大日本塗料は4月19日、東京デザインセンターで「新しい価値を提供する製品意匠力アップセミナー」を開催した。セミナーには今年3月に運行を開始した西武鉄道の新型特急車両「Laview(ラビュー)」のデザインを担当した建築家・妹島和世氏が登壇。景観との調和を狙った特急車両のデザインについて、同氏の考えを語った。

「風景と共にある特急」を目指して

「Laview」のデザインについて妹島氏は「『風景と共にある特急』を目指し、都市や自然など周りの風景と溶け込んで一緒に景色を作るデザインを考えた。その上で車体の外装は大事な要素だった」とコメント。

アルミ製の車体に研磨を施した後、大日本塗料のめっき調シルバー塗料「スーパーブライトNo.2000」を塗装した。「アルミの溶接痕を意匠として残すことが難しかったため、白っぽさを残しながらも映り込みを表現できる塗装を採用した」という。

今回採用したシルバー塗装について妹島氏は「このシルバーを建築分野にも活用できるか、可能性を見つけていきたい」と述べた。その後は妹島氏が監修した風景の一要素としての役割を持った建物のデザインを、実例を交えて紹介した。

3コートでよりメッキ感を表現

次に大日本塗料車輌産機・プラスチック塗料事業部の成田哲郎氏が、同社が展開するめっき調塗料の仕様について説明した。

「Laview」の外装に採用された「スーパーブライトNo.2000」は粒子が小さい蒸着アルミと収縮応力の高い樹脂を採用することで、シルバー層を1~3μmの薄膜で仕上げ、高輝性のあるアルミ配向を実現。また下塗りのブラックにシルバー層とクリヤーコートを重ねる3コート仕様で、よりメッキのような深い陰影を表現した。

「Laview」への採用に際して、妹島氏による「すりガラス越しに透けて見えるようなイメージ」を具現化した。乾燥の速さや色相の安定、イメージに合わせた光沢調整という課題を、温湿度のマッピングや専用グレー下地の作成、専用ツヤ調整クリヤーの導入で対応し、今回の採用に至ったという。

今後の展開として、2コートで作業性を向上した仕様や、厚み0.015μmの特殊蒸着アルミを使用し、より重厚感のある金属感を表現できる次世代金属調塗料「ミラーコート(仮称)」を開発していると報告した。

インクと塗料のコラボレーション

最後に同社のスペシャリティ事業部の松本茂樹氏が、インクの加飾技術と塗料の積層技術を組み合わせた複合塗膜「DNTデジタルコーティングシステム」について紹介した。

同システムは、受理層(ベース層)とトップコート層の間にインクジェット印刷による意匠層を設け色調や質感を付与する。インク層は積層することで盛り上げることができ、凹凸やシボ調など触感を付けることもできる。

セミナーでは複合塗膜を活用した新技術について、見る角度によって色や図面が変わる「レンチキュラー効果」を説明。凸レンズを並べたレンチキュラーレンズのシートをインクの積層で表現し、シートの下に印刷された複数の画像を、視点を変えることで見分けることができる。

松本氏は「インクジェットによる意匠をパソコン上で自由に作成可能なため、版の管理が不要であり、小ロット多品種の生産に対応可能」という強みを述べ、講演を締めくくった。