道路橋、老朽化クライシスに活路
ブラスト不要工法がNETIS登録

重防食塗料メーカーのジャパンカーボライン(本社・東京都・江東区、社長・猿渡晋吾氏)は、鋼道路橋の塗替え仕様でRc-Ⅰ塗装系に匹敵するブラスト処理不要の塗装仕様を確立した。このほど、「3種ケレン対応型、高耐久・省工程塗替えシステム」として国土交通省新技術システム・NETIS(ネティス)に登録。ブラストに伴う費用や工事負荷の軽減が図れることから、「予算などで修繕が遅れている地方自治体の道路橋の維持管理に寄与できる」(猿渡社長)とし、鋼道路橋の長寿命化修繕の有効策として普及させていきたい考えだ。


道路橋は全国に約73万橋があり、このうち7割以上の約52万橋が市町村道に設置。建設後50年を経過した橋が10年後には50%に達すると見られており、橋の老朽化問題が年々深刻化している。

国土交通省は、2007年に発生したアメリカミネアポリス高速道路崩落事故を受け、国及び全国の自治体が管理するすべての橋梁について点検を指示。それに基づき、都道府県や政令市で98%、市町村で79%の割合で道路橋の長寿命化修繕計画が策定された。

ただ、同計画に基づく道路橋の修繕は滞っている。その進捗率は、都道府県や政令市で3割弱、市町村では1ケタ台にとどまっていると見られており、修繕の実施が課題となっている。老朽化による通行止めや通行規制が行われている自治体管理の橋も2,500橋近くに上っており、まさに生活インフラが年々損なわれる事態となっている。

修繕が必要な橋に対してその進捗率が低いのは、維持管理のための専門技術者の不足に加え、特に地方の市町村では予算の確保が困難なことも大きな要因。「やりたくてもできない」実情がある。

老朽化した鋼道路橋の塗り替えは、素地調整でブラスト処理を施し、鋼材を露出させた上で有機ジンクリッチペイント防食下地+弱溶剤形変性エポキシ樹脂塗料下塗(2回)+弱溶剤形フッ素樹脂塗料用中塗+弱溶剤形フッ素樹脂塗料上塗の計5回塗りからなる、鋼道路橋塗装便覧のRc-Ⅰ塗装系が用いられている。

この仕様においてネックになりやすいのはやはりブラスト処理。ハードな作業環境に耐える養生や鉛・クロムを含んだ旧塗膜の廃棄物処理などに伴う費用、粉塵、騒音などの環境問題対策、場所や形状によってブラスト処理が困難なケースなどの諸問題があり、ブラスト処理を前提とするがゆえに工事に取り掛かれないケースも多い。橋の老朽化対策が進まないことで「近い将来、人命や社会システムに関わる事態も想定される」(有識者)と危ぶむ声も聞こえている。
 

トリプル浸透効果で錆をシャットアウト

 
こうした実態を受け、ジャパンカーボラインではRc-Ⅰ塗装系に匹敵する防食性や耐久・耐候性を実現しながら、修繕を阻む要因にもなっているブラスト処理を不要とする塗装仕様の確立に着手。このほど、3種ケレン対応型、高耐久・省工程塗替えシステム「ラストマスチックシステム」としてNETISに登録された(登録番号KTK-190003-A)。
 同システムは3種ケレンの素地調整後に悪素地面用浸透性エポキシシーラー「ラストボンドSG」+浸透性厚膜形エポキシアルミニウム塗料「カーボマスチック15HB」+浸透性厚膜形エポキシ樹脂塗料「カーボマスチックマイティ」+厚膜形無機系ポリシロキサン塗料「シロキサンエースHB」の4層塗り仕様。Rc-Ⅰ塗装系の5回塗りに比べて省工程を実現した上、無機成分リッチなポリシロキサン上塗りの組み合わせでフッ素樹脂塗料仕様を上回る耐候性も兼ね備えた。

特筆すべきはやはり、3種ケレンの軽微な素地調整でRc-Ⅰ塗装系に匹敵する防食性を実現した点だ。残存錆層を強力に封じ込める3つの浸透性塗料の組み合わせで課題を克服した。

特に1層目に用いる「ラストボンドSG」の効果が大きい。同品を構成するエポキシ樹脂と吸水性成分のケチミンが毛細管現象によって錆の隅々まで浸透し、空気中や錆層の中の水分とケチミンが反応。生成されたアミンとエポキシ樹脂が架橋し錆層を固定化して錆の成長を抑える。

更に2層目と3層目の厚膜形エポキシ樹脂塗料も優れた浸透性が特徴で、いわばトリプル浸透効果によって錆の効力を無にしてしまう防錆メカニズム。複合サイクル試験ではクロスカットのふくれ幅がRc-Ⅰ塗装系5mmに対して、同システムでは4.5mmと同等以上の防食性を実証。その有効性への期待から「申請から3カ月」(猿渡社長)という短期間でNETISに登録された。

国土交通省の新技術活用システムNETIS(New Technology Information System)は、コスト削減や環境保全、安全性の向上など公共事業や建設分野のさまざまな課題に対して有効性が認められる新技術を審査・登録し、広く情報提供している取り組み。新しい技術に対して腰が引けがちな自治体担当者もNETIS登録されたことが大義名分となり、新たなスペックを採用しやすい側面がある。

「現実問題として、ブラスト処理がネックとなって修繕工事に取り掛かれない橋は多数存在すると思う。今回、素地調整として大幅に作業負荷、コスト負荷を軽減した3種ケレンでRc-Ⅰ塗装系と同等の性能と認められたことは、遅れていた修繕工事に活路を開くものとして期待しています。コストや環境問題に加えて人手がますます減っていくこれからの時代、いかに効率的に効果的なアウトプットを提供できるかをテーマとし、新たな製品開発や仕様確立に臨みたい」(猿渡社長)とし、勝機を見据える。



ラストマスチックシステム
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