国内初の低炭素塗料・塗材発売へ

菊水化学工業は、新たな環境技術を用いた国内初の塗料及び塗材を発売する。低炭素対応型塗料「水系ファインコートフッ素BMBシリーズ」と、ジオポリマー塗材「ジオアースシリーズ」がそれで、いずれも塗料・塗材からのCO2排出を減らす先進技術を、国内で初めて適用した。「環境共生社会の中で、"低炭素な建物づくり"への気運が高まっており、そこに大きく貢献する塗料・塗材として市場を拓いていきたい」(中原章義常務)意向だ。


5月16日に開いた製品説明会では、先進の低炭素化技術を用いた「水系ファインコートフッ素BMBシリーズ」と「ジオアースシリーズ」に加え、万能プライマーの新製品「水系バンノウプライマーエポ」も併せて発表。いずれも6月1日に上市する。

新製品のうち、「水系ファインコートフッ素BMBシリーズ」は、バイオマスバランス・アプローチ(BMB)という手法を用いて、1缶当たりのCO2排出量を削減した塗料だ。

BMBとは、食品廃棄油など再生可能な植物由来のバイオマス原料と石油系化石原料を混合してCO2排出削減にアプローチする技術。今回同社は、上塗塗料の「水系ファインコートフッ素」の主原料にBMBアプローチによるエマルションを採用。低炭素対応型塗料「水系ファインコートフッ素BMBシリーズ」としてラインアップした。

最大の特徴は、塗料からのCO2の排出量削減を可視化できる点だ。ヨーロッパの認証機関により、BMB応用製品のCO2排出削減の割り当て量が算出されており、同品に採用されたBMBエマルションでは塗料1缶当たり10kg前後のCO2が削減されると認定。倉庫1棟(約2,000㎡)を同品で塗装すると、通常の水系フッ素塗料に比べて400kgのCO2が削減されるという。「CO2の削減量を適切に算出でき、建物の設計プロセスに具体的に落とし込める」(担当者)と説明。建設における低炭素設計に向けた優位性を強調する。

既存製品の「水系ファインコートフッ素」との併売で、「同BMBシリーズ」を展開する。「耐候性などの性能面や作業性に関しては従来品と全く同等。原材料コストは多少アップするものの、販売価格は据え置く」と、環境貢献度の高い製品の拡販姿勢を示す。

品揃えは、「水系ファインコートフッ素BMB」及び「同中塗り」、遮熱グレードの「同遮熱BMB」及び「同遮熱BMB中塗り」に加え、従来品にはなかった屋根用もラインアップ。「水系ファインコートフッ素屋根用BMB」及び「同遮熱屋根用BMB」として展開する。

一方、別の低炭素化技術を用いた建築用塗材「ジオアースシリーズ」は、CO2削減への貢献で注目されている新素材"ジオポリマー"を、建築用塗材の結合材として初めて採用した。

ジオポリマーは、産業副産物のフライアッシュや高炉スラグなどとアルカリシリカ溶液を混合して生成する硬化体で、セメントの代替品として注目されている。国内のCO2排出量の約5%がセメントの製造時に発生するとされており、その代替としてのジオポリマーに市場は期待。鉄道の枕木など工業製品として実用化が進められている。

菊水化学はこのジオポリマーの内製化に成功し、従来のセメント系結合材に代わる素材として建築用塗材に適用、CO2の大幅な削減を達成した。製品は「ジオアースシリーズ」としてラインアップし、下地調整塗材の「ジオアース100」、さざ波塗材の「同200」及び平滑塗材の「同300」を揃えた。

特長的には、ポーラスな性状による調湿、消臭、透湿性に加え、アルカリ性による抗菌や抗ウイルス性、更に「ジオポリマーはセメントに比べてカルシウム分が少ないため耐酸性が強く、エフロが少ない」などのセールスポイントも強調。「ジオポリマー塗材という、世の中にまだない新たなジャンルの確立に挑む」と意気込みを語った。

同社は今年3月に東京ビッグサイトで開催された「建築・建材展」に出展、これら2製品をパネル展示し、建築用塗料・塗材からの新たな環境技術を訴求した。「この2製品に関しては、デベロッパーや設計など建物の発注側からの関心が非常に高かった」と説明。建設におけるCO2削減仕様への期待から、SDGsやESGを掲げるような大手企業ほど両品への関心が高いとし、これら建設市場の川上への営業活動を積極化、両品の普及を図る。

「建築用塗材メーカーとして培ってきた水系・無機の環境技術から更に一歩踏み込み、低炭素化を具体的に提案できる塗料と塗材に仕上がった」とし、経営方針に掲げる「環境共生時代にふさわしいものづくり」を推し進める。

なお、低炭素型塗料・塗材の両品と併せて、今回、2液水系エポキシ樹脂系下塗材の「水系バンノウプライマーエポ」も同時に発売。万能プライマーの水系化を図り、環境貢献度を高めた。「コンクリート、モルタル、各種金属や樹脂素材、光触媒サイディングなど難密着素材はもちろん、磁器タイルからガラスまで適用下地が幅広く、密着性も強い」とし、先行他社品が居並ぶ中で「水系万能プライマーのスタンダード品を狙う」と自信を示す。



水系ファインコートフッ素BMBシリーズ
水系ファインコートフッ素BMBシリーズ

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