1.連載のはじめに

実験計画法や機械学習を活用するなど、実験の進め方・解析の仕方など、有用な仕組みが整えられている。一方でどのような実験を組むかは自分で考えなければならない。ここではコーティングや分散・塗布・乾燥の実験を実際に行われる方々に、実験現場で役立つアプローチを紹介したい。この項では分散剤の選定を取り上げる。

2.湿潤分散剤の選定

分散剤は系に混ざらないと、均一に液にいきわたらない。まず相溶性が一番目のポイントである。当然分散されるべき粒子の表面に吸着しないと、分散安定化は始まらない。吸着特性が二番目のポイントである。実験では、分散体の粘度・粒度分布、コーティング液にしての粘度・粒度分布、塗布・乾燥しての光沢・ヘイズ・透明性・色名などの評価を行う。三番目のポイントは最終材料系での評価である。

上記は単独の粒子の場合であるが、二つ以上の粒子・顔料が組み合わせる時は、混合の安定性を忘れないようにする。

相溶性は分散剤の1%液、10%液などで評価する。

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3.粒子のカタログから推定する

相溶性の確認とともに、粒子表面の情報を集める。ただカタログには表面の状態を推し量る情報が載せられているとは限らない。たとえば二酸化チタンは図2のようにわかりやすい。有機顔料は表記されていることは少ない。実際の有機顔料は、酸性点も塩基性点も表面にある。一方、カーボンブラックは多くが酸化処理されており酸性表面を有する。分散剤の選定にあたっては、粒子の持つ極性と反対の極性の吸着基を持つものを選ぶ(酸・塩基理論)。

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4.時間のかかる実験は早めにスタート

ここで実験を進めていく際に起こりがちな障害が、最後に膜物性や長期性能で問題が生じる事である。また一から検討をし直しとならないようにしたい。行きつ戻りつしないためには、検討の途中の段階で必ず長期性能を確認する実験を組み込んでおくことである。もう一つは、可能ならば複数の候補を実験途中に残しておく。分散の時にベストなものだけ残し、他は検討をやめるのではなく、複数の選択肢を残しておくことを勧めたい。

前述の非金属酸化物系を例にとり説明する。粒子の表面特性がわからないので、分散剤の吸着基が酸性のタイプ、塩基性のタイプ、塩構造のタイプ、基本骨格も直鎖状・分岐状や組成の異なるものを横並びで比較した。程度の差はあるが、複数の分散剤により分散粘度の低下が確認できた。ただ当初計画した吸着基の優劣は検出できなかった。

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ただ、ここで最終評価ではなく、この分散スラリーを加える樹脂系での評価、塗布・乾燥しての評価に進む。複数の候補が残ったことで、次のステップ以降でのバランスの取れた最適解の選択枝が確保できたことになる。これらは十分な実験データが蓄積されれば、AIを活用するなどして、事前に最適解が求まるかもしれない。どのような実験をするかが知恵の絞りどころであろう。

4.まとめ

ギャップフィラーや放熱シート、TIMなどで、アルミナ・窒化ホウ素・窒化アルミの粒子を分散する際に、各種添加剤を用いることで、従来以上の高充填化が可能になると見込まれる。もちろん材料により特性が異なるので、それぞれのケースで実験的に確認する必要がある。お困りの際は当社に相談していただきたい。兵庫県にある弊社のアプリケーションラボで、分散及びアプリケーションのエキスパートである弊社技術者による実験を行っている。また配合の推奨や無償のサンプルも準備しているのでお気軽に声をかけていただきたい。

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