コンクリート造形+塗装、次元を超える表現
C&Cアカデミーに注目集まる

今年4月、塗料販売のカラーワークス(神奈川県、秋山秀樹社長)と建材商社のカントリーベース(石川県、山田修司社長)が共同で開講した「C&C フィニッシングアカデミー」が注目を集めている。特殊造形モルタルの「デザインコンクリート」とテクスチャーペイントのテクニックを併せて修得した新たなスタイルの仕上職人を育てる試みで、塗装業者や工務店などの受講者で数カ月先まで予約が埋まる人気。デコラティブな住宅建築を望むニーズが背景にある。


C&C フィニッシングアカデミーは東京・江東区の清澄白河に立地し、テナントビルの2フロアーで展開、今年4月に開講した。

受講期間は5日間。最初の2日間でカントリーベースが受け持つデザインコンクリート(特殊モルタル造形)を学び、次の2日間はカラーワークスによるテクスチャーペイントの研修。最終日に、アカデミーで学んだ特殊技術をビジネスに生かすため、マーケティング講師による営業研修が行われる。

デザインコンクリートと特殊塗装によるフィニッシングは、例えば東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンなどで多く目にすることができる。園内の建物の内外観、舗道や柵、ちょっとしたディスプレイに至るまで目に見えるほとんどすべての施設にその技術が用いられている。

年代を感じさせる古びたレンガ積みの壁、城の石垣のゴツゴツした岩肌、中世の街並みを思わせる石畳など多くの人を魅了している非日常の光景は、デザインコンクリートとフェイク(擬似)塗装によって演出されている。

この仕上技術は店舗など商業施設に導入され、そして近年住宅建築やリフォーム、リノベーションに広がっている。「デザインコンクリートと特殊塗装による建築仕上げはアメリカでは1つのジャンルとして確立し、大規模な展示会の開催や専門雑誌も数多く発売されるなどとても活況。アンティークやヴィンテージ、シャビーシックなどのテイスト、通常の建築では得られない非日常の世界観を住宅という日常の中で楽しみたいといったニーズが広がっています。いわばデコラティブハウスとも呼べる新たな住宅様式で、それが国内にも波及してきている」(カントリーベース・樋口智也専務)と説明する。

海外旅行で見かけた趣のある住宅シーン、テーマパークや商業施設で魅せられた憧れの空間を自宅にも取り入れたいニーズの広がり。一方で住宅市場が厳しい中、他社との差別化を鮮明にして付加価値化を狙う建築側の思惑が重なり「住宅建築やリフォームのメニューとして導入したい」という工務店やリフォーム会社が増加してきた。

それに対して「施工の担い手が圧倒的に少ない」(同)という課題が浮上。デザインコンクリート材料の輸入販売及び施工実績のあるカントリーベースとテクスチャーペインティングのノウハウを持つカラーワークスとがタッグを組み施工者育成に乗り出したもの。

新たなスタイルの職人像

今年4月に開講。内容が濃いため月に1サイクル、最大8名までの受講者に限定し、受講料は35万円/人。「少人数制ということもありますが、数カ月先まで予約が埋まっている状況」と主催側の予想を超えて受講希望が寄せられている。「既にデコラティブハウスの要請を受けている工務店の方、クリエイティブなスキルを身につけて仕事の領域を広げたい塗装業の方、提案の幅を広げたい設計の方などが多いですね」と受講者の顔ぶれを説明する。

デザインコンクリートの講習では合板下地にブラックペーパー→ラス張り→下地用の専用速乾モルタル(ラピットセット)で下地を作り、「カンテラ」と呼ばれる特殊モルタルを塗りつけて任意の造形を行っていく。

カンテラは軽量で最大10センチ程度まで厚付けできる材料で、カービング(彫刻)やスタンプの転写によって立体表現ができる造形専用のモルタル。

特に、転写するだけで木や石、岩肌、レンガ、ブリックなど多彩な表情になるスタンプやローラーを豊富に揃えているのがカントリーベースの特徴。「本場のアメリカではスタンプとカービングの割合は9:1ほど。時間がかかり人の技能に左右されるカービングから転写スタンプやローラーを開発、移行したことでビジネスとして成立、一気に普及した」と経緯を説明する。

全体的な構図、カンテラの配り方、スタンプの配置や方向、押さえ方などを実技で学びデザインコンクリート施工の要所を押さえる。

一方、ペインティングの講習ではスエードやサンド、メタリックなど主にテクスチャーペイントの技法を学ぶ。
特に粘度の高いクリーム状のメタリックペイント「MOIRE(モアレ)」は国内に類似品のない独特の表情をかもし出す、カラーワークスしか扱っていない材料。施工ツールはコテで、コテの角度や動かし方、塗り付けすぎない「引き算の感覚」など微妙なニュアンスを実技で教え込み、テクスチャーペイントの要点をレクチャーする。

コンクリート造形と塗装の組み合わせはまさに湿式材料の強みである「表現の自由度」の最たるもの。特に塗装職人がコンクリート造形のスキルを身につけることで、それまでの平面から立体へ、2次元から3次元へ文字通り次元を超えた表現が可能になる。「我々が目指している、ペイントの存在感や価値の向上は魅力あるペインター像の創出との両輪」(カラーワークス・秋山秀樹社長)と捉え、新たなスタイルの職人育成に臨む。



デコラティブハウスのイメージ(大橋塗料・sena base)
デコラティブハウスのイメージ(大橋塗料・sena base)
デザインコンクリートとフェイク塗装で演出
デザインコンクリートとフェイク塗装で演出

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