意匠性粉体塗装を得意とする中で、近年ではアルミ建材領域において存在感を示している。今後の事業戦略について門脇社長に聞いた。
――建築外装事業を始めた時期はいつ頃ですか。
「15年ほど前、ゼネコンから話があって、当社の意匠性粉体塗装で外装扉を塗ったのがスタートです。その後は営業しながら実績を重ねていき、お客様からコンスタントに話をもらえるようになったのはこの3、4年です。当社が行った意匠性粉体塗装の物件を見て『あんな風な仕上げをしたい』と思案した設計者などから声がかかることが多く、今は週に2、3件は設計事務所から問い合わせが来ています」
――引き合いが来る過程をもう少し詳しく教えてください。
「大きく分けて2パターンがあります。1つは、サブコンやゼネコンから来るパターンで、設計者やデザイナーは外装材に石や木を使いたいがコストが合わないため、塗装でそういうマテリアルを表現できないかと相談が来るパターン。もう1つはデザイナーのイメージで仕上げたいという要望です。例えば『雨上がりの水たまり』とか『木の皮が剥げたような』を表現してほしいといった感じです」
――顧客としては、粉体塗装にこだわっているわけではないのですね。
「そうですね。当社の意匠性仕上げを採用してもらった結果、粉体塗装だったと言えると思います」
――溶剤塗装では意匠性は難しいのでしょうか。
「外装建材に使用される溶剤フッ素樹脂塗装ではメタリックカラーはありますが、デザイナーの求めるテクスチャーを付けるのは難しいという認識です。それに、溶剤塗装の場合は職人技術に依存する割合が多い一方で、粉体塗装であれば塗装の生産性は上がります。結果的にコストメリットも出しやすいという特性があります」
――貴社ではこれまでいわゆる"高耐候ポリエステル"の実績が多いですが、最近の状況はいかがですか。
「まず実績としては、外装でも圧倒的に"高耐候ポリエステル"が多いです。ビル建材でより耐久性が求められる高層部分は溶剤フッ素仕上げでしょうが、当社が採用される意匠性仕上げはエントランス周りや軒天、低層階がほとんどなので、顧客としては"高耐候ポリエステル"の性能で問題ないと判断しています。そして、最近の状況としては、フッ素樹脂系とポリエステル樹脂系を含有した粉体塗装の話が増えています。国内外の複数の塗料メーカーが製品化しているので、当社としても意匠性をどこまでできるかチャレンジしているところです」
――貴社の建築事業の状況は。
「売上は堅調に推移しており、直近では約1.5倍増です。需要は確実に増えている手応えがあります。ただ、今は意匠性で付加価値が取れていますが、今後の展開は楽観視していません。外装材仕上げの競合として印刷があり、現状、意匠性に関しては塗装よりもコスト高になっているので採用はそこまで多くはありません。しかし、今後は企業努力でコストを下げてくると想定しています。そのため、当社としても新しい意匠性仕上げの開発に注力すると同時に、生産性を上げてコストを下げることにも取り組む必要があると考えています。コストを下げることができればもっと広がると思いますし、逆にそれができないと、他の仕上げ材の競争力が増して塗装の選択肢がなくなることが怖い。溶剤塗装も含めて塗装業者の数も減っていますし、塗装レスが進む危機感があります。効率を上げることも重要で、設備投資や人材の問題、ロボットの活用など課題は多いです」
――塗装レスは業界全体の問題であると思います。そういう意味では連携も必要になると思いますが、粉体塗装の転写ではセブナ装機さんと協力関係にありますね。
「転写装置は導入していたのですが、あまり力を入れていなかったんです。年間5物件程度で、1カ月生産するときもあれば数週間で済む場合もあって人が育たない問題がありました。いざ転写をやるときに通常の塗装ラインでも人が余っているわけではないので、『人を出せない』となる。やはり常時稼働しているのではなく単発モノの難しさがありました。そんなときにセブナ装機の一戸亜土社長が転写に興味があるとして連携するようになりました」
――どのような連携ですか。
「転写装置をセブナ装機さんに置いてそこで生産してもらっています。営業は当社が担い役割を分けています。我々の感覚としても提案すればもっと増えると思っています。転写の柄は木目がほとんどですが、木目を出すには、木を使うか、フィルムか転写かになるのですが、木はコストや使える部材に制限があり、フィルムは剥がれるリスクがあります。その点粉体塗装であれば塗装性能が担保できコストメリットも出せます。木目ニーズが根強い中で、今後は物件対応だけでなく、アルミメーカーと組んで半量産品を行うことも必要だと考えています」
――建材分野において粉体塗装の拡大には何が必要だと思いますか。
「市場拡大のためには業界全体で取り組んでいくべきだと思います。最近ではマンションや戸建てでも高付加価値となる意匠性粉体塗装が採用され始めていますし、意匠性粉体塗装の認知度は確実に上がっています。こうした需要に対して、設計者やデザイナーの意向に合わせて色合わせやテクスチャーを表現する、更には量産化技術について当社はノウハウがあります。提案は当社が行い、実際に塗装するのは自社でなくても協力工場に依頼してもいいと思っています。連携することでビジネスは拡大できるはずです」
――ありがとうございました。