2社買収で売上8,000億円超に
成長と安定の両立へ

日本ペイントホールディングスは、2019年12月期の中間決算を発表した。会見の席で田堂哲志社長は「会計上は減収減益となったが、為替の影響など特殊要因を除いた実質ベースでは増収増益となった」と堅調さをアピール。今期に入りオーストラリア・Duluxグループ、トルコ・Betekの買収計画を立て続けに発表するなど、「今後も強くなるための成長投資は辞さない」と更なる事業強化に強い意欲を示した。


2019年12月期第2四半期連結業績(IFRSベース)は、売上収益3,124億2,400万円(0.3%減)、営業利益419億4,500万円(6.5%減)、税引前利益424億900万円(7.2%減)となり、親会社の所有者に帰属する四半期利益は209億3,900万円(12.1%減)となった。中間配当金は当初の予定通り22円を配当した。

地域セグメント別では、国内事業が自動車用塗料分野において自動車生産台数が前年同期を上回ったことに加え、高意匠・高付加価値塗料が好調に推移し売上高が増加。工業用、汎用塗料も前年を上回り、連結売上収益は901億3,600万円(1.4%増)を計上。連結営業利益は、原材料価格の上昇に加え、企業買収に伴う株式取得関連費用を計上したことにより7.2%減の274億2,300万円と減益となった。 

アジアは、中国の自動車生産台数が前年を大きく下回り、自動車用塗料が低調に推移。汎用塗料においては、シンガポールが低調となったが、中国で内外装塗料が伸長し、前年を上回った。しかし、連結売上収益は、為替変動の影響を受け、0.9%減の1,777億700万円。連結営業利益は原材料価格の下落と中国の環境規制に伴う工場退去による補助金収入を加え、256億7,800万円(0.1%増)となった。

米州は連結売上収益377億8,600万円(0.1%増)、連結営業利益26億8,500万円(8.9%減)。その他地域は、域内自動車生産台数の低調と為替の影響を受け、連結売上収益67億9,400万円(7.0%減)、連結営業利益は4億3,000万円の損失となった。

中間業績を受け、田堂社長は「中国の建築用塗料事業においてBtoB領域への展開が継続的に伸長したことに加え、原材料価格が安定したことによりグループ全体の売上収益は為替の影響を除くと実質60億円の増収となった。営業利益においても為替、M&A関連費用など特殊要因を除いた実質ベースでは約12億円の増益となった」と説明。グループ売上高34%を占める中国事業を中心に引き続き成長トレンドにあることを強調した。

懸念される米中貿易摩擦の影響については、「各事業地域が地産地消で進めており、直接的なインパクトを認識できるレベルにはない」と説明。期初に掲げた通期目標についても達成への見方を強くする。

一方、元安円高の為替基調に対しては、「1円の変動で売上高200億円、営業利益20億円が動く」(代表取締役常務・南学氏)と警戒感を強めており、期中の戻りに期待を示した。

また原材料市況において、日本と中国でトレンドが異なることに対し「国内はアメリカも含め高止まりを続けているのに対し、中国は従来レベルまでは落ちていないが、(景気低迷による)需給バランスが緩和され、下落傾向にある」とし、中国では下期以降も軟化傾向が続くとの見方。

期初に掲げた売上収益(予想)6,400億円(2.0%増)は、4月に買収計画を発表したオーストラリア・Duluxグループとトルコ・Betekが加わり軽く上回る見通し。Betekは7月11日、Duluxについては8月21日に買収手続きを完了しており、2社の業績は第3四半期業績から反映される予定。2社の通期業績がフルカウントされる2020年には「売上収益が8,300~8,400億円になる」とし、今中計で掲げる売上収益7,500億円の達成を確実にした。

2社の買収により、売上収益1兆円の大台超えを射程に捉えPPG、Sherwin-Williams、AkzoNobelのグローバルトップ3社との差を詰めた形となるが、田堂社長は「1兆円をことさらに意識しているわけではない」と述べ、「数値目標については、次期中計の検討課題となるだろう」とした。

今回の買収により、中国、アジアを含む成長国と日本、欧米の安定国との売上比率がほぼ二分する。「為替のリスクを抱える成長国に対して、安定国がカバーするという極めてヘルシー(健康)な状態になった」と事業ポートフォリオの強化に自信を見せた。

今後想定される事業シナジーについては、自動車用塗料でグローバル連携を強化する一方で、汎用分野においては各地域で事業展開を推進させていく意向。「Duluxには強い接着剤ブランドやDIY向けのノウハウがある。将来的には、それぞれが持つ商材を有効的に活用していくこともあり得る」とした。

その一方で、国内事業に関しては環境対応の重要性を強調。

原材料の安定確保や付加価値化展開などの観点から田堂社長は「これからは水性化がどこまで拡大していくかにかかっている。社会的に環境対応が求められる中にあって、将来的に溶剤塗料を公道を使って配送できるのかというところまで踏み込んで考えていかなければならない」と言及。

続けて「さまざまなコストが上昇を強いられる中で、付加価値の高い水性製品を開発することが、単価アップの道筋になると考えている」とし、将来的には分野に応じたオール水性化の必要性も示した。



HOMENew Trend2社買収で売上8,000億円超に

ページの先頭へもどる