セミカスタム粉体塗料「REVOX」始動
作業性と入手性で差別化

日本ペイント・インダストリアルコーティングス(本社・東京都品川区、代表取締役社長・塩谷健氏)はセミカスタムをコンセプトとした新たな粉体塗料「REVOX(レヴォックス)」の市場販売を10月2日にスタートさせた。ポリエステル樹脂系(ブロックイソシアネート硬化)とエポキシ・ポリエステル樹脂系(ハイブリッドタイプ)の2製品をラインアップ。市場が求める作業性と入手性に応えた製品で、これまで溶剤塗料からの置換ができなかったユーザー層の取り込みを図り事業拡大を目指す。


粉体塗料市場は環境対応と塗料回収再利用の経済性の観点から、投資余力のある大手需要家の内製ラインを中心に拡大してきた経緯がある。そのハイエンドニーズに対して、同社では樹脂開発からのオーダーメイドで展開しており高いシェアを獲得、事業を拡大させてきた。その中で近年は新たな波が来ているとの見方を示す。

塩谷社長は「ここ数年で粉体化の第2波が来ていることを実感している。それは以前とは少し違って熟練工不足によるところが大きい。リキッド系(溶剤系、水系)は熟練が必要なため、比較的塗りやすい粉体塗装ニーズが高まっている。具体的にはOEM企業に対して、その次のティア2やティア3、それに塗装専業者が粉体化の波を起こしている」と分析する。

ハイエンドニーズに対してオーダーメイドで設計する展開を得意としてきた一方で、新たな粉体化の波を起こしている中小規模のユーザーに対して、製品展開で弱い部分があった。

そこで数年前から開発を進めてきたのが新製品のREVOXだ。「ハイエンドに対してミッドゾーンと称していますが、オーダーメイドまでの品質は求めないが、もっとリーズナブルに粉体塗料を使いたい、そのミッドゾーンにフォーカスした製品と供給体制を確立した」(塩谷社長)。

300kgを2週間で供給
汎用樹脂のセミカスタム化


たどり着いたのがセミカスタムというコンセプトだ。REVOXの特長の1つが納期の短さ。一般的な粉体塗料の設計・調色から製造・出荷までは1カ月~2カ月かかり、繁忙期ともなればその期間が更に延びることも多い。溶剤塗料をメインに使用しているユーザーからすると、新色をオーダーして調達できるのが1カ月以上となると使用を敬遠してしまうのも無理はない。

それに対して、REVOXの納期は最短2週間。しかもオーダーのミニマムロットは300kg対応を実現した。

それを可能にしたのが製品開発プロセスだ。製品は屋外用途のポリエステル樹脂系(ブロックイソシアネート硬化)と屋内用途のエポキシ・ポリエステル樹脂系(ハイブリッドタイプ)の2種類としている。

オーダーメイドのように樹脂開発をせず、樹脂タイプを2種類に限定することで開発工程が不要となりすぐに調色工程に入れるため、従来に比べて大幅な時間短縮を実現している。

加えて、対応カラーについても、まずは需要域である淡彩色の半艶以上の色域からスタートさせる。ただし今後は中・濃彩色まで対応を広げる予定という。

分散工程で大幅に時間短縮

生産面でも新たな取り組みを行っている。同社が今まで主戦場にしていたハイエンド向けの供給体制では、ミッドゾーンのニーズに対応できない。そこで千葉工場に新たな生産ラインを設けるとともに、ミッドゾーン向けに適した高効率・高機動生産プロセスを開発した。

「粉体塗料には樹脂、顔料、添加剤を投入し熱をかけて練る特有の分散工程があり、非常に手間がかかる。今回、高分散能力を持つ分散機を採用し、そこにどの材料を組み合わせると短時間でしっかりと分散できるかといった、生産技術の開発をずっとやってきた」(塩谷社長)。

この開発により分散工程を大幅に効率化し、洗浄時間も短縮した。それというのも粉体塗料の製造において、色や樹脂系を変えるときに行う洗浄に時間がかかるという問題があるからだ。

樹脂系ごとに専用ラインを有し、淡彩色に限定していることから、洗浄時の異なる樹脂の混合や淡彩、濃彩といった色変えの難しさを防ぐことができる。

帯電制御技術を駆使し作業性向上

REVOXのもう1つの大きな特長が作業性、つまり塗りやすさだ。粉体塗装は粉体塗料に電気を帯びさせてアースした被塗物に付着するというもの。帯電量が増えれば塗料が多く付着し、その逆であれば付着量は少なくなってしまう。自動塗装システムであれば、ガン距離の自動制御などで調整が可能だが、ハンドガンではその調整が難しいという問題もある。

REVOXでは同社が培ってきた帯電制御技術を駆使することにより適正な帯電量を保てるため被塗物に付き過ぎる、付きにくいといったことを防ぐことができる。

ミッドゾーンだからと言って外観品質を問わないというわけではない。作業性を良くすると同時に性能面でも一定基準をクリアし、塗装作業性と汎用性能を両立させている。

粉体化で熟練工不足を克服

メインターゲットとなるのがミッドゾーンと称する塗装専業者をはじめとする中小規模ユーザーだ。大手ユーザーのような塗装設備を持つにはいたらず、それでいて熟練工不足が深刻化、塗料在庫はできるだけ抑えたい、そうしたユーザーは増えている。そこへの粉体塗装の動機付けを狙う。

塩谷社長は「リードタイムと塗りやすさを強みとして市場で優位性を出し、粉体塗料の課題解決による改革を行っていきたい。特に粉体塗料の需要拡大を牽引しているミッドゾーンでの粉体化の波にしっかり乗り、マーケットを喚起していく。粉体塗料は今後の労働人口減少や熟練工不足へのソリューションであり、環境保全や経済性も含め粉体塗料事業の拡大を通して社会課題の解決に貢献していきたい」と意気込みを見せる。REVOXの2021 年度売上目標は10 億円としている。



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