塗装会社が新たなビジネスに乗り出す。「健康市場」への参入だ。幸和(本社・東京都多摩市、角田和幸社長=写真)が製造販売を始めた内装塗料「キュアウォール」は、「老化や万病の元とも言われる活性酸素を抑える初の抗酸化塗料」(角田氏)として展開、健康を求める幅広い市場に打って出る。塗装事業の枠を超えた挑戦が始まった。


同社が今年から販売を始めた抗酸化塗料「キュアウォール」は、室内の壁に塗装して抗酸化空間をつくる水性の内装用塗料。同品が施工された空間に身を置くことで、「人の身体を錆びつかせる"酸化"を防ぎ、健康を増進する"還元"作用がある」(角田和幸社長)のが最大の特長だ。

人は1日に約20kgの酸素を呼吸で取り入れ、そのうち約2%が活性酸素に変わると言われる。体内で発生した活性酸素は病気の原因菌やウイルスを攻撃する反面、活性酸素が増えすぎると健康な細胞まで攻撃して身体の酸化が促進、老化や万病の元になるとも言われている。

特に、「建材や衣料、食品など化学物質に囲まれた現代の生活は、化学物質などの酸化物を過剰に摂取する環境にあり、それをいかに還元(抗酸化)させるかが重要になっている」(角田社長)と説明。室内を抗酸化空間に変え、現代の生活環境の問題解決に資する内装塗料として「キュアウォール」を展開する。

大日精化が製造に名乗り

幸和は、東京・多摩市と神奈川・横浜市に拠点を構え、戸建て住宅の塗り替え事業を100%自社元請けで展開。月間20棟ほどをコンスタントに受注し、「創業以来10年間、増収増益を続けてきた」(角田氏)塗装会社だ。ただ、「(住宅塗装の)市場自体は成熟しており、大きな伸びが期待できる市場でもない」と冷静にも見ており、次なる成長の柱を探していた。

そんなときに出会ったのが酸化還元素材の「万世(ばんせい)」だ。同品のサプライヤー・万世マーケティングジャパン(横浜市)から「万世を使って抗酸化塗料をつくれないか」との話が持ちかけられ、開発がスタートした。

「万世」は、植物など自然素材のみを使って開発された酸化還元素材で、化粧品や医療器具、繊維などさまざまな分野で応用製品の開発が進められている注目素材だ。

そして今回、塗料での応用に当たっては、東証プライム市場上場の顔料メーカー・大日精化工業が共同開発に加わった。「開発に当たっては、『万世』の酸化還元機能を最大限に発現するよう、樹脂や顔料の厳選などゼロベースから塗料設計を行っていただいた」(角田氏)と、塗料や機能性材料に精通した大日精化のノウハウが生かされた。

昨年末に開発を終え、今年から幸和が製造販売元となって市場展開に乗り出した室内用の抗酸化塗料「キュアウォール」。「抗酸化といった目に見えない機能を可視化できた」(角田氏)ことをセールスポイントに挙げる。

同社はキュアウォールの人体への効果を実証するため、発売前に第三者機関による酸化還元検証を行った。これは、キュアウォールを施工した部屋に人が入った場合、どれだけ抗酸化力が高まるかを見るための実験で、被験者全員に明確な効果が現れ、同品の機能が実証された。「厚労省認可の医療機器によって酸化還元効果が立証された業界初の抗酸化塗料」(同)とし、健康空間を望む幅広い市場にアプローチする。

抗酸化ルームでマーケティング

「キュアウォール」の展開に当たって同社がまず注力するのは、自社(メーカー)による責任施工。商品認知を広めるベースとしての施工実績や実例となる物件を増やす。クリニックや老健施設、スポーツジムなど抗酸化空間に関心の高い物件に加え、「マンションのリノベーションやホテルの改修でも引き合いがきている」と、抗酸化機能への反響に手応えを示す。

また、PBやOEM供給でも話を進めている。建物を提供するディベロッパーや、広域展開するリフォーム事業者などへのPB、OEM供給を検討。「特に、住宅の塗り替えを広く展開している企業さんは、室内の健康空間の提供をメニュー化することで塗装事業とのシナジーが生まれる」とし、塗装・リフォーム事業者への案内を始めた。

そして、その先に見据えるのが施工代理店制度による全国展開だ。塗装店、リフォーム店、工務店などによる施工代理店を全国的に組織し、「キュアウォール」の施工サービスを提供する。 

「市場展開の順序としては、まず当社の責任施工で実物件での実績と評判を築き、市場での認知を高めていく。シンボリックな建物や名の通った企業物件などでの実績を築き、市場へのインパクトを築いていきたい。健康経営やSDGsを掲げる企業が増えている中、職場環境やお客様を迎える空間を抗酸化空間に変えていきましょうとのアプローチは説得力を持つはず」とし、施工案件の受注へ向けた動きを強めている。インパクトのある施工実績を築き、市場での認知度を高める狙いだ。

その一方で、全国的なショールーム展開も視野に入れる。酸化還元検証で行ったような抗酸化ルームを各所に設置する構想だ。「キュアウォールを施工した部屋に入って効果を実感していただくのが最も説得力のあるマーケティング。そこを活用していただくことで施工代理店さんの受注率アップにもつながる」とし、ショールームを広げていく意向だ。既に拠点を構えている多摩市と横浜市の他、今月には新宿・リビングセンターOZONE内にも出店、ショールーム構想を加速させる。

「"健康"という普遍的な欲求へのビジネスは必ずチャンスが眠っている。ぜひ成功に導いていきたい」とアグレッシブだ。



角田和幸社長
角田和幸社長

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