道路運送車両法の改正に伴い4月から特定整備認証制度が施行された。先進安全自動車(ASV)に搭載されている自動車線維持システムや自動駐車などの先進運転支援システム(ADAS)への対応が急務となっている。今年2月に設立した日本技能研修機構(JATTO)は自動車の進化に対応した修理技術を持つBPをネットワーク化し、技術の標準化を図る。石下貴大代表理事に機構の現状や方向性について聞いた。

――発足の経緯を教えてください。

「現在の自動車修理はADASの理解と適正な修理技術が必要不可欠です。特にADASにおける故障時の機能回復、機能調整・機能校正(エーミング)はドライバーの安全・安心を守るための重要な整備作業です。 国交省も電子機器ADAS整備について特定整備認証という新たな資格制度を作り対応しています。急激に進化するADAS技術に対応するためには設備・技術・最新情報の習得が必要不可欠です。我々はドライバーの安全・安心を守るため、それら3つの情報を会員に提供することで、全国隈なくサービスの提供を行うために発足しました。工具機器サプライヤーなどと幅広く連携し、ADASの調査・研究などを通じ適正な整備を提供し交通事故撲滅を目指しています」

――修理工場のエーミング作業の現状を教えてください。

「エーミングをするという部分で知識と情報がないという状況です。また、エーミングのためのサービスインフラが少なく、大部分がカーディーラーに頼っています。自動車事故実態調査によると、例えばエーミングが必要な修理案件が100件あるとして、50%が直接ディーラーで行っている。自社でエーミングツールを持っていてもディーラーに依頼している工場は42.6%とほとんどの修理がカーディーラーに流れています。そこで当機構は自社でできる工場を『エーミング・ジャパン』の加盟店としてネットワーク化し技術の標準化を図っていきます」

――エーミング・ジャパンの特長は。

「47都道府県の工賃相場はバラバラです。この地域相場から5~10%安価に修理を提供します。一方で、競合を避けるため会員企業が立地する15km以内には工場を置かないことで、きちんとお客様を確保できる体制を整えています」

――会員企業が遵守するルールなどはありますか。

「48時間以内にエーミングを行うというルールをつくり、スピーディに対応を行っています。板金や塗装作業は終わっているのに、エーミング作業をディーラーに出しているため、2週間経っても戻せないといった話も実態としてあります。そうなると代車を考えなければならない。これでは、工場側も修理を待つお客様もメリットはありません。お客様をお待たせすることなく修理を完了させられる体制を整えています」

――加盟状況はいかがですか。

「現在(8月上旬時点)加盟は50社、加盟検討26社の76社となっています。内訳は、30%が部品商、35%が車体整備事業者、35%がディーラーで、地域の比較的大きな中古車センターなどにご入会いただいております。9月にも新たに加盟店の募集を行う予定で、2024年までに加盟店を500社まで増やす予定です」

――加盟条件を教えて下さい。

「現在、プラチナ会員200社、ゴールド会員300社と2種類の加盟企業を募集している状況です。ゴールドは国産車全車種の整備技術を持つ工場で、新たに特定整備の要件としてできた電子制御装置整備についても国産車については全国トップ水準の設備・技術・人材を有すること。国産車全車種のエーミング機器を有し、技術対応ができることなどが条件です。プラチナ会員は国産車に加えてアウディ、BMW、ベンツ、フォルクスワーゲンの海外4メーカーの修理にも対応します」

――協賛会員として塗料販売店も加わっています。

「塗料販売店の入会メリットとして、加入した販売店の顧客すべてがエーミング料金の3%割引対象となります。また、会員とのつながりの中で新規開拓や車体整備事業者との人脈づくりに役立てられます。その他、最新機器や技術など日々変化する情報を的確に捉え、お客様に情報提供できるところがメリットとなります」

――最新機器の情報は特に重要になってきますね。

「エーミングツールのメーカーも賛助会員として多数加盟しています。そのメリットを生かし機器メーカーからエーミングツールをレンタルし日々さまざまな検証を行っており、機器メーカーを超えた組み合わせによって作業の効率化などを図れる可能性を探っています。例えば、この自動車にはこのツールとターゲットといった車種ごとの最適な組み合わせも現在検証中です。これが更に進めば、機構独自の組み合わせを加盟店に推奨していくことも考えています」

――それは大きな強みですね。

「そうですね。そのためには、加盟店が持っている修理に対する課題とその解決方法の蓄積が重要です。その解決方法や情報も加盟店間で共有していきます。現在はウェブを使った会議システムで情報交換を積極的に行っている状況です」

――今後の方向性は。

「前述の通り、まずは会員独自のノウハウや技術を蓄積し、確立していくことが重要と考えています。また、それを共有していくことで加盟店の技術向上を図っていきます。現在はコロナ禍でストップしていますが、海外の技能実習生の受け入れも行い、技術の伝承と人材確保も積極的に行っていきます」

――ありがとうございました。