旭サナックは4月16日にヒルトン名古屋で第137回ユーザー技術教室(UTS)を開催した。その中で近々上市予定の新型エア静電自動ガンの技術発表が行われた。
「脱炭素社会に貢献するエア静電自動ガンについて~ラウンドスプレイノズルと新荷電方式の開発~」と題し、新型ガンの技術解説が行われた。新型エア静電自動ガンはロボット塗装を想定して開発し、①塗料の飛散抑制②塗料使用量の削減の2つを開発要素として、塗着効率向上を図った。
塗料の飛散抑制については、低風量微粒化を実現することで塗料粒子の飛散軽減を図る。付帯的効果として塗装機のエネルギー削減に寄与できる。
一方、塗料使用量の削減については、塗装距離を100mm以下に近接化し、被塗物との電界強度を強めることで塗着効率向上を図った。
新開発したエア静電自動ガンにはこれらの特長を組み込んでいる。同社は「小さなパターン幅で低風量による塗料飛散なく高塗着を実現している」と説明。吐出量50~100mL/min、パターン幅50~100mmの仕様。低風量で高微粒化が可能なラウンドスプレイノズルと、静電塗装で近接化できる新荷電方式を搭載した。
ラウンドスプレイは回転霧化塗装機のようにスプレイパターンが丸形状となる。そのため、ティーチングの簡素化や上向きスプレイが可能などのメリットがある。加えて小型設計であり狭小部の狙い込みにも適している。
そして、今般霧化方式について新技術を搭載した。一般的なノズルの霧化方式は塗料が中央部から棒状に噴出し、その周囲から高速のエアを吹き付けることで塗料を分断・霧化を行う。
対して新開発した微粒化機構は、円周上に噴出した塗料がエアによって溝に押し付けられ溝の先端で分断・霧化を行う。溝の1つ1つがノズルの役割を果たし、あらかじめ溝で細い糸状になるため霧化しやすく、低風量で高い微粒化性能を得ることができた。
荷電方式については、ノズルと逆の極性を持つVAリング電極を搭載することで100mm以下の近接塗装でも十分な静電効果を得られる新たな荷電方式を開発した。
同社は「VAリング電極に電圧を印加することで、ノズル先端との電位差を増幅させ、十分な静電効果を得ることが可能となる」とし、近接距離における帯電量は40%向上すると説明。
従来にない独自技術に自信を持ち、対象としては、フレーム部品や自動車内装部品、小物樹脂部品、補正用などの用途に適している。
また、講演では本田技術研究所兼本田技研工業の輪嶋善彦氏が「Hondaにおける航空用パワーユニット開発への挑戦」と生産技術研究所TSUZUKIテクノリサーチの都築正世氏が「ものづくりと生産技術~AIにない視点~」について講演した。