1.連載のはじめに

実験計画法や機械学習を活用するなど、実験の進め方・解析の仕方など、有用な仕組みが整えられている。一方でどのような実験を組むかは自分で考えなければならない。ここではコーティングや分散・塗布・乾燥の実験を実際に行われる方々に、実験現場で役立つアプローチを紹介したい。この項では分散安定化について取り上げる。

2.静電気的反発を目で見よう

微粒子の分散安定化に関して、静電気的反発と立体障害による安定化があげられると説明がされる。私自身もよくこのフレーズを用いる。立体障害による安定化はナノサイズの話なので目に見えない。それに対して静電気的反発は、ゼータ電位など割とわかりやすい。ただこれも測定器の中から、なんかよくわからないけど数字が出てくるという印象がある。

そこで図1に光学顕微鏡を用いた粒子の電荷(正負)極性を確認する方法を示す。

画像1.png

ガラス板に市販の銅テープ(両面テープの付いたステンドグラス工作用)を平行に張り付ける。ワニ口クリップで直流電源につなぐ。サンプル液をごく少量たらして、すぐに電圧を60V(器具による)まで上げる。すると顔料が正極か負極方向に動き出す。なお分散液のままだと高濃度すぎるので、光学顕微鏡で透けて見えるくらいに希釈する。その際、IPAで希釈すると電流が流れるので好ましい。炭化水素系溶剤を主に用いている分散体だと測れない。この方法の弱点は他と同様、希釈のプロセスが入ることである。

3.実際の例

赤顔料を分散して観察したのが次の写真である。

画像2.png

左側の分散剤を添加していない系は正極へ、右側の分散剤を添加した系は負極へ移動する。つまり分散剤により顔料は正の電荷をもったことになる。

4.ゼータ電位は万能か?

もちろん上記の方法は定量化ができない。ただし、なれれば顔料の動く速さで、かなりプラスだとかは判断できる。数値が必要ならゼータ電位を測定する。二酸化チタンのポリエステル・メラミン系での例を図3に示す。ポリエステル・メラミン系は溶媒にブタノールも配合されメラミンという高極性の樹脂系であるので、ゼータ電位測定時の高極性溶剤への希釈時に凝集を起こすことが少ない。ゆえに測定が可能である。溶剤系でも高極性であれば、十分意味のある数値が得られる。

実験は表面処理の異なる二酸化チタンを、構造の異なる分散剤で分散し、液のゼータ電位を測定したものである。添加量は顔料に対して、分散剤の固形分での比率である。

画像3.png

顔料の表面処理と分散剤の種類により程度は異なるが、分散剤添加によりゼータ電位がプラスのほうにシフトしているのがわかる。

5.試作してみてください

最近はフェイクニュースや編集された動画で間違ったものを見せられることがあるので注意しないといけないが、目で見えると確信につながる。実際、顔料の動く様子を目で見えると感動する。簡単に試作できるのでお試しあれ。ビックケミーではその動画も公開している。

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