自動車塗色技術を工業分野に応用

イサム塗料(社長・古川雅一氏)は工業用塗料の水性化に成功、「アクアシャインGA」として市場投入する。これに加え「CBエコ」2製品をセットとして、測色システム「彩選短スマート」を組み合わせたカラーシステムを構築し、工業用塗料マーケットで独自の色彩戦略を展開していく。「環境・安全への関心の高まりと同時に、工業ユーザーの差別化に寄与するカラースキームを提供していきたい」(古川社長)と工業用を同社の柱として育成していく意向を示す。


「アクアシャインGA」は溶剤系塗料に匹敵する性能を確保した他、光沢保持レベルが高いのが特長。同社は建機メーカーと共同で実証実験を5年間にわたり実施してきた。その結果、工業用としてのパフォーマンスが確認できたところから本格上市を決定した。

また「CBエコ」は大型車両用として実績があり、「アクアシャインGA」と併売することで、ユーザーの選択の幅を広げる狙いがある。

注目される点は、工業用塗料マーケットに色彩戦略を導入したところにある。一般工業用分野では限定色が中心の標準色設定が主流となっており、スペックカラーも色相が狭い範囲にあった。また中小ユーザーは設計セクションに色彩の専門家を配置しているケースは少なく、製品を色彩で付加価値化する発想が弱かった。

同社では核(コア)事業である自動車補修用塗料で培った技術を工業用にアプリケーションした。100近くの原色システムの中には、工業用のカラーリングとしてほとんど採用されていない色域がある。高輝度メタリックやパール色など、色相・彩度・明度とともに塗料の色域としては最も広い。更に素材に関しても鋼板から各種樹脂への対応が可能だ。同社では既にBP工場向けにカラースキーム提案や「プチDECO」サービスを展開してきた実績がある。事故車需要からの脱却を図る新たなサービスメニューとして、特に次世代のBP経営者から注目されている。

工業用は同社にとって自補・汎用に次ぐ第3の柱。熱関連の機能性塗料の製品の上市を行ってきたが色彩戦略で製品体系を構築していく方向に舵を切る。「製品はあくまでも武器であり、色彩を戦略として他社との差別化を鮮明にしていきたい」(古川社長)。

色彩戦略を推進する基盤となっているのが測色機「彩選短スマート」だ。車体の色合わせで蓄積した膨大な配合データがあり、測色から配合までスピーディに対応できる。これに創色の要素を加え、多様な工業用カラーニーズをカバーしていく態勢をとる。

今回の同社の色彩戦略の成否を決めるのはB to Bチャンネルの中での塗料販売店の役割にある。「地域に密着しているディーラーと一体となった展開が不可欠。ひと口にカラーニーズといっても、工業用の場合その大半が潜在的なもの。工業製品のブランド力を向上する上で色彩(カラーデザイン)がいかに重要な要素であるかを提起していかなくてはならない」(同)という。

このため同社はディーラーの販促ツールを作成する計画を立てる。具体的には店頭やユーザー先でのカラープレゼンテーション用のカラーパネルなどを用意する。カラーバリエーションの魅力を実感できるツールにしたい意向だ。またディーラーと一体となった営業にも注力する。同社のポリシーである「現場に一番近いメーカー」としての立ち位置を行動で示していく。

一般工業用への色彩提案は同社を始め、他メーカーも動きを見せる。自動車補修用の原色システムを工業製品のカラーバリエーションに落とし込む方向。工業用ユーザーの反応は一部戸惑いを見せながらも、カラーデザイン提案に新鮮な発想を感じる向きもある。

工業用製品の特色として、機能付与の差別化には開発にコストと時間がかかる。これに対しカラーデザインはコストの負荷が少なく、製品の価値を高められ、ブランドとしての存在感を具体化できるメリットがある。成熟市場ではデザイン戦略が基本となる傾向が強まっており、「色で売れる製品」への関心は高まっている。

工業用塗料マーケットは出荷金額ベースで約22%(1,350億円程度)を占め、自動車用の17%を上回る規模がある。そのセグメントの動向を見ると、海外シフトによる電気機械向けは減少傾向にあるものの、機械用・金属用・建築資材用は需要に安定感がある。このため各塗料メーカーは工業用へのてこ入れを強化しており、イサム塗料においても数年前から製品開発に注力し、工業用水性塗料の開発で先行した。

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