建築塗装ロボットの開発へ
2020年の実用化目指す

建設塗装会社のKMユナイテッド(本社・京都市、社長・竹延幸雄氏)は、建築現場向けの塗装ロボットの開発に着手する。システムデザインの第一人者で慶應義塾大学大学院教授の白坂成功氏の協力のもと、建物内部の壁、天井、床などの作業ができる塗装ロボットを開発し、2020年度の実用化を目指す。人手不足と生産性の向上といった建設業の課題克服へ向けロボット開発に挑む。


KMユナイテッドは大阪市に本社を置く老舗塗装会社・竹延(たけのべ)の関連会社として、塗装職人の育成を目的に2013年に設立したベンチャー企業。塗装業で人手不足が深刻化する中、性別や国籍、学歴を問わず広く雇用の門戸を広げ、入社した未経験の人材を、早期に塗装職人として戦力化する会社として注目されている。

中でも、ベテラン職人の技能を数値化・明文化して体系立てた人材育成プログラムを開発するなどの手法で職人の採用と定着、育成で実績を上げている。同社では現在、16歳から78歳までの41名が働いており、そのうち女性14名、外国人1名が職人として活躍している。

ただ、業界全体を見渡したとき、人の採用と育成だけでは限界があるとの見方もなされている。特に建設業は、約500万人の就業者のうち3割強の169万人が55歳以上(2016年国交省調査)と、全産業の中でも最も高齢化が進んでいる。きつい、汚い、危険の3Kのイメージを払拭し、若い人が入りやすい職場環境を整えていくことも急務。人の不足を補い、職場環境の改善とイメージの転換を図る意味合いも塗装ロボットの開発に込められている。

開発に当たっては、人工衛星「こうのとり」の開発に携わった経験を持ち、システムデザインの第一人者である慶應義塾大学大学院の白坂成功教授に協力を要請した。

白坂教授は人が経験的・感覚的に身につけてきたことを体系化する研究を行っている。「ロボット開発において、属人的で暗黙知のかたまりである"職人の技能"を体系立った形式知に変換するプロセスが必ず必要で、とても価値のある助言がいただけると期待しています。何よりも、システムデザインの第一人者が塗装の世界に目を向けたことが嬉しい」と竹延社長。力強い協力者を得て、塗装ロボットの開発に乗り出す。

形状や重量、動作などロボットの具体的な要件はこれから考案していくことになるが、「フルオートというよりも、現場に機械を持ち込んで、ある程度人が操作してロボットに作業させるイメージ」という。機械のオペレーションなので塗装の技能は必要なく、「例えば女性や高齢者の方でもオペレーターとして活躍できるような新しい職種の創出につながればいいと思っています」とし、雇用創出の側面でも期待する。

塗装ロボットに関して現在構想しているのは、建物内部の天井や壁など広い面積の箇所をロボットで塗装し、人間は細部の塗装や意匠性塗装などより付加価値の高い作業に集中、工事全体での生産性を高めていく方向。「人手不足とともに、生産性の向上も建設業の大きな課題。人がやっていたことを機械に置き換えて生産性を高めることが必要になってきますし、機械が作業を行うことで品質の均一化も期待できます。人の採用と育成だけでは超えられない壁を突破するためにも塗装ロボットの開発が急がれます」とし、業界の先陣を切って開発に挑む。



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