大規模改修市場に挑む
製品技術と施工の融合

日本特殊塗料のグループ会社・ニットクメンテの業績が拡大している。関西圏でタワーマンション4棟の改修物件を受注するなど、事業が成長軌道に乗っている。メーカーの施工会社という立ち位置で、着実に工事実績を積み上げてきたことが成長の基盤となっている。「マンパワーを充実させたい」と次のステップを見据える。


----大規模改修市場の現状をどう見ますか。

「コスト競争の厳しさは相変わらずですが、管理組合の意識が変化してきています。安易にコストに流れるのではなく、施工会社の実績と担保力を評価するマインドが強くなっており、逆にいえばコストだけで攻めていく施工会社は淘汰される傾向にあります。とはいえ価格競争の局面が沈静化する気配はありませんけどね」
----どのような立ち位置をとっているのですか。

「発注側の選別基準で安心・信頼が重視される傾向が強くなっています。この傾向は今後も重要なポイントになると思います。そこで当社のスタンスですが、まずいえることはメーカーとしてのアドバンテージ(優位性)があります。施工材料メーカーであるということはイコール技術力と見なされるとともに、与信性への信頼につながります。更に付け加えれば、工事業者にとってもメーカーとタイアップするメリットがあります。工事品質を共同で担保することができるわけですから」

----自主管理組合と管理会社とでは対応が違ってきますか。

「基本は同じです。特に居住者への配慮(ケア)という面がとても重視されるようになっており、工事そのもの以上に重要な要素となってきています。このため現場管理レベルの向上がとても大きな課題になっています」

----具体的にはどういうことですか。

「単純化していえば工事の良し悪しは現場管理次第といえます。居住者と工事業者との関係をうまくかつ円滑にまとめ上げていくコミュニケーションの能力が現場管理者に求められます。工事関連の専門知識を有していることは当然ですが、人間力が必須要素です。居住者のクレームへの対応力には常に工事業者の現場でのマナーの問題が含まれています。現場責任者は居住者と工事業者とをつなぐインフォメーションを重視しなくてはなりません」

----工事業者との関係づくりで注意している点はありますか。

「工事の技術力もさることながら、我々と一緒になって居住者の安全・安心を常に心掛けることに尽きると思います。これがとても難しいことでもあります。工事現場はそれぞれ条件が異なり、ひとつとして同じ現場はありませんから、現場対応の標準化ができない。基本的なルールはあっても、現場はすべて応用問題ばかりなので、臨機応変の対応力が求められます。現場での安全・安心のため双方向での打ち合わせがとても大切です」

----価格競争の実態は。

「相見積もりの中で価格差は当然発生します。とんでもない安値を出す施工会社もありますが、きちんとした改修設計をベースに工事単価を出せば自ずと理に合った価格帯が見えてきます。当社のスタンスとしては受注するためだけに単価を下げることはありません。それには診断から始まってトータルな工事品質を確保するスタンスを発注側に伝える努力をしています。例えば安全管理を具体的にどうするのか、他社との差別化を価格ではなく居住者ケアに置いています」

----受注状況はいかがですか。

「最近42階建てのタワーマンション4棟を受注することができました。当社にとって過去最大の物件となります。当社の実績と与信の力が受注につながったと考えています。手持ち工事としては来春までの分を確保。大規模改修は受注から1~2年のスパンがあり、今のところ好調です。当社の認知度が徐々に浸透している成果だと思います」

----営業体制を強化していますね。

「東京本社の他、大阪、名古屋、札幌に拠点を置き、スタッフは65名です。現場管理できる人材の育成には時間がかかります。これまでは中途採用などで確保してきましたが、自前で人材を育成し、マンパワーを拡充させていくのが課題です。大規模改修市場のストックは巨大ですから、まだまだ伸び代はあります」

----親会社(ニットク)との連携はありますか。

「これまでは関係性はなかったのですが、事業拡大の方向の中で連携は必要だと感じています。その理由のひとつとして改修技術の高度化があります。メーカーの施工会社としての優位性を生かしていくためには製品や工法の開発能力は今後更なる差別化になることは確実です。また工事・現場ノウハウのフィードバックによって親会社へ寄与していきたい」

----ありがとうございました。

◇取材後記
土井氏がニットクメンテの代表に就任した当時、事業としては瀬戸際の状況にあった。2年間という与えられた時間の中での再建に取り組む。勝算があったわけではない。土井氏自身が白紙からスタートし、見積もりの仕方をいちから学んでいくことに。その分、改修事業の基本とは何かを理解でき、ぶれない改修システムを構築することにつながる。キーワードは現場レベルでの安心・安全を切り口とした工事品質での差別化だ。また親会社の塗料事業の中で同社の存在感が強まっており、メーカー施工会社の強みをどう生かしていくかが問われるところ。材工組織「ニットク・アメニティシステム連合会」との連携の可能性はあるのか、飛躍の方向性が必要となっている。



土井義彦氏
土井義彦氏

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